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構造解析

構造解析技術者のための複合材料入門(1)

複合材料の概要と力学的特性(直交異方性材料の力学)

構造解析技術者のための複合材料入門(1)

CAEのあるものづくり Vol.26|公開日:2017年5月

目次

  1. はじめに
  2. 複合材料の特徴
  3. 直交異方性材料のフックの法則
  4. 一方向強化複合材料の任意方向におけるフックの法則
  5. おわりに

はじめに

複合材料(Compositematerial)は、ここ十数年で、航空機産業や自動車産業を中心に、私達の日常生活のなかで広く知られる存在になり、複合材料を対象にしたCAEも飛躍的に進歩しました。しかしながら、現状の優れたCAEツールを駆使したとしても、構造解析技術者が複合材料の解析を容易に行えるようになったわけではないと感じています。

著者は、複合材料の構造設計の難しさは、異方性の材料設計と構造設計の両方を同時並行で行わなければならない点にあると思っています。これは逆に考えれば、複合材料がユーザーニーズに合わせて材料設計ができる『テーラード・マテリアル』であることを意味しており、複合材料の最大の魅力でもあります。今回、複合材料の一般的な力学的な解説に加え、CAE(特にAnsysやAnsysWorkbench)を駆使して構造解析を行っている技術者の方々が、複合材料の構造解析を始めるに当たって必ず押さえておきたい点についてご紹介したいと思います。

今後4回に渡って次のような内容で連載を予定しています。

  • 第1回 複合材料の概要と力学的特性(直交異方性材料の力学)
  • 第2回 積層材料の力学的挙動とFEM解析における留意点
  • 第3回 複合材料の破壊現象と各種破壊則
  • 第4回 複合材料のミクロ・マクロ解析

複合材料の特徴

複合材料は2つ以上の異なる材料を複合して、単体の材料では実現ができなかった優れた材料特性を実現することが可能です。たとえば、プラスチック製のヘルメットは、プラスチック単体で作製されているのではなく、プラスチックの中にガラス繊維が入っています。工業材料としてのガラス繊維は、ガラスを溶融紡糸して製造された非常に細い繊維(直径5~20μm程度)で、軟鋼よりもはるかに強い強度を有しています。プラスチックだけでは強度が弱いので、このガラス繊維で補強しています。このような材料を繊維強化プラスチック(FiberReinforcedPlastics,FRP)と呼んでいます。繊維にガラス繊維を用いた材料はGFRP、炭素繊維を用いた材料はCFRP、アラミド繊維の場合はAFRPと呼ばれています。ガラス繊維や炭素繊維を強化材(reinforcement)、強化されるプラスチックを母材あるいはマトリックス(matrix)と呼び、FRPは複合材料の典型的な例です。

複合材料の最大の特徴は軽くて強いということです。「軽い」ということと「強い」ということは異なる概念ですが、これを1つのものさしで表現する方法として、「比強度」と呼ばれる物理量があります。比強度は「強さ」を「比重量(単位体積当たりの重さ)」で除した量です。図1に、各種材料の比強度を示しますが、この図からも複合材料が単一材料と比較して、「軽くて強い」材料であるということが確認できます。鋼などの金属材料では、比強度が4の壁を超えることができませんでしたが、複合材料が開発されて、人類は初めてこの4の壁を突破できたといっても過言ではありません。

図1 各種材料の比強度1)
図1 各種材料の比強度 1)

しかしながら、その一方で、複合材料は強い異方性を有しているため、構造解析の際には注意が必要です。工業的に使用される複合材料は、図2及び図3に示すように、ガラス繊維や炭素繊維を一方向に整列した連続繊維をマトリックスで固めた複合材料(一方向強化複合材料)や繊維織物で強化した織物複合材料が一般的です。これらの複合材料の代表的な異方性材料物性値を図2および図3に併記しています。これらの値からも明らかなように、異方性の各軸方向の縦弾性係数だけではなく、ポアソン比等も異方性を持っていることがわかります。

図2 炭素繊維一方向強化複合材料の力学的特性
図2 炭素繊維一方向強化複合材料の力学的特性
図3 炭素繊維織物(平織)複合材料の力学的特性
図3 炭素繊維織物(平織)複合材料の力学的特性

直交異方性材料のフックの法則

複合材料は、2章でも述べたように、方向により強度や剛性が異なる異方性材料です。しかしながら、実際に工業的に使用される複合材料は、図4に示す一方向強化複合材料を重ね合わせて作成された積層材料や繊維織物で強化した織物複合材料が一般的です。このような一方向強化複合材料や織物複合材は…

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