CAEを学ぶ
Ansys Workbench-Excelリンク機能のご紹介
Ver13.0よりWorkbench環境でExcelとの連携機能が新たに搭載されました。このリンク機能の出来ることと使用した簡易疲労事例についてご紹介いたします。
Excelリンク機能で何ができるのか?
Ver13.0よりWorkbench環境でExcelとの連携機能が新たに搭載されました。このリンク機能の注目すべき点はExcelとWorkbenchでパラメータを“双方向に”やり取りできることにあります。
WorkbenchのパラメータをExcelに出力→Excelで演算→演算結果をWorkbenchに戻す、という一連の流れを作ることで、Excelを一つのモジュールのように扱うことが可能なのです。
CAEのウィークポイントを補強
この機能は設計プロセスにおけるCAEのウィークポイントを補強するものになります。実際の設計プロセスを考えてみると、様々な技術規格を考慮したり、コストを勘案したりと、CAEだけでは完結しない作業が多数あります。そのためCAEで解析した設計案をExcelに手入力して検討し、またCAEで解析してExcelで再検討し…と手作業でCAEとExcelを行ったり来たりしなければならず、非常に手間がかかっていました。
Excelリンク機能を使用すればパラメータが自動的に転送され、煩雑な手作業から解放されます。また、パラメータを双方向にやり取りできるため、CAEソフト上で規格やコストを考慮した設計プロセスを構築できるのです。
Excelリンク機能操作方法
Excelリンク機能を使用するには、Ansysの各バージョンに対応したExcelのバージョンをご利用ください。
Excelファイルの準備
まずExcelのファイルを準備します。Excelのシートを作成し、どのセルでパラメータを受け取る/渡すかを決めておきます。
続いてパラメータを受け取る/渡すセルに名前をつけます。パラメータ名は英数字のみにしておきます。冒頭に“WB”とつけると、Workbenchが自動的にパラメータだと認識してくれます。
なお、単位が記入されているセルもまとめて名前をつけると、Workbenchが自動的に単位も認識してくれるようになり便利です。
プロジェクト概念図にExcelを追加
コンポーネントシステムのMicrosoft Office Excelをプロジェクト概念図に追加します。
プロジェクト概念図に追加した後、Excelのファイルを指定します。
指定した Excel ファイルは自動的にプロジェクト内部にコピーされ、以降はコピー先のファイルが編集対象になります。
パラメータのタイプを指定
Excelのファイルを指定すると、自動的に“WB”で始まる名前付けがされているパラメータが読み込まれます。
Excelの[解析]セルの設定を編集し、パラメータをインプットまたはアウトプット(出力)のどちらのタイプで取り扱うかを設定します。
設定が終わると、プロジェクト概念図でExcelとWorkbenchのパラメータセットが紐付けられているのが確認できます。以後、Excelのパラメータは他のWorkbenchのパラメータ(寸法や応力値等)と同等の取り扱いが可能です。
パラメータの確認と設定
プロジェクト概念図で[パラメータセット]を開くと、Excelから読み込まれたパラメータが確認できます。
WorkbenchからExcelにパラメータ値を渡したい場合(たとえば応力値を渡したい等)は、Workbenchの出力パラメータとExcelのインプットパラメータを関連付ける式を入力します。
この例では「P1相当応力最大値」をExcelの「WB_Stress」と関連付けるため、WB_Stressに「P1」と入力しておきます。
活用例 Excelリンク機能を使用した簡易疲労解析
機械部品の設計において疲労寿命を考慮することは非常に大切です。疲労寿命を推定するには、疲労解析ツールを使用するのも一案ですが、簡易的には構造解析で得た応力値をS-N曲線と比較すればよいと考えられます。しかし、構造解析をするたびにS-N曲線を見比べていては手間がかかってしまいます。
そこでExcelにS-N曲線データを入力し、応力値を入れれば自動的に疲労寿命を算出するように作成しておきます。ExcelとWorkbenchをリンクさせ、構造解析の応力値をExcelに出力し、算出した疲労寿命を取り込むようにすれば、Workbench上で疲労寿命を見られるようになります。ここでは疲労寿命のバラツキも考慮するため、破壊確率S-N線図を用いて、どの程度の信頼性があるかも評価しています。
実際に解析を行うと上図のようになります。構造解析で得られるのは応力値だけですが、リンク機能によりExcelで算出した疲労寿命もWorkbench上で表示されるため、簡単に設計評価が行えることがわかります。
最後に
Ansys Workbenchは解析機能だけにとどまらず、設計プロセス全体を効率化すべく様々な開発が進められています。今後の機能拡張にご期待ください。
当社発行誌「CAEのあるものづくり」は、CAE技術者の方や、これから解析を行ないたい設計者の方を対象としたWEBマガジンです。年2回(春、秋)発行し、Ansysシリーズを始めとした各種CAE製品紹介はもちろん、お客様の解析事例紹介やインタビュー記事、解析のテクニックなど、スキル向上に役立つ情報をご提供しています。
詳しくは、WEBマガジン「CAEのあるものづくり」をご覧ください。