解析事例 電子機器はんだ接合部の熱疲労寿命評価 特異場パラメータを用いた評価
ダイキン工業株式会社 劉 継紅 様

電子機器はんだ接合部の熱疲労寿命評価

CAEのあるものづくり Vol.16|公開日:2012年4月

目次
  1. はじめに
  2. はんだの材料物性
  3. はんだ接合部の応力特異場
  4. 温度サイクル試験
  5. はんだ接合部の熱疲労寿命評価
  6. おわりに

はじめに

長期間の温度変化の繰り返しにより、電子機器はんだ接合部近傍においてき裂が発生しやすく、電子機器の熱疲労寿命に大きな影響を及ぼすことが一般に知られています。現在、電子機器はんだ接合部の熱疲労寿命は主にパワーサイクル試験や温度サイクル試験などの試験的な手法で評価されていますが、開発の効率化と完成度向上を図るため、解析によるはんだ接合部の熱疲労寿命の評価が強く望まれます。

今まで電子機器はんだ接合部の熱疲労寿命評価に関する研究が幾つか発表されました(1)。これらの研究では、異材結合によるはんだ接合部近傍の応力場の特異性を避けるため、ある代表点の最大応力振幅または最大ひずみ振幅を用いてはんだ接合部の熱疲労寿命を評価しました。この手法ははんだ接合部が相似した構造を有し、応力またはひずみに同様な計算精度を確保した場合は実用性がありますが、代表点の選定に任意性や試行錯誤を伴い一般化するには不向きです。

異材結合のため、はんだ接合部近傍における応力場は特異性を有します。一般的に言えば、応力特異場の挙動は、特異場オーダーと特異場強さ係数によって完全に記述することができます。そこで、本報では、はんだ接合部近傍の応力特異場パラメータを用いて電子機器はんだ接合部の熱疲労寿命の評価を試みます。具体的には、まず、はんだの材料物性を材料試験により把握します。次に、パワーモジュールを対象に温度サイクル試験条件下におけるはんだ接合部近傍の応力特異場パラメータをFEM解析で求めます。また、応力場特異パラメータと疲労試験結果を疲労則により関連付け、はんだ接合部の熱疲労寿命評価式を作成します。最後に、今後の課題等について考察します。

はんだの材料物性

はんだ接合部の熱疲労寿命評価では、温度荷重によるはんだ接合部近傍の応力特異場を精度よく解析することが重要です。はんだ材料は融点が低く通常の使用温度においてもクリープ現象を示すため、材料物性、とくに弾性率と降伏応力(耐力)の温度依存性およびクリープ構成式を正しく把握しなければなりません。本節では、材料試験の結果に基づいて鉛はんだ(Pb-5Sn)と鉛フリーはんだ(Sn96.5Ag3.0Cu0.4)の材料物性を明らかにします。

2.1 はんだの弾性率と降伏応力

材料試験では、試験片の載荷部の影響を避けるため、ひずみは試験片の標点間変位の公称値から算出するのではなく試験片中心の両側に貼り付けたひずみゲージを用いて測定します。はんだの弾性率と降伏応力を求める静的引張り試験は変位制御による加載法で行われ、また、加載速度の違いによる試験結果への影響についても検討します。

温度の違いによる鉛はんだと鉛フリーはんだの弾性率および降伏応力の変化、ならびにはんだの弾性率と降伏応力の近似式をそれぞれ図1と図2に示します。これによると、はんだの弾性率と降伏応力が温度の上昇に伴い低下し、顕著な温度依存性を有することが明らかになりました。また、鉛はんだは弾性率と降伏応力が加載速度の影響を受けないのに対し、鉛フリーはんだは弾性率が加載速度の影響を受けないが、降伏応力が加載速度の影響を受けることが読み取れます。これは、鉛フリーはんだは降伏応力が高く、また高温高応力状態での引張り試験結果がクリープ変形の影響を受けやすいことによると推測されます。よって、クリープ変形の影響を避けるため速い加載速度(6.0mm/min)での試験結果が望ましいと考えます。

図1 温度の違いによる鉛はんだの弾性率と降伏応力の変化(Tは絶対温度、 T<sub>R</sub>は 273.0K )
図1 温度の違いによる鉛はんだの弾性率と降伏応力の変化(Tは絶対温度、 TRは 273.0K )

図2 温度の違いによる鉛フリーはんだの弾性率と降伏応力の変化(Tは絶対温度、TRは273.0K )
図2 温度の違いによる鉛フリーはんだの弾性率と降伏応力の変化(Tは絶対温度、TRは273.0K )

2.2 はんだのクリープ構成式

はんだのクリープ試験は力制御による加載法で行われます。本節では、異なる応力状態と温度条件下でのクリープ曲線の定常クリープ域から求めたクリープひずみ速度と対応する応力を用いてはんだのクリープ構成式を作成します。はんだのクリープ構成式は、低応力状態では線形粘性型、高応力状態では双曲線型の関数式で表現することができます(2)~(3)

クリープ試験結果に基づいて作成した鉛はんだのクリープ構成式は式(1)で与えられます。

ここで、温度T(K)の適用範囲は 233.0K から393.0Kまで、σV(MPa)は線形クリープ限界応力です。鉛はんだのσVは低温時に温度Tに依存しませんが、常温以上になると温度Tの関数となります。鉛はんだの応力とクリープひずみ速度の関係を両対数形式で図3に示します。これによると、式(1)のクリープ構成式は鉛はんだの試験結果を精度よく表現できることが読み取れます。

図3 鉛はんだの応力とクリープひずみ速度の関係
図3 鉛はんだの応力とクリープひずみ速度の関係

クリープ試験結果に基づいて作成した鉛フリーはんだのクリープ構成式は式(2)で与えられます。

鉛フリーはんだの線形クリープ限界応力σV(MPa)は温度T(K)の関数として次式で近似的に与えられます。

鉛フリーはんだの応力とクリープひずみ速度の関係を両対数形式で図4に示します。これによると、×印した20.0℃での試験結果に不適切と思われる箇所がある以外、式(2)のクリープ構成式は鉛フリーはんだの試験結果を精度よく表現できることが読み取れます。×印箇所では応力が低く、クリープひずみ速度が小さく試験誤差が大きく現れたと推測されます。

図4 鉛フリーはんだの応力とクリープひずみ速度の関係
図4 鉛フリーはんだの応力とクリープひずみ速度の関係

はんだ接合部の応力特異場

本節では、パワーモジュールを対象に...

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