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CAEを学ぶ

お悩み別に見るAnsysカスタマイズ実用事例

カスタマイズの活用術をご紹介いたします。

Ansysの豊富な機能、そのメリット・デメリット

汎用有限要素法CAEツールAnsysの最大の特徴は、構造・伝熱・流体・電磁場といった複数の物理現象(マルチフィジックス)を、複雑に組み合わせた高度な連成解析を容易に行える点にあります。これは言い換えれば、Ansysは多種多様な機能を、標準機能として最初から豊富に備えていることを意味します。
しかしいかに豊富な機能を備えていたとしても、汎用ツールである以上あらゆるユーザーの全てのニーズを完全に満たせるものではありません。また、この豊富な機能というAnsysの強みを別の視点から捉えると、単純な解析を行うには、操作がやや煩雑だと感じる方もおられるかもしれません。

Ansysの可能性を無限に広げるカスタマイズ

カスタマイズが、これらの問題を解決する有効な手段となります。
カスタマイズは専門性の高いごく限られた解析分野・技術領域の問題をAnsysで取り扱うことを可能とし、その一方、煩雑な操作や繰り返し処理を集約・自動化しAnsysの利便性をより向上させるという、解析作業の現場に真にフィットしたツールへとAnsysを作り変えることができるのです。
以下にAnsysが備える代表的なカスタマイズ機能を列挙します。

Workbenchスクリプティング

Ansys Workbenchのプロジェクト画面の動作を制御するPythonコードを、GUIの操作から記録・再生することが可能です。Pythonコードはプレーンテキストで記述されたスクリプトコードであるため、記録された内容を適宜修正することで、プロジェクト画面の処理を自由に制御・自動化することが可能です。

外部接続アドイン

Ansys Workbenchと他の外部アプリケーションを、パラメータを介してデータ統合し、外部アプリケーションをプロジェクト画面のワークフローへ参加させることを可能にします。また、プロジェクト画面のメニューとツールバーをカスタマイズし、独自のメニューを追加することもできます。

JScriptマクロとJS Add-In

Ansys Workbench MechanicalおよびDesignModelerの動作を、JScriptで記述されたスクリプトコードで制御することが可能です。

TaskML

Ansys Workbench MechanicalおよびDesignModelerのウィザード画面をカスタマイズすることができます。

UPFとUIDL

Mechanical APDLのソルバーのカスタマイズ、およびGUIのカスタマイズを行うための手段です。

これら豊富なカスタマイズ機能を組み合わせることで、ユーザーは幅広い領域に渡りAnsysを自分好みのツールへと変貌させることができます。

カスタマイズを活用するコツは、まず現状の問題点を把握すること

さてここで、これら豊富なカスタマイズ機能が具体的にどのようにご自身の解析業務に活用できるのか、イメージできますでしょうか? 恐らく、カスタマイズ機能の内容を網羅的に理解していたとしても、ここからご自身が本当に必要としているカスタマイズツールの完成形をイメージすることは困難でしょう。
これはカスタマイズに限ったことではなく、解析ツールを有効に用いるには、その機能を知るだけでなく、現在遭遇している問題点の整理(何に困っているのか)と、そのソリューション(どのようになれば満足なのか)を把握できている必要があるのです。ここで、多くのユーザーは悩んでしまいます。
この問題点に気付くということ、そして「こうできればいいのに」というイメージを持つこと、これがカスタマイズを有効に用いるためにまず必要な、そして最も重要なポイントになるのです。

お悩み別Ansysカスタマイズ実用事例

現状の問題点を把握するには、たくさんの具体例を実際に見てみることが最良で最短の手段です。ここでは、できる限り多くの事例を紹介いたします。この中に、お客様が直面している課題と近いと思われるものがあれば、是非お試しいただければと思います。

  • よく使うメニューだけを表示させたい。
  • 業務で使用しないメニューは表示させたくない。
  • 頻繁に使うメニューは目立つ場所に表示させたい。
  • 頻繁に使う設定をデフォルトの設定にしておきたい。

このようなお悩みをお持ちの方は、メニューのカスタマイズが有効です。特にAnsys Workbench Mechanicalの画面は、そのほとんどのメニューがカスタマイズ可能となっており、わずかな改良が大幅な作業効率の改善に繋がる事も珍しくありません。

