解析事例 周波数応答解析から評価する過渡データ 過渡音場を評価する解析例

周波数応答解析から評価する過渡データ

CAEのあるものづくり Vol.24|公開日:2016年5月

目次
  1. はじめに
  2. 時間領域と周波数領域
  3. 例(1) - 外部空間において、点音源から放射された球面波を追跡する問題
  4. 例(2) - 振動板の振動により生成された音波が、スピーカーボックスの周辺に広がる様子を過渡的に観察
  5. 例(3) - スナップフィットはめ込み時の“カチッ”という音の模擬
  6. まとめ

はじめに

昨今、製品の静粛性を高めることは、重要な課題となっています。効果的に静粛性を高めるためには音が発生して伝搬するメカニズムの把握が重要で、これを机上にて検討できるツールとして数値音響解析の使用ニーズが高まっています。

数値音響解析としては、周波数領域で行われる“周波数応答解析”が多く用いられます。それは、騒音対策としては定常的な音が対象となることが多い点や、過渡的なデータを見るよりも周波数スペクトルを見た方が、現象を把握して対策を検討し易い点などが理由です。周波数スペクトルからはピーク周波数を把握しやすいため、騒音に対して寄与の大きな周波数を把握することができ、更にピーク周波数における音圧分布を可視化することで、励起される音響モードを把握し、形状変更や吸音材の配置などの検討がしやすくなります(図1)。

図1 周波数応答解析で用いられる結果評価図の例(車室内部音響解析)
図1 周波数応答解析で用いられる結果評価図の例(車室内部音響解析)

一方で周波数応答解析結果は、音源から放射された音波が、どの様な経路で、どの様に拡散してゆくのかを把握する目的に対しては不向きなデータです。この様な情報を把握するためには、時々刻々と変化する音場の様子を可視化する必要があります。この目的のためには、時間領域で計算が行われる“過渡応答解析”を用います。ところが過渡応答解析は、境界条件を始めとした各種解析条件の設定の難易度が一般的に高く、また細かい幅で時刻を進める必要があったり、空間を細かく離散化する必要があったりするため、多くの計算コストを要します。

ところで音響解析では、空間を離散化する有限要素法(FEM)に加えて、空間の境界面のみを離散化する境界要素法(BEM)も多く用いられます。更に弊社が開発している数値音響解析プログラムWAONで使用可能な高速多重極境界要素法(FMBEM)を用いると、空間サイズや周波数に対して解析コストはほぼ2乗でしか増加しない(FEMでは3乗で増加)ため、大規模な空間や高周波数領域での音響解析を効率的に行うことができます。しかしながら現状では、FMBEMを用いて過渡応答解析を実施することはできないため、FMBEMを用いて解析可能となった大規模な空間や高周波数領域における過渡データを算出することはできません。

WAONで使用可能な高速多重極境界要素法(FMBEM)を用いると、空間サイズや周波数に対して解析コストはほぼ2乗でしか増加しない(FEMでは3乗で増加)ため、大規模な空間や高周波数領域での音響解析を効率的に行うことができます。しかしながら現状では、FMBEMを用いて過渡応答解析を実施することはできないため、FMBEMを用いて解析可能となった大規模な空間や高周波数領域における過渡データを算出することはできません。

時間領域と周波数領域

図2 過渡データ(左)と周波数データ(右)
図2 過渡データ(左)と周波数データ(右)

音の時間変化が一定の時間間隔で繰り返している時、繰り返しの1周期分のデータを切り出してフーリエ級数展開を施すと、その時間信号が周波数成分に分解されます。またこの変換を逆に用いれば、周波数データから過渡データを生成することが可能です。この関係を用いれば、周波数応答解析を実施して得た複素数の周波数データを過渡データに変換して、時々刻々と変化する様子を評価することが可能となります。(図2)

例(1)

まず始めに単純な例として、外部空間において、点音源から放射された球面波を追跡する問題を取り上げます。この問題では、点音源から放射された球面波が、地面や壁などで…

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