[オムロン株式会社、オムロンスイッチアンドデバイス株式会社]目指すのは開発のフロントローディング化。CAEはそのための有効なツールの1つにすぎません 〜現場主義のCAE推進活動に、ANSYS Workbenchが貢献〜
目次
- 生産・開発・購買・品質・環境・ITそれぞれの観点から、ものづくりのプロセスを改善する横串組織。CAEを開発フロントローディング化ための有効なツールとらえ、全社的に推進中。
- 優れた操作性が評価され、ANSYSを全社的に推進。
- 現場に根ざしたCAE推進活動を全社展開。オムロンの基幹商品の開発を担う、オムロンスイッチアンドデバイスが最初の成功事例に
- CAE推進の成功の秘訣は、現場との密なコミュニケーション
- CAEは開発プロセス全体の中に位置づけられるもので、切り取っては考えられない。CAE単独の効果を議論するより、CAEを含めた新しい開発プロセスが、どれだけビジネスに貢献できたかを考えるほうが適切。
優れた操作性が評価され、ANSYSを全社的に推進。
ANSYSの導入経緯についてお聞かせください。
福万 | : | ANSYSはかねてから導入されていましたが、全社的にANSYSを推進していくことが決まったのは10年ほど前です。当時はまだMechanical APDLの時代でしたが、それでも他のCAEツールと比較すると使いやすく、機能的にも十分だったのでANSYSを採用しました。 |
どのような解析でANSYSをお使いだったのですか?
福万 | : | 非線形解析を多く利用していました。別のツールを利用している部署もありましたが、初心者が使うには敷居が高すぎる印象でした。オムロンには当時からCAE活用を推進したいという思いがありましたので、操作性に優れたANSYSを選びました。 |
現場に根ざしたCAE推進活動を全社展開。オムロンの基幹商品の開発を担う、オムロンスイッチアンドデバイスが最初の成功事例に
岡田様には、先日弊社が開催しました「ANSYSものづくりフォーラム in 大阪」でもご登壇いただきありがとうございました。ご講演のテーマとなった、御社のCAE推進の取り組みについてお聞かせください。
岡田 | : |
![]() 岡田 浩 様 そこで活動の見直しを行い、2011年度からはオムロンの長期ビジョン(Value Generation 2020)のもと、全社戦略テーマとしてCAEの活用・推進に取り組んでいます。 |
福万 | : |
![]() 福万 淳 様 一方、課題の中には事業部共通のものや、将来的に必要になるため、先行して技術開発が必要な課題もあります。それらは全社横断の技術ワーキンググループを設立し、技術ロードマップを作って取り組んでいます。設立から約3年が経ち、徐々にその体制が整いつつあります。 |

図1 CAE活用・推進の基本的考え方
岡田 | : | スイッチはオムロンの基幹製品です。競合他社に対して優位性を維持できるかどうかは極めて重要な問題ですので、オムロンスイッチアンドデバイスのプロジェクトが一番先行して進められました。 |
岸 | : | 当社は2010年に岡山で設立されたのですが、スイッチ事業を行っていた前身の部門にいたころから、設計の手戻りを減らすための活動は続けられていました。CAEで解決したい技術課題もすでに洗い出していたので、GMIとの連携もスムーズに始める事ができました。 |
具体的な活動内容をお聞かせください。
岸 | : | スイッチの用途は幅広く、求められる動作特性も多種多様です。当社は様々な要求を満たすスイッチをタイムリーに市場に供給する必要がありますが、設計で後戻りが生じると計画通りにものづくりができなくなります。 スイッチは金型から設計する必要があるため、仮に金型製作に2週間を要した場合、部品を組み立てて試作、評価を済ませるまでに、ゆうに1か月かかってしまいます。その点、シミュレーションを活用して動作特性を精度よく求めることができれば、設計の手戻りを防止し、計画通りの生産が可能となります。しかし我々設計者には、あるスイッチの動作特性をシミュレーションで評価したいと思っても、アプローチ方法が分からない事がよくあります。 そこでGMIに解析のアプローチ方法を確立し、その方法を手順書にまとめていただきます。我々は事前教育をうけた後で、手順書に沿って解析を進めていきます。このプロセスを、解析テーマ1つにつき半年から1年のスパンで回していきました。 図2はスイッチの動作特性を求めたシミュレーション事例です。これは荷重(F)−ストローク特性(S)と呼ばれるもので、例えばスイッチにどのくらいの荷重をかけるとONになるのか、などの相関を求めています。 |
超弾性解析も設計者で実施されているのですか?
岸 | : | はい。当社では設計者全員がCAEを使えるようになることを目標としていますので、設計者でもできるような簡易な手法を構築していただきました。 |