ユーザインタビュー JVCケンウッドグループ様 WAONによる音響解析の実施で、スピーカー開発のフロントローディングを実現 CAEの活用で、技術者のノウハウを蓄積・共有化

JVCケンウッドグループ様

CAEのあるものづくり Vol.14|公開日:2011年4月

今回のインタビューでは、JVCケンウッドグループの皆様にご協力をいただきました。
JVCケンウッドグループは、株式会社ケンウッドと日本ビクター株式会社という歴史ある二社の経営統合で生まれた組織です。「カタ破りをカタチに。」という企業ビジョンのもと、カーエレクトロニクス事業やホーム&モバイルエレクトロニクス事業、業務用システム事業を中心に魅力ある製品をワールドワイドに提供し、多数のファンを獲得しています。
今回は車載用スピーカーを開発・設計されているJ&Kカーエレクトロニクス株式会社での音響解析ツール「WAON」を用いた解析事例を中心に、解析ツール利用のメリットや、スピーカー開発特有の興味深いお話を伺いしました。

今回お話いただいた方々

J&Kカーエレクトロニクス株式会社
 市販事業部 スピーカ・アンプ部
  開発グループ長 兼 品質保証グループ長 熊倉 弘幸様
  開発設計グループ           重田  朗様
  第一商品設計グループ         冨澤 達史様

JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社
 統合シナジー推進部 CS・品質担当
  シニアスペシャリスト 大角 親生様
  チーフ        阿部 雄次様
(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

目次
  1. フロントローディングの実現を目指す専門技術集団
  2. CADの延長として定着した磁場解析と、難易度が高いが重要性が増す音響解析。
  3. スピーカー形状による音の指向性を解析で検証。解析実施によって派生する様々なメリット
  4. 数値だけでは評価できない。官能的評価がされる音への設計者のこだわり。
  5. よりよい製品の開発を目指して。今後は車室全体での解析や、解析同士の連動システムを。

フロントローディングの実現を目指す専門技術集団

- 最初に皆さんの所属やご担当をお聞かせください。

大角 - 私は本社機構であるJVC・ケンウッド・ホールティングスに所属しています。その中で統合シナジー推進部の技術推進担当をしています。技術推進の役割は、実際に製品を開発・設計・販売を行う事業部門が開発の生産性を上げるため、全体的なプロセスの変更や標準ツールの導入などで支援し、様々なボトルネックを解消することにあります。これにより、設計初期段階から開発段階で発生するさまざまなリスクを取り去ることを目的として行われる「フロントローディング開発」を実現し、「良い製品を」「タイムリーに」「安く」市場に投入することを常に検討しています。
今回ご一緒しているJ&Kカーエレクトロニクスの皆さんは、旧ケンウッドグループに設けられていた「デジタルものづくりセンター」に所属しています。CAEによる解析を通じて、我々と同じようにフロントローディング開発の実現を目指しておられ、昨年末から一緒に活動をしています。

阿部 - 私は以前、大角の話に出た「デジタルものづくりセンター」におりまして、解析全般のとりまとめを行っていました。現在は大角と同じ部署にて、解析ツールの取りまとめや管理はもちろん受託解析を受けることもあり、解析に関わる全社的な活動を展開しています。

熊倉 - 私・重田・冨澤の3名はJ&Kカーエレクトロニクス株式会社という事業会社に所属しています。この会社ではケンウッドと日本ビクター両方のブランドにて、主にカーエレクトロニクス関連製品の開発を行っています。私達3名はその中でも車載用スピーカーを中心とした開発をしています。

重田 - スピーカーは主に車載用とホーム用に分かれますが、私達の部署では主に車載用スピーカーの製品設計および研究開発を行っています。開発側では設計の前段階において、もっと品質の良い新しいものができないかと日夜検討を重ねています。

冨澤 私は設計を担当しています。ただし単純に設計のみを行うのではなく、設計の前段階である開発とオーバーラップするように設計を行っています。つまり開発で導き出された条件を単純にそのまま設計にトレースするのではなく、その情報と設計的な要素を開発担当と調整しながら製品を立ち上げていくということです。ここまで含めて「設計」と考えています。

CADの延長として定着した磁場解析と、難易度が高いが重要性が増す音響解析。

- 社内での解析への取り組みが進んでいるようですね?

