解析講座 破壊・亀裂現象に対するアプローチ

破壊・亀裂現象に対するアプローチ

CAEのあるものづくり Vol.24|公開日:2016年5月

目次

はじめに

製品および構成するコンポーネント・パーツ、それらを加工するための工具・冶具は、多くの場合、破壊することでそれぞれの形状・機能・性質の一部や全部を喪失し、場合によっては使用者や工作機械などにもダメージを与えます。想定外の破壊は、時間やコストだけでなくさまざまな損害の原因となり得るため、製品を設計・製造する現場では、程度の差はあれ破壊に関して検討が行われているでしょう。破壊を検討する上で実験は非常に有効な手段ですが、多くの設計案を検証するには時間もコストもかかります。より効率的な検討を行うためには、事前に解析で設計案の絞込みを行い、実験回数を削減することが重要です。

ただし、解析による破壊の検証にはさまざまな手法があり、適切に手法の選択を行わなければ意味のない計算によって間違った結論に至る可能性もあり非常に危険です。

本稿では、マルチフィジックス解析ツールANSYS®R17.0 を使った、解析による破壊現象の検証アプローチについて紹介します。

解析前の検討

まずANSYSで計算するために必要な入力情報を準備します。解析を行う際は、入力する情報と使用する理論が現象を再現・評価するのに適しているかどうかが最も重要です。破壊現象を解析する前に、少なくとも以下の3点について十分な準備を行うことで、解析の信頼性を高めることができます。

  1. 破壊メカニズム(亀裂の発生と進展の要因)を理解する
  2. 亀裂に関する設計方針を決める
  3. 計算に必要な入力情報を収集する

2-1 破壊メカニズムを理解する

破壊の条件は使用する材料や環境によって大きく異なるため、破断面の観察や経験則による仮定などで破壊メカニズムを想定します。この検討により、使用する材料モデルや境界条件および判定基準として使用する結果を決定することができます。

例1)ゆっくりと大きな外力下での延性破壊による亀裂拡大現象を評価したい

仮定:塑性ひずみや積分型延性破壊条件式により破壊の判定が可能
材料:塑性材料
解析:静的大ひずみ解析

破壊メカニズムを理解する

例2)衝突によりガラスが割れるか割れないかを評価したい

仮定:動的荷重による脆性的な破壊と考えられる
材料:弾性材料
解析:時刻歴応答解析

例3)鉛フリーはんだの熱サイクル荷重に対する疲労寿命を知りたい

仮定:ひずみ増分と破断サイクル数の関係がManson-Coffin則で表現できる
材料:塑性およびクリープ材料
解析:熱サイクル解析

2-2 亀裂に関する設計方針を決める

亀裂の解析は、亀裂発生の有無を判定する解析と、亀裂の進展を観察する解析の2種類があり、計算時間や設定難易度 が大きく異なります。亀裂進展解析が必要かどうかは亀裂に関する設計方針によって決まります。

亀裂に関する設計方針を決める

方針1と方針4は、対象となるパーツに亀裂が発生するかどうかが重要であり、亀裂進展解析は必要ありません。

方針2はフォールトトレラント設計という設計手法であり、亀裂が発生しても途中で停止して破断に至らないように設計を行います。また、方針3はフェイルセーフと呼ばれる設計手法であり、破断に至る亀裂が発生した場合でも、製品や使用者に対して安全側の故障モードに落とし込めるように設計を行います。方針2と方針3は、いずれも亀裂発生後の対象パーツおよび周囲のパーツの挙動の観察が必要になるため、亀裂進展解析を行う必要があります。

2-3 計算に必要な入力情報を収集する

前項までの検討で、解析タイプ、材料モデル、境界条件、評価基準といった入力のための枠が決まりますので、それらに 入力する数値を取得することになります。

特に材料物性(材料定数)と評価基準値は破壊の判定を行う上で同程度に重要であり、取得には注意が必要です。非線形 材料モデルは、実現象における挙動を表現できる応力やひずみ範囲が限定されていることが多いため、解析で発生する応力やひずみの範囲を十分カバーできる材料試験を行い、その結果から材料定数を算出してください。また、評価基準値も条件依存になることがありますので、精度の高い解析を行うためには適切な試験方法により値を取得する必要があります。

2-4 解析前の検討が十分に行えない場合の優先順位

与えられた時間と予算内での検討では、全ての検討が十分に行えないケースもありますが、その際には『破壊メカニズムの理解』を最優先に検討されることを推奨します。これは、『破壊メカニズムの理解』があいまいだと亀裂の発生条件を間違えてしまい、解析によって間違った結論が導き出される可能性があるからです。それ以外の選択については、設定の簡単さやデータの得やすさなどから以下を選択することで検討時間を短縮します。

  • 亀裂解析:亀裂の発生の有無を判定する
  • 材料定数:文献値や過去データを参照
  • 評価基準値:相対比較

この条件による定性解析で設計案の順位付けを行った後、実験による検証により最終判断を行います。

※公差解析の活用

破壊の解析では、設計中央値の条件だけでなく、さまざまなバラツキを考慮した際のワーストケースになる条件についても検討を行うことで、想定外の破壊を防止できる可能性が向上します。
『CETOL 6σ』のような公差解析ツールを使用することで、バラツキを持つ設計パラメータの組み合わせから影響度の高い条件を素早く抽出できるため、抜けの少ない条件選択を効率的に行うことが可能になります。

ANSYSにおける破壊解析

事前検討では、破壊判定に使用する出力を得るために、ANSYSで計算可能な入力を準備する作業を行いましたが、その際に必要となるANSYSで可能な破壊に関する解析設定について紹介します...

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