[美濃窯業株式会社]ANSYS Fluentを活用した、セラミックス焼成炉の省エネ化への取り組み 「今まで培ってきたノウハウが理論的にも正しいことがわかり、明確な裏付けができました。」

今回は、美濃窯業株式会社様にお話を伺いました。
創業1918年。もうすぐ100周年を迎える美濃窯業様は、耐火物事業を技術の基礎とし、セメント業界や鉄鋼業界をはじめとした基幹産業に質の高い製品を提供されてきました。創業主である太田真一氏は、東京駅舎外壁の赤レンガ製造者としても知られており、品質への情熱は今日まで脈々と引き継がれています。
近年では今まで培った耐火物製造技術を生かし、世界の重化学工業を支える工業窯炉、セラミックプラント工事に注力するほか、アスファルトなどの路盤材の製造など、精力的に活躍の場を広げておられます。特にファインセラミックス焼成用高温炉(スーペリオキルン)の納入実績では国内トップクラスのシェアを獲得されています。
また2013年からはTherMAT(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合)のメンバーとして、環境性能に優れた、革新的な燃焼炉の研究開発に着手され、そのご活躍に期待が集まっています。
本日は、ANSYS Fluentを活用してTherMATの活動に取り組まれている、プラント部 開発課の皆様にお話を伺いました。

今回お話いただいた方々
プラント部 開発課 (2015年7月時点)
マネージャー 加藤 貴正 様
齋藤 由樹 様

(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

目次

「美濃窯業の窯でしか焼けない」国内外で支持される、セラミックプラントの一貫メーカー

- 事業内容についてお聞かせください。

加藤 美濃窯業は耐火レンガやセラミックスを主体とした事業を展開しています。
もともとは耐火物の製造販売が主な業務だったのですが、近年は耐火物の製造で培ったノウハウをもとに、焼成工程設備の設計や製造も実施しています。
セラミックプラントの一貫メーカーとしても国内外で好評いただいており、「美濃窯業の窯でしか焼けない」と言ってくださるお客様も少なくありません。
中でもファインセラミックス焼成用の燃焼炉は、国内トップのシェアがあります。
我々が所属するプラント部は、そうした設備の設計・製造を担当しています。

- セラミックスの焼成は、どのような点が難しいのですか?

加藤

加藤 貴正 様
ファインセラミックスを焼成するには、当然ながら炉を高温(1600 〜 1800℃)にする必要があります。しかし急に温度上昇をさせると焼成中にファインセラミックスが壊れてしまいますので、非常にゆるやかに温度を上げなくてはいけません。例えば、100℃から600℃までの間は、1時間で1℃ずつ温度上昇させたりするのですが、場合によっては一定時間150℃を維持するなど、より細かい制御が必要になることがあります。
さらに焼きムラを防ぐためには、炉内のすべてのバーナーを同じ状態で維持しなくてはならず、高度な技術が求められます。当社では、特殊なバーナーと精密温度制御システムを開発することで、これらの課題を解決しました。

- 燃焼炉の3次元モデルを拝見しましたが、とても複雑な仕組になっていますね。これらは一点一点、オーダーメードで設計されるのですか?

加藤 基本的にオーダーメードです。製品の形や大きさはお客様によって違いますので、最も効率良く製品を配置・焼成できるものを納品しています。

- 市場のニーズについてお聞かせください。最近、重要度が増している課題は何ですか?

加藤

エネルギー効率の改善です。当社には長年のノウハウがありますので、物を焼成するだけだったら、今のままでも良い製品は作れます。しかし近年では、セラミックスの分野でも燃費が重要視されるようになってきました。このため、製品開発においても従来とは違ったアプローチが必要になっています。

燃費の改善方法で、一番効果があると考えられるのは炉の軽量化です。温めるエネルギーは重さに比例しますので、設備に使っている耐火レンガがもっと軽いものになれば、必要エネルギーも少なくて済みます。ただし、軽くすれば強度はどうしても落ちてしまいますので、どうしたら強度を維持しつつ軽量化できるか、日々研究を重ねています。

2013年より未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合に参画。研究開発に必要なツールとしてANSYS Fluentを導入

- 御社には2013年にANSYS Fluentを導入いただいていますが、燃費改善のために導入されたのでしょうか。導入経緯をお聞かせください。

加藤

2013年より、当社はTherMAT(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合)というプロジェクトチームに参画しており、ANSYS Fluentはその活動に必要なツールとして導入しました。
TherMATは、経済産業省が2013年度から10年計画で企画・実施する「未利用熱エネルギー革新的活用技術研究開発」プロジェクトの委託先として組織された、産官学連携組織です。
近年、省エネやCO2排出量削減の一層の推進が強く求められていますが、その一方で、様々な業界で使われるエネルギーの半分以上が、実は利用されずに排熱になっています。TherMATではこの問題を解決するために、蓄熱技術、遮熱技術、断熱技術、熱電変換技術、排熱発電技術、ヒートポンプ技術、熱マネージメント技術、基盤技術という8つのテーマを設け、各社で分担して研究を進めています。

詳細:http://www.thermat.jp/

この中で、美濃窯業は断熱技術の研究開発を担当しています。具体的には、燃費性能に優れた軽くて丈夫な耐火レンガの開発がテーマです。これは当社の別部門で研究開発を行っているのですが、素材を作っただけではその効果が実証できません。そこで我々が所属するプラント部にて、新素材の耐火物を活用した設備を設計・製造しています。

- このプロジェクトで、どのくらいの効果が見込めそうですか?

