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構造解析技術者のための複合材料入門(2)
積層板の力学的挙動とEFM解析における留意点
日本大学 生産工学部 機械工学科 平山 紀夫 様
CAEのあるものづくり Vol.26|公開日:2017年6月
目次
- はじめに
- 積層板の特性(古典積層理論による応力-ひずみ関係)
- FEMによる積層板解析時の留意点
- おわりに
1. はじめに
前回は、複合材料の力学的特性について、一方向強化複合材料(一方向材)等の直交異方性材料の力学(フックの法則)を中心に解説し、Ansysで解析するときの注意点について述べました。 この一方向材の力学は、複合材料の力学的挙動を考察する際の基礎となるものですが、複合材料を実際の製品に使用する場合には、一方向材の単層板を重ね合わせて作成された積層材(積層板)として用いられることがほとんどです。そして、FEMで複合材料の構造解析を行う際には、様々な一方向材や織物複合材が重ね合わせられた積層板をひとつの構造要素として解析し、その後に、積層板の解析結果から各層の単層板の応力状態を評価することが一般的に行われています。
そこで今回は、積層板の力学的挙動とFEMで積層板の構造解析を行う際に必要となる知識について解説します。
2. 積層板の特性(古典積層理論による応力-ひずみ関係)
ここでは、 前回に解説した一方向材の単層板をもとにして、 積層板の応力-ひずみ関係について解説します。 積層板を作る際に、 一方向材を無秩序に積層すると、 積層板を引張っただけで捻じれたり、曲げただけで伸び縮みするような複雑な変形が生じてしまいます。 このような現象をカップリング効果と呼んでいます。 このような積層板のカップリング効果は、 積層が上下対称になっていないために発生します。 したがって、面内荷重を作用させた際に、面内変形のみが発生するように設計したい場合には、 積層板の中央面に対して上下方向(積層方向)に対称積層する必要があります。 FEM等の数値解析により積層構造の設計を行う際にも、積層板のカップリング効果や面内・面外特性を理解していると解析結果の評価が適切に行えると思います。 本章では、 積層板のカップリング効果や面内・面外特性について古典積層理論にもとづいて解説します。
2.1 任意方向に積層した積層板の特性
図1に示すように、 薄い平板内の物質点の位置をx、y、zで表すとき、zの範囲はx、yの値の範囲に比べると非常に小さな値になります。このような薄い平板でははりと同様に断面全体が回転することによる変形が主な変形になるので…