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はじめてのゴム材料解析

〜Ansys Workbenchで効率よく〜

はじめに

工業製品では様々な箇所にゴム材料が使用されており、解析を行なう場面も増えているものと思います。ゴム材料の構造解析は高度な非線形性を有し、難易度が高い部類に属します。今回はゴム材料の解析をはじめて実施される方向けに、Ansys Workbench Mechanicalにおけるゴム材料特有の解析テクニックや注意点をご紹介します。

ゴム材料の解析の特徴

ゴム材料の解析は非線形性が強く、構造解析の中でも難易度が高い部類に属します。次の3つの特徴があります。

(1)幾何学的非線形
ゴム材料は優れた柔軟性を持ち、時には数百%のひずみが発生する大きな変形を伴います。

(2)材料非線形
ゴム材料は応力-ひずみの関係が非線形です。また、静水圧応力に対してほとんど変形しない非圧縮性を持ちます。


ゴムの荷重と変位

(3) 境界条件非線形(接触)
ゴム材料は他の部品と部品の間に入って機能することが多く、解析において接触を伴います。

ゴムの材料モデル

ゴム材料は前述の非圧縮性という特徴があるため、金属材料のようにヤング率とポアソン比では計算できません。
そのため、ゴム材料の解析においては“ひずみエネルギ密度関数”という特殊な材料モデルを使用します。Ansysで利用できる代表的な関数をご紹介します。

(1) Neo-Hookean
最も単純な関数で、挙動がシンプルなためテスト計算に向いています。

(2) Mooney-Rivlin
最もポピュラーな関数です。特に下式の2パラメータモデルは頻繁に利用されています。

(3) Yeoh
変数の数を減らすことにより、実験データが少ない場合でもよりよい推定が可能です。

(4) Ogden
計算コストが高いという弱点がありますが、かなり大きなひずみまで対応できます。

その他、ArrudaBoyce 、Gent 、多項式などがご利用いただけます。ゴム材料の損傷を表現するMullins効果も入力できます。

カーブフィッティング

ひずみエネルギ密度関数の各種定数の値は一般に不明です。そのため、材料試験データからカーブフィッティングという機能を使用して定数を算出します。

材料試験は「単軸引張」「等方二軸引張」「せん断」の3種類を用意できれば理想的ですが、最低1つでもあればカーブフィッティングは可能です。

材料試験で得られた応力−ひずみデータを入力しカーブフィットを解析すると自動的に定数が算出され、試験データとフィッティング結果を比較したグラフが表示されます。

材料試験データが足りない場合

カーブフィッティングで省略した試験モードの挙動は関数による推定となり、実際の材料と異なる恐れがあります。
単軸試験しかないケースがよくありますが、その場合はNeo-HookeanやYeoh 、Arruda-Boyceを利用すると予期しない挙動を防止しやすくなります。
ヤング率しかない場合、本来は材料試験を実施すべきですが次善の策としてヤング率を3で除した値をNeo-Hookeanの定数として入力し対応する方法があります。

メッシュ作成と要素座屈

ゴム材料は大きな変形を伴いますので、要素崩壊を防ぐため六面体メッシュを使用するケースが多いです。


要素は低次要素を用いることをお勧めします。Workbenchはデフォルトで高次要素を使用しますが、高い圧縮を伴う解析では中間節点の部分で要素が折れ曲がる「要素座屈」現象が発生し解析が発散することがあります。
低次要素を用いるには、[メッシュ]の詳細ビューで[要素中間節点]を"なし"に設定します。

ゴム材料の接触

ゴム材料の解析では接触が不可避です。一般にゴム材料とその他の材料の剛性差は非常に大きいため、ゴム以外の部分は剛体として設定します。剛体に設定したボディは内部的に質点となるため、計算コスト低減が期待できます。

解析設定

ゴム材料は変形が大きいため、必ず大変形ONで計算します。非線形性が強いことが多いため、サブステップ数を手動で設定することをお勧めします。

ポスト処理

ゴム材料の解析で特によく用いられるポスト処理機能があります。

(1) 接触圧力
ゴムがどの部位でどのぐらいの強さで接触しているかを観察できます。シール性の評価に役立ちます。

(2) 接触反力 ゴム部品が受ける反力を表示します。反力を見たい接触を[結果]にドラッグ&ドロップするだけで結果を追加できます。


(注) 解析実行前に[解析設定]で節点力を出力するように設定変更してください。

(3) 応力−ひずみグラフ
応力とひずみの関係をグラフ化したい場合、応力結果とひずみ結果を選択してチャートボタンを押すだけでグラフが作成されます。

最後に

弊社では、ゴム材料の解析に関する特別セミナーを不定期で実施しております。
セミナーでは、本稿で触れなかった様々なテクニックや注意点、具体的な解析方法を紹介しています。セミナーに関する最新情報は以下をご覧ください。

セミナー日程表

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