  • 操作教育にかかる時間を減らしたい。
  • Ansysの習得時間を短縮したい。
  • Ansysの社内展開を容易にしたい。
Mechanical画面の多くのメニューはカスタマイズが可能
Mechanical画面の多くのメニューはカスタマイズが可能

解析ツールを広く社内展開し、製品開発の強力なツールとして活用したいというケースにおいて、操作教育にかかるコストが障害となることはしばしばです。そのような場合にはカスタマイズによってオリジナルウィザードを用意するという手段が大変有効です。
利用者は業務内容に特化されたウィザードによって最低限の操作手順を習得するだけでよく、またツールを展開する側にとってもマニュアル作成のコストなどを大幅に低減することが可能です。

  • 論文で見た材料モデルをAnsysで使いたい。
  • Ansysにない材料モデルで解析を行いたい。
CYBERNETツールボックス:圧電解析操作支援ウィザード
CYBERNET Extensions - 圧電 -
引張・圧縮で異なるクリープ特性
引張・圧縮で異なるクリープ特性

Ansysには多くの材料モデルがプリセットされていますが、現実世界には数え切れないほどの多様な物質が存在しており、それらを表現する数学モデルが次々に提唱されています。カスタマイズによってそれらを実装することで、Ansysの解析対象を格段に広げることができます。

  • Ansysにはない要素を組み込んで解析したい。
  • もっと変形に強い要素で解析を行いたい。
  • もっと収束性の良い要素で解析を行いたい。
  • 論文で見た高機能要素をAnsysで使いたい。
  • 他のCAEツールと同じ機能を持った要素をAnsysで使いたい。

汎用CAEツールのAnsysで、研究段階の最先端の有限要素理論を利用できるとなればいかがでしょう。革新的なシミュレーション技術を他社に先駆けて製品開発にフィードバックすることができれば、そのメリットは計り知れません。UPFを用いたAnsysソルバーのカスタマイズは、このような無限の可能性を秘めています。

  • プロジェクト画面の処理を自動化したい。
  • 複数の解析システムの処理を一括して行いたい。

プロジェクト画面に独自のダイアログを表示させ、Pythonコードと組み合わせれば、プロジェクト画面上の各種操作を、効率よくスマートに実行することが可能です。

  • 決まった形状しか解析しないので専用メニューを作りたい。
  • 頻繁に解く問題に特化したメニューを作りたい。
  • 変更する値が限られているので、集約したい。
カスタマイズされた要素定式化を用いた高ロバスト要素によるねじり解析例
カスタマイズされた要素定式化を用いた高ロバスト要素によるねじり解析例
(協力:東北大学 寺田賢二郎様、日東紡績株式会社 平山紀夫様)

Ansys Workbenchは、プロジェクト画面とMechanical画面でデータを双方向に伝達することが可能であり、例えば社内規格に沿った形状しか解析しないという場合、必要事項のみを集約した専用メニューをプロジェクト画面に表示させれば、それのみの操作で全ての解析作業を完結させることが可能になります。


CYBERNETツールボックス:解析システム選択更新機能
左:形状パラメータと連動させた自動化メニューの例 右:PlanetsⅩの荷重転送機能例
左:形状パラメータと連動させた自動化メニューの例   右:PlanetsⅩの荷重転送機能例

まとめ

いかがだったでしょうか。これら具体例の数々がお客様の問題解決のきっかけとなれば幸いです。
どのようなカスタマイズも、その効能は最終的に業務効率の改善という点に集約されます。これにより、解析に携わる技術者は結果評価や修正案の検討といった、ものづくりの本質に関わる部分に集中することが可能となります。
サイバネットシステムはAnsysのカスタマイズをお客様のものづくりを支える重要テクノロジーと位置づけ、今後もサービスを提供してまいります。カスタマイズに関するどのようなお問い合わせもお気軽にお尋ねください。


当社発行誌「CAEのあるものづくり」は、CAE技術者の方や、これから解析を行ないたい設計者の方を対象としたWEBマガジンです。年2回(春、秋)発行し、Ansysシリーズを始めとした各種CAE製品紹介はもちろん、お客様の解析事例紹介やインタビュー記事、解析のテクニックなど、スキル向上に役立つ情報をご提供しています。
詳しくは、WEBマガジン「CAEのあるものづくり」をご覧ください。

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