冨澤 - そうですね。先に延べたような考えがあるので、設計者の大半は普段からANSYSの磁場解析を利用しています。これによって製品リリースまでの時間も短縮できていると思います。私たちの部門では、「解析を皆でどんどん活用していこう」という文化が根付いています。解析に興味のある人間が自ら手を挙げて「解析をやりたいです」「これだけ効果が出そうです」と言えば、設計担当であっても、サイバネットさんで実施されているような様々な解析セミナーに参加できます。また、構造解析や磁場解析のセミナーに参加した人が、マニュアルを作って設計部門内で公開し情報共有するようなことも一般的に行われています。音響解析は磁場解析に比べて難易度が高いのですが、少なくとも音響解析で何ができるか知ってもらえるよう、情報発信を続けています。

熊倉 - 磁場解析はわかりやすいし差も出やすく、製品の品質や性能にも直結します。
設計者達はそれをここ数年の教育で理解したようで、積極的に取り組んでくれています。スピーカー内のプレートと磁石の関係を調べるのですが、この磁場の問題をうまく解決し最適化すると、部品の物量を少なくすることができ、当然コストも抑えられます。今や磁場解析は解析ツールというよりはCADツールの一部のような位置付けで設計者が使ってくれています。

重田 - 開発側としては、CADを一通り使いこなせるようになった設計者には、CAEユーザーとしての教育コースを提案しています。「このレベルの解析スキルをつけるためには、まずこれを受けて次にこれを受ける」といったガイドラインです。スピーカーの開発設計では、CAEの基礎的な講習はもちろん、伝熱や動解析の知識も必要です。
もちろんすべて受講すると時間もコストもかさみますので現実的にはなかなか難しいですが、設計者側も非常に関心を持って参加を希望しています。

- 磁場解析や構造解析の活用は部門内で浸透されているようですね。今回事例をご紹介いただく音響解析はいかがでしょうか?

冨澤 - 音響解析は構造解析や伝熱解析と比べて難易度の高い解析として捉えています。設計者側にとってはイメージ的なところから既に違いを感じます。ものを叩いて振動する現象は物理的な知識があれば納得しやすいし予測もできます。しかし音が伝わっていくという現象では、予測を覆す現象を目の当たりにすることが多々あります。スピーカーの仕組みは、磁場に電気を流し、フレミングの法則で力が発生し、振動が発生して音波になって放出されるというものです。物理的な振動の延長線上に音波も出てくると考えやすいのですが、実際にはそうならないことが多いのです。そのため最終的には耳で感じて特性を知るしかないと考えがちです。

熊倉 - 構造や伝熱の物理現象は測定で整合性が取れますし、時間を掛ければ合わせこむともできます。しかし音の世界はまだそれほど測定の環境が整っていませんので可視化することが容易ではありません。測定ができたとしても相当な設備と費用、そして労力がかかります。例えば構造物の変化ならハイスピードカメラやレーザー測定器で検証できますし、熱の変化であればサーモグラフィやセンサで測定して、2次元や3次元で表すことが比較的容易にできます。しかし音はそういったことができないのです。マイク数本による繰り返しの測定は、手間がかかる上に点でしか測定できず、面や空間で情報を得ることができません。このため、面や空間で現象を推測できる音響解析ツールは、我々にとって非常に重要なものになっています。

スピーカー形状による音の指向性を解析で検証。解析実施によって派生する様々なメリット

- 具体的には、現在どのような解析に取り組まれていますか?特にWAONの音響解析事例についてお伺いしたいのですが。

重田 - スピーカーの解析では主に磁場解析と音響解析があります。
ANSYSで行う磁場解析ではパワーや周波数特性を見て入力を良くするため使います。WAONで行う音響解析では音質に大きな影響を与える出力を改善するために利用しています。
今回ご紹介するのは、スピーカー形状によって変化する音の指向性を検証した音響解析の事例です(図1)。車載用スピーカーは大抵がドアの内側に設置されるドアマウントタイプであるため、設置場所は足元に近くなることが一般的です。そのため音を聞く側である運転者はスピーカーの正面で音を聞くことができません。スピーカーの横方向や上下方向での音質は下がりますので、この音質の減衰についての現象がどのようなものであるかを把握し、さらにスピーカーの前面に設置するパネル形状を変化させることで音圧分布(音の指向性)を変化させ、運転中の運転者に良い音質で音が聞こえるように検証を行いました。

WAONによる音響解析事例(パネルによる音響指向性制御)
図1 WAONによる音響解析事例(パネルによる音響指向性制御)

冨澤 - 実際に店舗で車載用スピーカーを販売する際は、お客様はスピーカーの正面で音を試聴されます。しかし車に装備した際は足元からの音を聴くことになります。我々の製品は車載された状態で評価されて、初めて売れ続けるかどうかがわかります。店舗での一次的な売上には直結しないかもしれませんが、その先の買い替えていただくことやファンになっていただくこと、つまり売れ続けることを視野に入れて私たちは開発設計を行っています。

重田 - スピーカーの前面には、スピーカーの保護と音の指向性を調整するためにパネルが設置されています。スピーカーから出る音は周波数によっては…

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