解析講座粘弾性モデルの基礎(後編)

目次
  1. 時間変化する入力を与えたときの材料応答
  2. 線形粘弾性モデルの一般化
  3. 線形粘弾性モデルの3次元モデルへの拡張
  4. おわりに

前回の記事「粘弾性モデルの基礎(前編)」を読む

時間変化する入力を与えたときの材料応答

前編では、MaxwellモデルとVoigtモデルに対して、一定応力や一定ひずみという最も単純な入力を与えた場合の応答について考えました。粘弾性モデルは時間依存変形を表現するモデルですので、時間とともに変化する入力を与え、もう少し一般的な条件に対する材料応答を見てみましょう。ここでは、図9に示す2つの解析条件を考えます。

図9 解析条件
図9 解析条件

(a)の解析条件1 では、ある時刻から線形的に入力が増加したのち一定値でしばらく停止します。その後入力が0 になるまで直線的に減少し、0 で一定時間保持する、という条件です。(b)の解析条件2 は正弦波による周期的な入力となっており、振動に相当する条件です。これらの解析条件を、Maxwellモデルではひずみの入力として、Voigtモデルでは応力の入力として与えます。以降の各解析では、弾性体に対する応答もあわせて黒い実線で図中に示します。弾性体は入力に対して瞬時に応答するため、入力と出力の形は必ず相似となります。

Maxwellモデルの材料応答

まず、Maxwellモデルに解析条件1 をひずみ入力として与えた場合の応力応答を図10 に示します。黒い実線の弾性応答は、入力と相似な形状となることがわかります。これに対してMaxwellモデルの結果を見てみると、はじめの立ち上がりが弾性応答と比較して遅れており、また直線的でもないことがわかります。これは、ひずみ入力の上昇にともなって応力が増加する一方で、応力緩和も生じるためです。つぎの一定ひずみで保持する過程では徐々に応力が低下していますが、これも応力緩和によるものです。

図10 Maxwellモデルによる応力応答(解析条件1)
図10 Maxwellモデルによる応力応答(解析条件1)

結果として、このひずみ一定の過程でも応力応答は一定とはなりません。ひずみが減少する過程でも、上昇時と同様に応力緩和が生じるため直線的な減少とはならず、さらに入力は常に正の値にもかかわらず、応力応答が負になる場合があります。最後のひずみを0 で保持する過程では、応力緩和によって応力が0 へと漸近していきます。いずれの過程においても、η/E が小さくなるほど弾性応答との差異は大きくなります。

図11 Maxwellモデルによる応力応答(解析条件2)
図11 Maxwellモデルによる応力応答(解析条件2)

つぎに、Maxwellモデルに解析条件2 をひずみ入力として与えてみましょう。このときの応力応答が図11 です。図9 解析条件解析条件1と同様に、η/E が小さくなるほど弾性応答との差異が大きくなります。もう少し具体的には、η/E が小さくなると応力の振幅が小さくなり、さらに位相も入力とずれていくことがわかります。このように、周期的な入力に対して出力の位相がずれることは、粘弾性の特徴的な挙動の一つです。

ここで示した2 つの結果において、いずれの場合もη/E が小さくなるほど弾性応答との差異が大きく現れました。η/E は前編の4.1節で示した緩和時間に相当する量となっており、緩和時間が大きいほど弾性応答に近づくことに対応しています。すなわち粘性係数が相対的に大きいほど、材料応答は弾性に近づきます。

Voigtモデルの材料応答

続いて、Voigtモデルに解析条件1 を応力の入力として与えた場合を考えます。図12はこの時のひずみ応答です。はじめの立ち上がりが弾性応答と比較して遅れ、直線的な応答にならないことはMawellモデルと同様ですが、ある程度時間が経過すると弾性応答と同じひずみが生じる点が、Maxwellモデルとは異なります(Maxwellモデルは応力緩和が生じるため、時間の経過と共に弾性応答から離れていきます)。つぎの応力一定の過程でも、ひずみが弾性応答に達していればその後のひずみも一定となり、ひずみの減少は生じません。これらの傾向は、応力を減少させる過程や0 で保持する過程でも同様です。すなわち、Voigtモデルに応力の入力を与える場合、十分に時間が経過すると弾性応答が生じますが、粘性の影響によって入力に追従するのに時間を要することがわかります。またMaxwellモデルとは逆に、η/E が大きくなるほど弾性応答との差異は大きくなります。

つぎに、Voigtモデルに解析条件2 を応力入力として与えた際のひずみ応答を図13 に示します。解析条件1 と同様に、η/E が大きくなるほど弾性応答との差異が大きくなります。また、η/E が大きくなるほど応力の振幅が小さく、さらに位相も入力とずれていくこともわかります。すなわち、周期的な入力に対して出力の位相がずれるという挙動は、Maxwellモデルと同様です。

