[株式会社アドバンテスト研究所]最先端の半導体試験技術に、ANSYSの流体解析が貢献 「シミュレーションは再現性もよく、何より傾向がつかめる点にメリットを感じています。」


左から柿沼様、田中様

今回は、(株)アドバンテスト研究所様にお話を伺いました。
(株)アドバンテスト様は、1954年に「測定器」の分野の専門メーカーとして創業されて以来、計測・試験技術を軸に事業展開されてきました。なかでも半導体試験装置の分野では世界トップシェアの実績をお持ちです。
高密度化、微細化、高性能化が進む半導体デバイス。一方で信頼性やコスト削減の要求も高まっています。そうした中、アドバンテスト様は「先端技術を先端で支える」という経営理念そのままに、最先端の試験技術で、世界中の半導体機器メーカー様を支えてこられました。
また近年では蓄積した技術を活かして、試験装置周辺機器やEB露光装置をはじめとした半導体製造装置、テラヘルツ波による非破壊解析装置、MEMS技術による電子部品など、更なる先端技術の開発にも注力されています。
インタビューでは、その先端技術の中枢部である研究部門にご協力いただき、ANSYSのご利用状況について伺いました。

今回お話いただいた方々
Device Interface Project
サブリーダー 柿沼 文一様
田中 武様

(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

目次

最先端技術を担う研究部門

皆様の業務内容についてお聞かせください。

柿沼 (株)アドバンテストは、半導体試験装置や半導体搬送装置、非破壊試験装置、測定装置などを開発・販売しています。特に半導体試験装置では世界トップクラスのシェアがあります。

試験装置はすべてオーダーメードなのですか?

柿沼

柿沼 文一 様
基本的にオーダーメードです。お客様が新製品で打ち出したい性能を精度よく計測できるよう、製品をカスタマイズしてお出ししています。製品開発は群馬にあるR&Dセンタが担当しているのですが、開発スケジュールに間に合うように、お客様とはかなり早い段階からコミュニケーションを密に開発をしています。
また、半導体業界のお客様のニーズにお答えしていくには、我々の試験・計測技術も、常に業界の一歩、二歩先を目指さなくてはなりません。我々が在籍するアドバンテスト研究所では、日々、そうした最先端技術の基礎研究を行っています。
田中 具体的には、日々お客様と接しているR&Dセンタからの依頼を受けて研究することが多いのですが、研究テーマは多種多様です。必要な技術であることはわかっていても、非常に難易度が高く、どう取り組んだらいいかわからないような課題も珍しくありません。
また、取り扱う対象は昨今、半導体デバイスが微細化の一途をたどっていることもあり、それに伴い実験・評価の再現性を確保するのか非常に難しい状況にあります。

それに対してシミュレーションは再現性もよく、何より傾向がつかめる点にメリットを感じています。手がかりなしに実験をするのでは大変な時間がかかりますが、シミュレーションで理論的に傾向を把握してから実験を行えば工数をかなり削減できます。例えば、最初に我々が取り組んだ圧電インクジェットのインク吐出のケースでは、もし実験と手計算だけで対応していたら、倍の期間を要したかもしれません。
この業界では開発スピードは非常に重要ですから、シミュレーションを活用することの価値は大きいと思います。

また、社内で説明する際もシミュレーションは役立ちました。先述のとおり、対象物が微細なため現象を言葉や数字で説明するのは難しいものですが、解析結果の画像やアニメーションを使えば、専門外の人にも直観的に理解してもらえます。さらに数値計算で求めた理論解は、実験結果の裏付けとしても有効でした。

きっかけは圧電インクジェットのインク吐出のシミュレーション。サイバネットの立ち上げ支援サービスを活用

ありがとうございます。導入経緯についてお聞かせいただけますか。

田中 ツール自体はもう少し前に導入されたようですが、我々が使い始めたのは2011年です。配線パターン描画用の圧電式インクジェットプリンタの開発案件があり、ANSYS Multiphysicsを使ってインク吐出時の挙動と、吐出後のインクの流れを解析しました。
以前にも回路系のシミュレーターは使ったことがありましたが、有限要素法は全くゼロからの経験でしたので、サイバネットに立ち上げ支援※を依頼し、モデ ル化の段階から全面的にサポートしてもらいました。

※ 立ち上げ支援サービスとは:サイバネットのサービスの1つ。お客様の解析テーマをサイバネットのエンジニアが取り組み、モデル化をはじめとした解析手法を確立します。終了後は、確立した手法をお客様ご自身で利用いただけるよう、マニュアルや雛形をご提供します。
解析テーマも複雑だったので、まずは構造解析、圧電解析のみ。次にインク部分の圧力波の伝播を考慮した音響-構造連成、といったように、段階を踏んで進めてもらいました。
そしてサイバネットが解析技術を確立して、当社用の雛形(マニュアル)を作成する間に、我々はトレーニングを受講して、次の解析テーマにすぐに取り掛かれる状態をつくりました。

その事例が、2014年のANSYS Convergence(ANSYSのユーザー会)でご発表いただいた事例ですね。

田中

田中 武 様
はい。インクジェットで液体を吐出すると、基材に着弾して配線を形成します。サイバネットの立ち上げ支援を使って取り組んだテーマは、「インクジェットからどう吐出すれば、所望の液滴になるか」をANSYSのシミュレーションで求めることでした。一方、「着弾してから液体が流れ、形成していくまでの過程」を再現したのがこちらの事例です。
解析事例: 微小液滴内に生じる表面張力差対流の解析
柿沼 もともとANSYSを使い始めた目的は、インク吐出時の挙動を見ることだけだったのですが、シミュレーションの結果が良かったので、着弾後に所望の線幅にするための検討もANSYSでやってみようという話になりました。
田中 圧電インクジェットでは、レーザーを照射して加熱しながら配線を描画していくのですが、直径20μm以下の液滴の中にも表面張力差が生じ、その温度差で持ち上がり、配線幅が狭くなります。この現象を応用すれば、レーザーの照射位置を変えることで線幅をコントロールできると考えられます。
とはいえ液滴が10μm程度なので、ほんの数μmレベルの話になります。まったく取り組んだことのない未知のテーマで、どんな解析結果が出るかわかりませんでしたが、試しに解析してみると、予想通り照射位置によって液の広がり方が変化することがわかりました。そこで丁寧に実験結果と比較しながら、解析を進めていくことになりました。

この過程は、実験の場合はどう観察するのですか?

柿沼 実際に描画して挙動を観察します。バックライトを使い、インクを吐出する周波数と、LEDのフラッシュの回数を同期させながら、インクの形状変化をモニタリングしていきます。今回の事例では、実験で得られた形状とシミュレーションの結果を比較しながら現象を把握していきました。

最初のモデル作成のところでは、サイバネットにもかなり相談しました。

液滴の表面を滑らかにするところでしたね。実際にモデルを何度か見せていただき、いくつかご提案させていただきました。他に苦労されたことはありますか?

田中 一番苦労したのはメッシュ作成です。非常に微細なうえに動きが複雑で、複数方向の流れが同時に発生していたり、障害物の1つとして配線を考慮する必要がありました。そして複雑になればなるほど収束性が悪くなります。
柿沼 我々が得たい結果を出すために、メッシュサイズや境界条件を試行錯誤しながら調整していきました。

>>次ページ:「解析がなければ、この精度の結果は得ら れなかったはず」ANSYSの流体解析で、未知の領域であった現象の可視化に成功

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