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解析事例

シンフォニアテクノロジー株式会社

「我々も現場で積極的に手を動かし、汗をかくようにしています」〜電磁クラッチやパワエレ機器の設計現場で、Ansysが活躍〜


左から塩崎様、稲葉様、諸星様

今回のインタビューでは、シンフォニアテクノロジー株式会社様(旧 神鋼電機株式会社様)にご協力いただきました。
1917年の創業以来、「Motion & Energy Control」をコア技術に、航空宇宙、モーションコントロール、クリーン搬送機器、自動車用試験装置などのさまざまな分野において、世界中のものづくりを牽引されてきたシンフォニアテクノロジー様。
「響いてこそ技術」をコーポレートステートメントとして、多彩な技術と人材を武器に、人の心と地球の未来に「響く」製品開発を追求なさっています。また近年では中国やASEANへも積極的に進出され、グローバルな躍進が注目を集めています。

今回お話いただいた方々
開発本部 研究部
基盤技術グループ長 塩崎  明 様
稲葉 純吉 様
諸星 時男 様

(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

創業以来、発電機やモータ、産業機械をはじめ多種多様な製品を生産

まず、御社の事業内容についてお聞かせください。

塩崎

当社は、1917年に鳥羽造船所内に設立された電機工場を起源としており、2017年に創業100年を迎えます。創業以来、開発志向の電機メーカーとして、発電機やモータ、産業機械をはじめとして多種多様な製品を生産してきました。
従業員数は海外も含めて4,300人、国内では2,800人強です。工場は伊勢、豊橋、鳥羽の3拠点のほか、中国とタイにも生産拠点があります(2014年3月末現在)。

社名を変更されたのはいつですか?

塩崎

2009年に神鋼電機株式会社から「シンフォニアテクノロジー株式会社」に社名変更し、現在に至っています。「シンフォニア」とは「交響曲」という意味があり、様々な技術や個性を響かせあいながら、時代を牽引する新しい技術・サービスを提供していくことを目指しています。

当社の製品は大きく分けて「モーション機器」と「パワーエレクトロニクス機器」に分類することができます。
「モーション機器」は、例えば航空宇宙向けの電装品や空港の支援車輌、鉄道・建設車両用の電装品、シールプリントや医療画像として使われる高解像度の昇華式プリンタなどが挙げられます。また、電磁クラッチやブレーキは、その品揃えの豊富さと耐久性には定評があり、自動車や産業機械、OA機器など様々な業界のお客様にご利用いただいています。
一方「パワーエレクトロニクス機器」においては、例えばクリーン搬送機器の分野では、300?ウェーハ用ロードポートが世界のトップブランドとして高い評価を受けています。EV/HEV関連では、次世代自動車開発のための実験装置・各種試験機器でトップクラスの実績があり、近年では、EV用急速充電システムも製造しています。

この他、食品の加工・製造プロセスに見られる振動搬送機器や、製造ラインの要となる部品供給・並列搬送を行うパーツフィーダ、資源リサイクルにも威力を発揮するリフティングマグネットなど、様々な業界でものづくりに携わっています。

製品開発の基礎となる技術の開発・発展を担う専門部隊。
解析やCAE教育も担当

ご担当業務についてお聞かせ下さい。

塩崎

私達は開発本部研究部の「基盤技術グループ」に所属しています。基盤技術グループとは、当社の製品開発の基礎となる技術の開発・発展を担う部門です。テーマは材料開発から、CAE技術、振動制御、画像処理まで多岐にわたります。

私自身は、1994年に入社後、機械系の解析担当として研究部に配属されました。当時は電気系のエンジニアが多く、機械系の解析は私を含む2人で請け負っていました。その後、電磁界分野の解析や連成解析、最適設計などCAE技術の普及と高度化に力を入れてきました。現在は、その任務を稲葉、諸星に引き継ぎ、先程述べた基盤技術グループのまとめを担当しています。

稲葉

私はもともと、券売機や半導体製造装置などの機械設計を担当していたのですが、2009年にこの開発本部に異動になりました。担当は主に機械系の解析ですが、シミュレーションに限らず、材料力学を使った設計検証なども行っています。最近では流体解析にも着手しており、実験結果と比較しながら、少しずつ解析対象を広げているところです。

基盤技術グループのもう1つの役割が、CAEの人材育成です。解析のサポート役として、日々、設計者から寄せられるツールの使い方やモデル化の方法などの相談に応じたり、難易度の高い解析を請け負ったりしています。また新入社員を対象に、年2回のペースで講習会も行っています。

諸星

私は2009年の入社以来電磁界解析を担当しており、クラッチやブレーキの解析のほか、設計者のCAE教育やサポートも行っています。

Ansysの導入経緯は?

