[豊田工機株式会社]設計業務へのANSYSの活用について

今回インタビューにご協力していただいたユーザーは、豊田工機株式会社の斎藤晴彦様です。豊田工機株式会社は、工作機械や自動車部品、メカトロ製品などの設計製造を行っている会社です。斎藤様は工作機械の設計製造を行っている本社の中で、CAEを専門に行われている部署に在席され、そこで解析専任としてANSYSを使用されています。ANSYSはサイバネットシステムが販売を始めた初期の頃にDEC VAXへ導入され、現在はAlpha UNIXシステム上で使用されています。

(以後、豊田工機株式会社の斎藤様の敬称は略させていただきます。)

まず始めに豊田工機さんはどのような商品の設計製造を行われているのでしょうか?

斎藤:我々豊田工機で作っている商品は、大きく3つに分かれていまして、ここ本社では工作機械、花園、岡崎、田戸岬では自動車部品、東刈谷ではメカトロ製品の設計製造を行っています。工作機械は金型などの加工に使用する切削機や、といしでワークを削って加工する研削盤などがあり、ここ本社で設計を行っています。自動車部品はパワーステアリングなどに使う油圧ポンプや駆動系部品のボールジョイントなどで、メカトロ製品としては、ロボットや工作機械のコントローラなどがあります。

ANSYS導入の経緯をお話ししていただけますか。

斎藤:ANSYS導入前は、自社でプログラムを作成して使用していました。その自社製のプログラムは二次元構造解析専用だったのですが、当初はこのようなプログラムでも何とか利用できていました。しかし、例えば節点の座標系を変換したり、固有値解析を追加しようとすると大変なのです。まだ汎用性が低かったもので、そのような機能を追加するためにはプログラムを書き換える必要がありました。そこで商用の汎用有限要素法プログラムの導入を検討しました。岡崎工場の自動車部品の方は、先に当時最新機能であったオプティマイゼーションの機能を使用した油圧ポンプの解析をベンチマークで行ったことが導入につながりましたが、私どもの方はANSYSが伝熱解析の機能を持っていることが決めてになって、ANSYSを導入しました。導入時に、工作機械内の冷却用オイルの流れをパイプ要素で表現した伝熱解析を行いました。

油を工具やワークにかけて、冷却するような解析ですか。

斎藤:さすがにオイルをかけるというような解析は出来ませんから、冷却オイルの流路を流体パイプ要素で表現して、マシンの温度変化を見るというような解析でした。工作機械は駆動用モータの発熱により温度分布が生じ、それによるそりが精度に影響してしまいます。ただやはり雰囲気による影響もありますので、実測とはなかなか合わなかったですね。

斎藤さんは解析以外に、設計業務等を行われていますか。

斎藤:私は完全に解析専任です。我々の部署には5名ぐらい解析専任者がいます。

斎藤さんたちがよく行う解析は、どのような現象が多いのでしょうか。

斎藤:工作機械ですので、加工精度は重要な問題になります。解析もやはり応力よりも、変位を問題にする解析が多いですね。たとえば、このマシンニングセンターの場合(図1)、機械の寸法を小さくするために切り屑が落ちる穴に位置を、ベースの中央へ変更するようになったのですが(図2)、ベースの剛性が落ちて搭載物の重心移動による変位が大きくならないだろうかなどの解析を行いました。

図1

図2

他には、工具やワークを保持する部品を動かすボールスクリューの本数を変えた場合の変形量の違いについても解析しました。最近のマシンニングセンターは1G 60m/secというスピードがキーワードとなって各社が開発を競っているわけですが、そのようなスピードになると、慣性力が高くなりますので、移動体自体の慣性変形が加工精度に対して問題になります。そのためボールスクリューの本数を増やすと、どの程度変形量が変わるかをANSYSで解析したのです(図3)。


図3

変形量を求めるのが主な目的なのですね。

斎藤:そうです。ただ最近は、先ほどのような慣性力の問題と繰り返し使用することによる疲労破壊の問題が出てきています。そのような要求にあわせて、応力を正確に見るための解析も多くなってきています。応力を正確に見るためにはメッシュに気をつけなければならないので、変位だけの解析よりも難しくなってきています。

