解析講座はじめてみよう!流体解析(実践編)
〜誤差との上手なつき合い方(4)モデル化による誤差について〜

目次

[ケーススタディ]乱流モデルの違いによる誤差

ここからはモデル化による誤差のうちA:乱流モデルの選択による誤差、について具体例を見ていきたいと思います。

目的

今回は乱流モデルの違いによる流れ場の違いを確認することを目的とし、乱流モデルを変更した場合の流れ場への影響や計算時間を確認します。

モデル

使用モデルを図4に示します。モデルは、全長34[m]、入口からキャビティまでの長さ4[m]、入口高さ4[m]、出口高さ5[m]、キャビティ高さ1[m]の、キャビティ(くぼみ)のある流路です



図4 解析モデル:キャビティ(くぼみ)のある流路

メッシュ

図5はモデルのメッシュを示します。今回は各モデルで同じメッシュを使用します。六面体メッシュで、流れに乱れが発生しやすいと考えられるキャビティ高さ周辺のメッシュを細かくしています。



図5 メッシュ(全体図および拡大図)

表1にメッシュ数およびメッシュ品質を示します。六面体メッシュで作成しているため、メッシュの直交品質は0.71と高い品質になっています。

表1 メッシュ数とメッシュ品質

解析条件

図6は解析条件を表します。乱流モデルとしてLESおよびRANSを用いた非定常解析を行います。解析時間は100[s]です。
境界条件、初期条件はともに同一の条件で、流路入口には十分に発達した流れの流速分布を適用しています。流路出口は大気開放(圧力1atmを想定)、流路壁は滑りなし壁と設定しています。



図6 解析条件(LESモデル、RANSモデルともに同一)

解析結果

図7は各モデルの100秒後の流れを表す動画です。LESモデル、RANSモデルともにキャビティ下部では流速が遅くなっていることが確認できます。しかしLESモデルでは段差部から後流で流路全体にかけて流れに乱れが発生していることが確認できますが、RANSモデルでは流路全体の乱れは確認できません。

図7 解析結果:各管の100秒後の流れ(動画)

図8はzx平面における0秒から100秒までの流速分布を表す動画です。LESモデル、RANSモデルともに段差部直下で流速が遅くなり、キャビティ中央部の流速は速く、下部は遅い傾向がみられます。LESモデルでは時間的な平均化は行わず、メッシュより大きな渦は直接計算を行っているので、段差部で発生したより小さな乱れまで再現することができ、また発生した乱れが時々刻々と変化していることも確認できます。RANSモデルでは時間的にも、空間的にも平均化を行ってしまうので、段差部で発生した乱れは大きな流れとしてしか確認することができません。

図8 解析結果:0-100[s]までの流速分布(動画)

図9はzx平面における0秒から100秒までの流速ベクトルを表す動画です。LESモデル、RANSモデルともに段差部直下で渦が発生しています。LESモデルでは発生した渦による影響で時々刻々と流れ場が変化しています。RANSモデルでは渦が発達してしまった後は流れ場に大きな変化はありません。

図9 解析結果:0-100[s]までの流速ベクトル(動画)

図10は図9と同じくzx平面における0秒から100秒までの流速ベクトルを表す動画で、段差部を拡大しています。LESモデルでは段差部で小さな渦が次々と発生していることが確認できます。RANSモデルでは段差部の渦が平均化されて大きな一つの渦となっています。

図10 解析結果:0-100[s]までの流速ベクトル(拡大図:動画)

図11はzx平面における0秒から100秒までの圧力分布を表す動画です。LESモデル、RANSモデルともに段差部で発生した渦の影響で、段差上部の圧力が低くなっています。LESモデルでは小さな渦の発生に伴って圧力分布も時々刻々と変化しています。RANSモデルは渦が発達してしまった後は圧力分布に大きな変化はありません。最大圧力はLESモデルで6.859[Pa]、RANSモデルで7.162[Pa]、最小圧力はLESモデルで-17.025[Pa]、RANSモデルで-9.442[Pa]となりました。

図11 解析結果:圧力分布(動画)

図12は管出口面における平均流速および最大流速の時間変化を表すグラフです。LESモデルは平均流速、最大流速ともに時間的な変動がみられ、RANSモデルは流速が安定する20[s]以降は大きな変動はみられません。また平均流速はどちらのモデルも2.4[m/s]程度でほとんど違いはみられませんが、最大流速はLESモデルでは3.2[m/s]、RANSモデルでは2.7[m/s]と違いがあります。これらの違いはLESモデルでは段差部で発生した乱れが平均化されずに管出口面まで到達しているためで、最大流速が大きくなり、時間的な変動も発生します。



図12 解析結果:管出口平均流速および最大流速の変化

表2に各モデルの管入口、出口の全圧とそこから求められる圧力損失、および計算時間を示します。管入口、出口の全圧は0秒から100秒までの全圧の平均値です。圧力損失はLESモデルで6.34[Pa]、RANSモデルともに6.83[Pa]となりました。
計算時間は、RANSモデルの計算時間がLESモデルの約1/3となりました。

表2 計算時間

まとめ

今回は乱流モデルの違いによる流れ場の違いを確認することを目的とし、乱流モデルを変更して解析を行いました。その結果、以下のことが確認できました。

  • 乱流モデルの違いによって流れ場に大きな違いがみられた。特に段差部での小さな渦の発生や、流れ場全体の時間変動についてはRANSモデルでは確認できず、LESモデルを用いた解析が必要であった。
  • 圧力分布についても大まかな傾向はRANSモデルでも確認できたが、流れ場の影響を受けた時間変動はLESモデルでないと確認できなかった。また管入口、出口の平均流速や全圧、圧力損失には大きな違いはみられなかったが、最大流速、最大・最小圧力は乱流モデルの違いによる差異がみられた。
  • 計算時間はRANSモデルのほうが大幅に短くなった。

乱流モデルの変更によるメリットとデメリット

今回の目的は乱流モデルの違いによる解析結果の違いを確認することでした。表3にLESモデルとRANSモデルを用いた非定常解析について、メリットとデメリットを示します。

表3 LESモデルとRANSモデルを用いた非定常解析におけるメリット・デメリット

LESモデルを使用することで流れ場の時間変動を捉えることができますし、小さな渦まで再現できるため、実際の流れ場に近い状態を再現することが可能になります。しかし計算時間はRANSモデルの約3倍と、非常に長くなってしまう点に注意が必要です。また今回はLESモデル、RANSモデルとも同じメッシュを用いましたが、一般的にはLESモデルの方が細かいメッシュが必要となるため、解析コストの差はさらに大きくなることも考えられます。
そのため「流れ場の時間変動や小さな渦による変化が重要な場合はLESモデルを使用する」、「大まかな流れ場についてすばやく知りたい場合はRANSモデルを使用する」など、【再現したい流れ場】をきちんと把握し、【解析コストとのバランス】をみながら乱流モデルを決定して下さい!

おわりに

いかがでしたか?モデル化が原因となる誤差にも、いくつか種類があることがお分かりいただけたかと思います。目的に応じて上手にモデル化を行ってください。
第5回は、計算誤差について解説します。どうぞご期待ください。

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