解析講座粘弾性モデルの基礎(前編)

目次

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はじめに

材料の変形挙動がひずみ速度(変形速度)によって変化することを、変形のひずみ速度依存性もしくは時間依存性と呼びます。例えば、材料に一定の応力を負荷し続けたとき時間とともに徐々にひずみが増大していく現象をクリープ変形と呼び、これは代表的なひずみ速度依存変形の1つです(図1(a))。別の例として、材料に一定ひずみを与えた際に時間とともに応力が低下していく現象を、応力緩和といいます(図1(b))。これらの現象は、一定の応力に対してひずみ速度が、もしくは一定のひずみに対して応力速度が発生しており、一定の入力に対する出力が時間の関数となっています。

図1 ひずみ速度依存変形の例
図1 ひずみ速度依存変形の例

金属材料は室温下の弾性変形の範囲において、変形のひずみ速度依存性がほぼ無視できますが、高温条件下では弾性域でもひずみ速度依存性が表面化することがあります。
また、高分子材料(樹脂材料やゴムなど)は、金属と比較して室温付近でも顕著なひずみ速度依存性を示すものが珍しくありません。このため、高分子材料の変形においてひずみ速度依存性は重要な特性の1 つであるといえます。ひずみ速度依存性を表現する代表的な材料モデルが、粘性モデルと弾性モデルと組み合わせた粘弾性モデルです。
粘性という言葉を聞くと、流体のイメージを持たれる方が多いかも知れません。流体における粘性(粘度)とは、流体による抵抗力の速度依存性と解釈できます。例えば水と蜂蜜を比較すると、後者の粘性が高いことは直感的にもイメージできると思います。両者の中で物体を動かすとき、低速においてはどちらも抵抗力が小さいものの、速度を上げると蜂蜜の方がより大きな抵抗力を示します。すなわち、蜂蜜の方が速度の変化に対して抵抗力の変化が大きく、これを定量的に表現するのが粘性という概念です。
速度に依存する抵抗力という考え方は、固体材料の変形にも同様に適用することができるため、変形のひずみ速度依存性を粘性と表現するのです。
本稿は、最も基本的な粘弾性モデルである線形粘弾性モデルの基礎を理解して頂くことを目的としています。前編では線形粘弾性モデルの基本的な考え方とともに、2つの代表的なモデルであるMaxwellモデルとVoigtモデルの概要を解説します。

線形粘弾性モデルの構成要素

線形粘弾性モデルは、図2に示すばねとダッシュポットを構成要素とし、これらを結合したモデルとして表されます。ばねとダッシュポットはそれぞれ線形弾性モデル、線形粘性モデルとなりますが、最終的な応力とひずみの関係は線形ではなく非線形材料応答となることに注意してください。
はじめに、線形粘弾性モデルの構成要素であるばねとダッシュポットについて考えましょう。ここでは、応力とひずみをそれぞれ σ 、ε 、それぞれの時間微分を σε とします。簡単のために1次元問題で考え、微小変形を想定しています。3次元モデルへの拡張については、後編で解説します。
ばね(線形弾性モデル)は応力とひずみが比例するというモデルで、いわゆる線形弾性変形を表現します。すなわち、応力とひずみの間につぎの関係を仮定します。

図2 線形粘弾性モデルの構成要素
図2 線形粘弾性モデルの構成要素
式(1)

E は弾性係数であり、[圧力]の次元を持つ材料定数です。
ばねの変形は速度に依存しない、すなわち入力に対して瞬時に変形するモデルであり、これは固体的な変形特性と捉えることができます。ばねの変形の特徴として、応力とひずみが常に1対1に対応することが挙げられます。
つぎにダッシュポット(線形粘性モデル)は、応力とひずみ速度が比例するというモデルです。

式(2)

η は粘性係数と呼ばれる材料定数で、[圧力×時間]の次元を持ちます。ダッシュポットは変形速度に比例した抵抗力、すなわち粘性が生じることを表現しており、変形が速度に依存するモデルとなります。具体的には、変形が高速になるほど大きな抵抗力を示し、流体的な変形特性と捉えられます。ダッシュポットの特徴として、一定の応力が入力されたとき、ひずみ速度が一定になるため、変形が無制限に生じることが挙げられます。

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