塩崎

80年代にPC版を導入したのが最初です。プリ・ポスト・ソルバーが一体型である点が高く評価されたようです。その後1995年にワークステーション版を5台導入し、本格的な運用が始まりました。

どのような用途でAnsysをお使いですか?事例をご紹介ください。

塩崎

図1は「自動車用電磁クラッチの磁場−構造連成解析」です。電磁クラッチは、電磁力により部品同士を吸引・接触させ、摩擦によりトルク伝達を行います。電磁力により部品が変形・接触し、またそれによって電磁力も変化するため、これらの相互作用を考慮した解析が必要となります。電磁力と変位をMultiFieldSolverで連成させた解析システムにより、高精度な電磁力推定が可能となり、設計現場で活躍しています。

図1 自動車用電磁クラッチの磁場−構造連成解析

塩崎

図2は「リニアフィーダのモーダル解析」です。リニアフィーダは、振動を利用して部品を搬送させる装置です。部品を安定に搬送させるためには、シュートと呼ばれる搬送路の振動の大きさを均一にする必要があります。振動状態の確認のため、モーダル解析や周波数応答解析が必要になり、リニアフィーダの設計には欠かせない解析です。

図2 リニアフィーダのモーダル解析

塩崎

図3は「電子機器筐体の構造解析」です。各種電子機器筐体はその対象により強度、振動の要求仕様が異なります。当社では航空宇宙、鉄道、車両向けの各種電源やコントローラを設計、製造しており、電子部品、プリント板、コネクタなどの信頼性確保のため、日々設計現場でAnsysによる構造解析が活用されています。最も重要な評価基準は対象製品ごとに工夫され、ノウハウとして蓄積されています。

図3 電子機器筐体の構造解析

材料力学とAnsys操作教育の講習会を定期開催。
今では設計者が主体的に解析を実施。妥当性の検証など、開発本部はサポート役

御社のCAE教育活動についてお聞かせください。

塩崎

当社では、お客様から解析結果やその結果の解説を求められることが少なくありません。設計者も、きちんとした基礎知識を身に付ける必要があります。そのため設計者向けのCAE教育はずいぶん前から実施してきたのですが、定例化したのはこの数年、稲葉が異動してきてからです。

稲葉

前の部門で設計をしていた頃から解析をしていたのですが、当時から基礎教育の必要性を強く感じていました。そこで講習会を定例化することを提案し、教材作成や講師も自分で担当してきました。

現在、講習会は年2回実施しています。主な対象は新入社員ですが、過去に参加できなかった社員も受講してもらっています。
1回目は夏に開催しており、「材料力学」をテーマに、はりモデルを使って、材料力学と実験、解析結果を比較するという2日間のコースです。教材はサイバネットの「CAEユニバーシティ」の教材を参考にさせてもらいました。一度受講すると、解析をどのように設計に役立てれば良いのか、イメージしやすくなるようです。
2回目は実際にAnsysを使うことを想定した操作教育で、冬に行います。こちらはサイバネットの入門セミナーの資料を活用しながら、伊勢、豊橋の2拠点で1日ずつ開催しています。その後は個別に相談に来てもらい、一緒に課題を解決しています。内容は課題の整理や解析テーマに合ったモデルの作成方法、ソフトの基本操作など様々です。こうして実践を積みながら、徐々にレベルアップしてもらっています。

CAE教育の効果はいかがですか?

塩崎

我々の役割が変わってきました。昔は、社内の解析業務は、専任部隊がすべて必死でこなしていました。今では、簡単にできるものはどんどん設計者に任せています。
そのため最近の我々の役割は、自分で計算するよりも検証のほうが大きいかもしれません。設計者が、自分が求めた計算結果を「シンフォニアの計算結果」として開示できるように、妥当性を証明するのです。

諸星

ツールが使いやすくなったこともあって、解析できる人も増えました。以前は各部門で解析ができる人は1名程度でしたが、年々増加していてライセンスが不足することも起こっています。電磁界解析も、自力で解析する設計者がかなり増えました。新しいテーマに取り組むときは、まずは我々が取り組んで、手法を確立してから設計部門に展開するようにしているのですが、展開後は設計者が中心になって解析しています。

解析担当者も実現象を知ろうと努力するうちに、設計者とのつながりが深化

ユーザー様によっては、設計者にCAEを展開したくてもモチベーションの維持が難しかったり、そもそもCAEの必要性が認知されていなかったり、情報共有がうまく行かなかったりと、設計部門とCAE推進部門の「心の壁」にお悩みの方もおられるようです。御社はいかがでしょうか?

