解析講座 破壊力学について(1) 破壊力学の基本事項

破壊力学について(1)

CAEのあるものづくり Vol.26|公開日:2017年3月

目次
  1. 破壊力学と大事故の歴史
  2. 線形破壊力学の基礎(応力特異性について)
  3. き裂先端の応力特異性について
  4. エネルギ解放率の考え方
  5. 結び

1. 破壊力学と大事故の歴史

本稿では、著者が講習会や大学の学部4年生や大学院向けの講義などで破壊力学の紹介をするときの話の流れに従い、き裂の力学や破壊力学パラメータ、そしてその計算法、解析例などについてご紹介します。 まず始めに、「破壊力学解析」について、き裂の応力特異性に関連することから述べていくことにします。

大変残念なことに、破壊力学は人命の損失に関わる重大事故がきっかけとなり発展してきた歴史があります。有名なところでは、1953年から1954年にかけて発生したイギリス製のジェット旅客機(コメット機)の墜落事故を挙げることができるでしょう。コメット機は1952年に世界で初めての商用ジェット旅客機として就航しました。今では当たり前ですが、高高度を飛行するために機体胴体が与圧される構造でした。そして、飛行中に突然墜落するという事故が連続して発生しました。

図1 航空機窓枠付近の応力集中と疲労き裂の発生と進展
図1 航空機窓枠付近の応力集中と疲労き裂の発生と進展

調査の結果、事故は窓枠の角部(図1)に応力集中が発生し、疲労き裂の発生と進展、さらに最終的にき裂が一気に進展する不安定破壊が起きたことが明らかになりました。 高高度を飛行するジェット旅客機はキャビン内の気圧をある程度以上に保つよう与圧されます。そのため、航空機胴体は大変大きな空気タンクと理解することができます。簡単に言うと薄板構造である航空機の外板に、図2のような引張応力が発生することになります。 飛行一回あたり与圧1回なので、1回飛行する毎に1疲労サイクルが蓄積されていきます。また、コメット機の窓枠は現在よく見る航空機のものと比べると角部の曲率半径が小さく、より激しい応力集中が発生したと考えることができます。その結果、金属疲労によるき裂発生、 疲労き裂進展、 限界長さを超えたき裂が一気に進展して突然の構造破壊に至りました。詳しくは、アメリカ連邦航空局(FAA, Federal Aviation Administration)のWWWページ[1]等をご覧下さい。

図2 航空機の胴体構造に作用する応力
図2 航空機の胴体構造に作用する応力

このような事例が発生すると、破壊力学や金属疲労の研究が急に注目されるようになります。もう少し新しいところでは、1988年のアロハ航空機事故[2]がありました。こちらは、多数のリベット孔から疲労き裂が発生し、それらが一気に合体し、旅客機胴体上部が吹き飛んでしまった事故です。幸いなことに事故機は無事着陸することができましたが、客室乗務員1名が機外に投げ出され行方不明になっています。その数年後には米国政府により” Center of Excellence (COE) for Computational Modeling of Aircraft Structures”[3]が設置され、計算力学アプローチによる航空機の疲労問題、構造余寿命、載荷能力予測解析手法に関する研究が盛んに行われました。ちなみに筆者も一時期このCOEに所属し、き裂進展解析に携わっていました。

ある意味、不幸な歴史を持つ破壊力学ですが、その基礎的事項からご紹介していこうと思います。まず、なぜき裂の力学は特別なのかについて話題を展開していきます。

2. 線形破壊力学の基礎(応力特異性について)

はじめは、 大学学部レベルで勉強するような応力集中の問題です。 図3に示すような遠方で引張応力σ0を受ける楕円孔の縁の点Aの応力σAを、 楕円孔長軸の長さaと曲率半径ρを用いて次式で表すことが…

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