解析事例 はんだ接合部の定量的断線寿命予測 株式会社 日立製作所 日立研究所 寺崎 健 様

はんだ接合部の定量的断線寿命予測

CAEのあるものづくり Vol.17|公開日:2012年10月

目次
  1. はじめに
  2. 定量的断線寿命の予測方法
  3. 精度検証と解析事例
  4. おわりに

はじめに

近年の電子機器の小型化・高密度実装化に伴い、電子部品のはんだ接合部は微細化と接合形状の多様化が進んでいます。はんだ接合部は、電子部品とプリント配線板の材質が異なるため、双方の熱変形量の違いにより、温度変動時に繰返し変形します。この繰返し変形により、疲労き裂がはんだ表面に発生し、はんだ内部を徐々に進展して、はんだ接合部の断線に至ります。

はんだ接合部の断線寿命は、従来から、耐久試験で調べた断線寿命とシミュレーションによる疲労き裂発生予測回数の相関を利用して推定しています1)。しかし、この方法では、はんだ接合部の大きさや形状毎に耐久試験を行う必要があり、寿命の測定に期間とコストがかかるという問題があります。開発期間の短縮や機器の高信頼化を加速するために、種々のはんだ接合形状の断線寿命を定量的に予測できるシミュレーション技術が望まれています。

はんだの疲労き裂進展挙動は試験片レベルで測定され、非線形破壊力学に基づき整理されています2)が、非線形破壊力学に基づくシミュレーション手法をはんだ接合部に適用する場合、解析モデル作成の煩雑さなどの実用上の問題があります。そのため、はんだ接合部の各位置に累積されるダメージに基づく疲労き裂シミュレーション手法(以下、累積損傷モデルと記します)を開発しました3)。この手法の事例は、「CAEのあるものづくり」2007年3月号でも紹介しました。

しかし、累積損傷モデルは、算出される疲労き裂進展寿命がき裂先端の要素寸法に依存するという問題があり、シミュレーションだけで断線寿命を定量的に求めることができませんでした。そこで、き裂先端のひずみ特異場理論から要素寸法依存性の補正係数を算出する手法(以下、修正累積損傷モデルと示します)を考案し、定量的な断線寿命予測を可能にしました4)~6)。本報では、定量的な断線寿命の事例として、はんだの中央切欠付き板試験片による室温の疲労き裂進展試験と、2種類のBGA(Ball Grid Array)はんだ接合部の温度サイクル試験のシミュレーション結果を紹介します。

定量的断線寿命の予測方法

2.1 累積損傷モデル(従来手法)

最初に、断線寿命が要素寸法に依存する累積損傷モデルを説明します。この手法では、はんだのひずみから累積ダメージを計算して、疲労き裂を予測します。ひずみ解析には汎用の有限要素解析ソフトウェア(FEMソルバー)を利用し、累積ダメージを自社開発の解析ツールで計算します。

累積損傷モデルの手順を図1に示します。まず、解析対象の中で疲労き裂発生を許容するはんだ領域を同一寸法の要素に分割し、各要素に番号付けを行います。解析モデルは、汎用のプリプロセッサで作成します。次に、各要素のダメージを表す関数fiを初期値0にします。添え字iは要素番号です。関数fiは各要素にダメージが累積されることで増加し、値が1となったときにその要素が寿命に至る(除去される)ことになります。

図1 累積損傷モデルの手順
図1 累積損傷モデルの手順

この解析モデルに対して、温度サイクル試験や機械的負荷試験を模擬したひずみ解析を実施して、各試験1サイクルあたりに各要素に生じる相当塑性ひずみεipeqを求めます。ひずみ解析には、汎用のFEMソルバーを使用します。各要素に生じた相当塑性ひずみεipeqの値から、1サイクルあたりに生じるダメージΔfiを式(1)で計算します。

こここで、Cp, αpは、塑性ひずみ範囲Δεpと低サイクル疲労寿命Nfの関係を示すCoffin-Manson則の係数です。

式(1)で求めたΔfiと各要素が既に受けているダメージfiから、各要素が寿命に至るために必要なサイクル数ΔNiを次式で算出します。

ΔNiが最小となる要素がこの計算ステップで削除されることになるので、このステップで増加させるサイクル数ΔNはΔNiの最小値となります。このとき、サイクル数がΔN増加することで各要素のダメージは次式の様に増加します。

ここで、寿命に至った要素、すなわち関数fiが(1-e)に至った要素を除去し、再びひずみ解析を行います。eは累積ダメージが1に近い要素をまとめて削除するための変数で、解析精度に影響が無い0.05~0.1程度の値を使います。

次ステップのひずみ解析では...

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