塩崎

モチベーションは十二分にあると思います。先ほどお話ししたように、お客様に解析結果をお出しする事が多いため、設計者も必要に迫られているというのが理由の1つです。また電磁クラッチ・ブレーキやモータ・発電機などの場合、実験で磁界を可視化することはできないため、シミュレーションに頼るしかないという事情もあります。

とはいえ、一部の専任部隊だけで解析を請け負っていた頃は、コミュニケーションも不足しがちで部門間の壁はあったと思います。当社でも、CAE導入当時は解析専任者は現場を知らないと設計者に陰口を叩かれたものです。これではCAEの結果が設計に役立つことはないと思い、我々も積極的に現場で実機の測定をしたり、検証のための実験装置を作ったり、手を動かし、汗をかくようにしました。それこそ使い方も分からない計測器を買ってきて、四苦八苦しながら試してみたりと。

稲葉

解析だけで終わらずに、できるだけ実験結果と比較しながら進めています。外部のセミナー等に参加すると、解析はしても実現象をよく知らないから、設計者と話が合わない・・・といった声を聞くことがありますが、自分達は比較的、現象を理解しているほうだと思います。

塩崎

そうやって活動の幅を広げることで、設計部門とも関係が深まりました。例えば、モータ開発を担当する部署では、自分達でツールを使って設計検証をしていますが、計算でわからないことは我々が協力します。一方我々はモータのことはわからないので彼らに教えてもらう。そうしていくうちに、お互い解析の知識もモータの知識も深まっていきました。

ただし、設計部門との壁がなくなればなくなるほど、解析担当者としての責任が大きくなります。別部署の人間というよりも設計仲間ですから、必ず最後まで付き合わされる。解を出してそれでおしまいということはなく、問題があれば解決策を求められます。慣れるまでは大変かもしれませんね。

サイバネットのサポートと、セミナーテキストが社内教育に貢献

Ansys製品または当社へのご意見をお聞かせください。

諸星

MechanicalAPDLの自由度が高いところはいいですね。設計者が簡単に操作できるように、バッチ処理を組み込んで展開することもあるので、助かっています。

塩崎

サポートがしっかりしていて良いと思います。マニュアル等のドキュメントも充実していますね。CAD付属のCAEツールもありましたが、サポートが十分でないので使う気になれませんでした。

稲葉

サイバネットのセミナーノートは重宝しています。我々もセミナーノートで操作方法を習得しましたし、講習会の教材作りでも大いに活用させてもらいました。また、Ansysのヘルプは理論的な側面まで解説されていたりして、他社と比較しても充実していると思います。

流体解析や超弾性、複合材料などが今後の課題。

ありがとうございます。今後もみなさまのお役に立てるよう、サービスの充実に努めます。では、今後取り組みたい課題についてお聞かせください。

塩崎

流体解析を強化したいですね。これまでは、大学にお手伝いいただいて流体解析を実施してきましたが、やはり自社でできることは製品開発スピードの面で大きな差があります。ただ、流体解析は解が妥当なのかどうか判断するのが難しく、試行錯誤を繰り返しているところです。

稲葉

現在の講習会は入門編なので、今後はより難易度の高いテーマも扱いたいです。
また、実験と解析結果を検証しつつ、それらをどう設計に活かすかが課題だと思っています。目的はあくまでも設計の質を高めることですから、実験との比較や妥当性の検証が、単なる数値遊びではなく、きちんと設計に活きるように心がけていきたいです。

ところで、複合材料や超弾性材料は、最近Ansysもサイバネットも力を入れていますね。当社も新しい材料はどんどん採用したいと考えており、ぜひ解析のテーマとしたいところです。しかし当社は材料の専門家ではないので、材料データの入手方法や実験結果との比較、また複雑な構成式の理論的背景など、専門知識に不安があります。

塩崎

他社に先駆けて取り組みたい分野ですが、我々単独で技術獲得するのは、残念ながら開発スピードの面で難しいと思います。大学教授や技術士の方など、その分野の専門家に協力いただくのも一案かと思っています。

何をどこまでやるかは難しい問題ですね。同じ悩みをお持ちのユーザー様は少なくないようです。当社は最近、各地でのフォーラムを開催しておりますが、この目的の1つは、専門知識のある大学教授や各県の工業技術センターの方と、企業ユーザー様との出会いの場を作ることです。専門家の方とユーザー様で交流いただくことで新しいビジネスの可能性が広がれば幸いです。今後も力を入れてまいりますのでご期待ください。

シンフォニアテクノロジー株式会社 塩崎様、稲葉様、諸星様には、お忙しいところインタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。
【メカニカルCAE事業部マーケティング部】

「CAEのあるものづくりVol.21 2014」に掲載

シンフォニアテクノロジー(株)様の製品:100年前と現在


こちらから詳細をご覧いただけます。http://www.sinfo-t.jp/hensen.pdf

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