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構造解析

アサヒビール株式会社様

錠剤開発におけるANSYSの活用と、これからの可能性

「今まで謎だったことが解明されてきているのが、非常に面白いです」

アサヒビール株式会社様

CAEのあるものづくり Vol.14|公開日:2011年4月

目次

本インタビューでは、アサヒビール株式会社様にご協力いただきました。
1889年の創業以来、国内トップレベルの酒類・飲料メーカーとして不動の地位を築かれているアサヒビール様。「最高の品質と心のこもった行動を通じて、お客様の満足を追求し、世界の人々の健康で豊かな社会の実現に貢献します。」を企業理念に、「アサヒスーパードライ」をはじめとした、歴史に残るヒット商品を数多く生み出されています。
また近年では、各分野で高い専門性を持つグループ企業を傘下に、酒類・飲料のみならず、健康食品やサプリメント等の分野でも着実に業績を上げておられます。さらに、オーストラリアの大手飲料メーカー、シュウェップス・オーストラリア社の買収や、中国の大手ビールメーカー、青島.酒股.有限公司への出資等、国際展開にも精力的に取り組まれています。
今回のインタビューでは、アサヒグループ全体の研究開発を担う食品技術研究所を訪問し、CAEを用いた錠剤成形シミュレーションについてお話をお伺いしました。

今回お話いただいた方々

食品研究開発本部
 食品技術研究所 食品加工技術部
  部 長 齊藤 静男 様
  副課長 佐藤 英明 様
(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

グループ全体の研究開発部門にて、サプリメントの研究開発を担当

皆様の担当業務についてお聞かせ下さい。

齊藤 - 佐藤と私は、食品技術研究所の中の食品加工技術部に所属しています。食品技術研究所には、食品加工技術部の他に発酵生産技術部、食品微生物技術部、食品機能解析部があり、まず発酵生産技術部は、ビール会社ならではの発酵技術をベースに、天然調味料の酵母エキスなどを高品質かつ安定的に生産するための技術開発を行っています。
食品微生物技術部では、酵母や乳酸菌などを用いた、食品の製造プロセスに関する研究を担当しています。食品機能解析部では、開発された製品の有効性を検証したり、新しい食品素材の発掘などを行います。
我々が所属する食品加工技術部は、製剤技術開発と素材研究を基盤に、健康を意識したサプリメント・飲料の開発を行うことがミッションです(図1)。特に、新規製剤原料や添加物を活用して、高品質の粉末・顆粒・錠剤に関する技術開発を行っています。

取扱製品図1 取扱製品
アサヒビール株式会社
http://www.asahibeer.co.jp/
アサヒフードアンドヘルスケア株式会社
http://www.asahi-fh.com/

御社のグループ会社からの開発依頼なども担当されているのですか?

佐藤 - はい。例えば飲み込みやすいような錠剤の形など、グループ会社から依頼を受けた課題を研究テーマとして扱い、研究成果を委託先にフィードバックしています。

原材料は食品素材。大きくなりがちなサプリメントでは、「飲み込みやすさ」の改善が特に重要。

近年のトレンドについてお伺いしたいのですが、業界では、何が重要課題になっているのですか?

佐藤 - 食品分野全体となると有効性や安全性、あるいは生産プロセスの改善等が挙げられると思いますが、サプリメントの分野ではユーザビリティーの志向です。端的に言うと、飲み込みやすさを主体とした服用性の改善になります。

齊藤 - 医薬品でも錠剤は多くありますが、有効成分が全体の2から3%程度なので、比較的小さい形状でも問題ありません。しかし一般にサプリメントは食品素材を扱いますので、どうしても大きくなりがちです。
極端な例では、アサヒフード&ヘルスケア社のロングセラー商品で「エビオス」があります。本製品は1錠あたり95%が乾燥酵母からできており、ほとんどが有効成分なのですが、それでも効能・効果を発揮するために15歳以上の方は1日3回、1回につき10錠を飲む必要があります。そうなると、「飲み込む時に、喉にひっかからないか?」といった飲み込みやすさの問題が一段と重要になります。そこで、可能な限り飲み込みやすい形状を追求する必要があるのです。

佐藤 - 一方、トレードオフの関係として、飲み込みやすい形状にした結果、錠剤の硬度(図2)が低下することがあります。また、錠剤を製造する工程の1つに「打錠工程」というものがあるのですが(図3)、形状によっては打錠する杵の耐圧性が低下します。これらを全て考慮した上で、最適な錠剤形状を検討しなくてはなりません。

錠剤の硬度図2 錠剤の硬度
打錠工程図3 打錠工程

Ansysによる解析で、錠剤硬度と打錠杵の耐圧強度を予測。最大の難関は、圧縮荷重によって変化する粉体物性の扱い

それがAnsys Conferenceで発表いただいた事例に繋がるのですね。食品業界からの発表事例は大変珍しく、反響も大きかったです。あの解析を実施するに至った経緯を教えていただけますか。

佐藤 - これまでに、錠剤の僅かな形状の違いと飲み込みやすさの関係について研究された例はありませんでした。すなわち、飲み込む前に錠剤の「嚥下性」を予測する技術がなかったのです。そこで当社では他社に先駆けて、錠剤の形状と嚥下性(飲み込みやすさ)の関係を示す「嚥下性マップ」の作成に着手しました(図4)。円形の錠剤の場合、主な形状因子としては錠径、曲率半径(錠剤の丸み)、錠厚の3つが挙げられますが、これらが嚥下性に与える影響を、地図のように可視化したかったのです。
具体的には、錠径、曲率半径、錠厚の…

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