加藤

齋藤 由樹 様

成果は大であると考えています。もともとファインセラミックスの焼成炉はエネルギー効率が良くありません。例えば製品を1600 〜 1700℃に加熱するには、中の製品を温めるエネルギーに加えて、その設備を温めるエネルギーが必要です。また排ガスが持ち去るエネルギーや、熱伝導で炉の表面から出ていくエネルギーなどを集約すると、実際には全体のエネルギーのほんの数%しか、セラミックスの焼成に使われていない計算になります。しかし、仮に現在のエネルギー効率が1〜2%とすると、それが3 〜 4%になるだけで、使用するエネルギーは半減しますよね。少しでも改良されれば大きな効果が期待できます。将来有望な分野だと思います。

また、排出した熱をうまく回収して再利用することも、未利用熱問題の改善の糸口と考えています。ファインセラミックスの装置は高温でも使用できる熱回収装置が求められますが、1500℃もの高温の排熱に対応できるような熱回収装置は、現在わずかしか市場に出回っていません。そこで当社では、高温に耐えられる高性能な熱回収装置の研究開発も進めています。

決め手は燃焼解析機能と乱流モデル。導入したことで、今までのノウハウが理論的にも正しいことが判明。

ANSYS Fluentを導入したのは、まずは炉内の状態がどうなっているのか現状を把握するためです。
高温の炉内の温度を測定することは困難なため、シミュレーションツールが必要でした。複数製品を比較検討した結果、バーナーの燃焼解析ができ、乱流モデルが充実しているANSYS Fluentに決定しました。
齋藤 ガス輻射を考慮しないと熱交換器の計算はできませんので、ガス輻射がきちんとモデル化できるかどうかも重要でした。ANSYS Fluentを選んで正解だったと思っています。
加藤 当社の場合、燃焼の解析ができないことには、シミュレーションする意味がありません。以前から燃焼解析は外部に委託したりしていたのですが、簡易的な解析だったので、今回は燃焼解析がきちんとできることを必須条件としました。
導入してみて、今まで勘と経験でやっていたことが数値化されたのは嬉しかったです。今まで培ってきたノウハウが理論的にも正しいことがわかり、明確な裏付けができました。

- ありがとうございます。ではここで、いくつか解析事例を紹介いただけますか。

齋藤 こちらは高温スーペリオキルンという、ファインセラミックス焼成用ガス燃焼炉の解析事例です。流体解析を使って、内部の対流や温度分布を評価しています(図1)。

※高温スーペリオキルンとは

国内納入実績No.1 、約200℃の低温から1850℃までのガス燃焼用シャトルキルンです。特殊バーナーと精密温度制御システムの採用により、低温から高温域まで精密焼成が可能。特殊化学原料から超大型ファインセラミックス製品の焼成が可能であり、セラミックファイバーおよび自社製超高温断熱炉材の適用により省エネ化を実現しています。大型ファインセラミックス製品用の焼成炉として、「第2回ものづくり日本大賞優秀賞」を受賞した製品です。

加藤

炉内の様子を可視化できるメリットは大きいです。
我々の経験則では、おそらくこうした炉の内部では、気体は旋回しながら上まで上昇し、最後に中央から下に落ちると考えていました。そのため、ある程度以上の大きさの炉では、あえて中心には物を置かないようにして対流を促すなどの工夫をしていました。実際にそのほうが焼きムラが少なく効果があることはわかっていたのですが、ANSYS Fluentで理論的な裏付けができ、よりお客様に説明しやすくなりました。

また近年では、設備を有効活用するために、炉内の対流の様子が見たいというお客様も増えています。
例えば低温時は、有機物をゆっくり揮発させながら焼成するのですが、気流によってその有機物が飽和するかしないか、均一に広がるかが決まります。これは焼きムラの原因となり、ひいては品質に直結します。

シミュレーションで内部の様子がわかっていれば、例えば対流のないところは避けて製品を配置するなどの対策ができます。こうしたアフターサービスは、お客様の満足度向上という意味でも重要だと思います。

>>次ページ:前例のない解析テーマに取り組むため、サイバネットのサポートを活用。現在では流体解析だけでなく、構造解析や流体-構造連成解析にも着手。

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