ここで示した2 つの結果において、いずれの場合もη/E が大きくなるほど、弾性応答との差異が大きく現れました。η/E は前編の4.2節で示した遅延時間に相当する量であり、遅延時間が小さい、すなわち粘性係数が相対的に小さいほど、材料応答は弾性応答に近づきます。

図12 Voigtモデルによるひずみ応答(解析条件1)
図12 Voigtモデルによるひずみ応答(解析条件1)
図13 Voigtモデルによるひずみ応答(解析条件2)
図13 Voigtモデルによるひずみ応答(解析条件2)

線形粘弾性モデルの一般化

以上で示したMaxwellモデルとVoigtモデルは、それぞれ粘弾性モデルの基本的な構成要素であるばねとダッシュポットを1 つずつ直列、もしくは並列に結合したモデルでした。非常にシンプルなモデルであり、応力緩和や遅延弾性など粘弾性の基本的な性質を定性的に表現できるものの、現実の粘弾性材料の挙動を定量的に評価するには、残念ながら多くの場合不十分です。そこで、より現実的な材料応答を表現するために、一般化Maxwellモデルや一般化Voigtモデルがしばしば利用されます。これらのモデルは、複数のMaxwellモデルやVoigtモデルを結合する(結果として複数のばねとダッシュポットが結合する)というのが基本的なアイデアとなります。

一般化Maxwellモデル

一般化Maxwellモデルは、図14 に示すように複数のMaxwellモデル(以降、それぞれのMaxwellモデルのことをMaxwell要素と呼びます)を並列に結合したモデルです。各Maxwell要素のばね定数と粘性係数は一般に異なります。ばねだけの要素とダッシュポットだけの要素をそれぞれ1 つずつ含むようモデル化する場合もありますが、Maxwellモデルにおいて粘性係数を十分に大きくすると線形弾性モデルに、弾性係数を十分に大きくすると線形粘性モデルにそれぞれ帰着することから、ばねだけやダッシュポットだけの要素もMaxwell要素の特別な場合と考えることができます。また結合する要素の数は任意であり、理論上はその数はいくつでも構いません。

図14 一般化Maxwellモデル
図14 一般化Maxwellモデル

各Maxwell要素が並列に結合されているため、各要素に生じるひずみはモデル全体のひずみε と等しくなります。すなわち、要素数がn 個の一般化Maxwellモデルに対して

(17)

となります。応力やひずみの右下添え字は、各要素の番号を表しています。一方、モデル全体に生じる応力は各Maxwell要素に生じる応力の和となります。

(18)

このようなモデルを考えると、モデル全体の弾性係数は各Maxwell要素の弾性係数の和となります。

(19)

このことから、各Maxwell要素の弾性係数は異なって構いませんが、その総和は実際の材料の弾性係数と一致するように決定することになります。

一般化Voigtモデル

一般化Voigtモデルは、図15 に示すように複数のVoigtモデルを直列に結合したモデルです。各Voigt要素のばね定数と粘性係数は、それぞれ異なって構いません。また一般化Maxwellモデルと同じように、ばねだけの要素とダッシュポットだけの要素をそれぞれ1 つずつ含むようモデル化する場合もあります。Voigtモデルにおいては、粘性係数を0 にすると線形弾性モデルに、弾性係数を0 とすれば線形粘性モデルにそれぞれ帰着することから、ばねだけやダッシュポットだけの要素もVoigt要素の特別な場合と考えることができます(Maxwellモデルとは傾向が逆なので注意してください)。一般化Maxwellモデルと同様に、結合する要素の数はいくつでも構いません。

図15 一般化Voigtモデル
図15 一般化Voigtモデル

各Voigt要素が直列に結合されていることから、各要素に生じる応力がモデル全体の応力σ と等しくなります。すなわち、要素数がn 個の一般化Voigtモデルに対して

(20)

となります。一方、モデル全体に生じるひずみは各Voigt要素に生じるひずみとなるので、

(21)

で与えられます。一般化Voigtモデルでは、モデル全体の弾性コンプライアンス(弾性係数の逆数)が各Voigt要素の弾性コンプライアンスの和となります。

(22)

すなわち、各Voigt要素の弾性コンプラインスの総和が、実際の材料の弾性コンプライアンスと一致するよう弾性係数を決定することになります。

CONTACT US

ご購入・レンタル価格のお見積り、業務委託についてはこちら。

お問い合わせ

ページトップへ