疲労破壊はどのような部分で問題となっているのでしょうか。

斎藤:例えば、このモデルのような研削盤のワークを掴むチャックの部分などです(図4)。この部分は何度も掴んだり離したりするものですから、疲労破壊が発生する問題がありました。この部分をANSYSで解析したことがあります。初めは境界条件や荷重条件を完全固定や圧力など単純な物にして解析したのですが(図5)、応力が集中している部分と実際に壊れた部分とが食い違っており、おかしいということになったのです(図6)。そこで接触機能を使用して再度解析を行ってみたら、問題のあった部分の近くに応力集中が発生しました(図7)。

図4

図5

図6

図7

境界条件の決定という作業は、やはり難しいですね。間違った境界条件でも結果が出てくるわけですから。

斎藤:応力を正確に得るための解析の場合、特に境界条件の設定が大事であり難しいことがこの経験でわかりました。変位解だけの場合だと、ある程度単純化が可能でしたから。今ANSYS/LS-DYNAを使用して、高速で動いているユニットがダンパーにぶつかった時の衝撃を解析していますし、結果も出ています。しかし実物での測定が出来ていないので、正しいのかどうか判断がまだ出来ていません。

逆に測定できないところの状態を知ることが出来ると言えますね。

斎藤:それは言えますね。設計者との雑談で、見えないところの結果を見ることが出来るので便利だとよく言われます。我々の商品には量産品が少ないですから、試作試験を何度も行うというわけにはいきません。やはり作る前に結果が予測できるシミュレーションは非常に重宝します。

ところで斎藤さんは長くANSYSを使用していらっしゃいますが、APDLはよく利用されますか。

斎藤:依頼する設計者からいろいろ寸法や条件を変えて試してほしいとの要求がありますので、よく利用します。この解析のように(図8)、ユニットの位置をいろいろ変更して加工時の力による変位の違い等を解析しています。

図8

斎藤さん独自で寸法を変えてみて、こうすべきではないかとの提案はされていますか。

斎藤:提案もしますが、解析モデルの寸法を変えるレベルで、設計者の目標値を満たさないこともあります。問題がある場合は大々的に変更する必要があるケースがほとんどです。

解析専任ということなのですが、APDLなどで標準的なモデルを作成し、設計者に解析を行ってもらという事は行われていますか。

斎藤:我々の場合、新機種は従来機種との形状が全く違う場合があり、パターン化したモデルが作りにくいのです。標準モデルを作成するという作業を行うと、時間がかかってしまって設計者に解析を行ってもらうのは難しいですね。

では、将来もやはり専任者による解析を行うべきだと考えられていますか。

斎藤:複雑なモデルは専任者が行うべきだと思います。複雑なモデルの作成はそれなりにモデル作成の知識や接触等の特殊な操作も必要で、それを設計者が行うには時間がかかってしまいます。ただ私も周辺の部品レベルであれば設計者の人も解析した方がよいと思います。半日程度でできる解析のために、我々に解析依頼を出して、解析を行い、そして報告書を渡すという流れは時間がかかってしまいます。やはり設計者がCADからモデルを作成して解析を行った方がずっと早く結果を得られますから。ただ、そのような環境となるにはまだいくつか問題があります。1つはCADの問題です。やはり設計者が解析を行うには、解析モデルを三次元CADデータから持ってくるようにしないといけません。徐々に導入はしているのですが、まだ皆が三次元CADを使用できる環境にはありません。もう1つは設計者が解析を行う時間があるかどうかですね。それに今までずっと解析を依頼するという形で行ってきましたので、設計者には「解析は依頼する物でその方が早い」という意識があるのではないかと思います。

斎藤さんも三次元CADを使用されていますか。

斎藤:今試しています。徐々に三次元CADへ移行するようになってきていますから、設計者の作成したモデルを私が直接解析に使用できれば非常に便利になります。ただ、私どものモデルの多くはシェル要素で作成されています。モデルは固まりのように見えますが、ほとんどがシェル要素です。現在三次元CADのモデルかシェル要素を作成する事が難しくその部分で若干悩んでいるところです。

ANSYSに対して要望はありますか。

斎藤:大ひずみ問題におけるメッシュ機能がほしいですね。またオイルの流れ解析のために、FLOTRANに自由表面があればと思います。

今後、どのような解析を行っていきたいですか。

斎藤:今検証しているのは、ANSYS/FLOTRANやANSYS/LS-DYNA、DADSです。FLOTRANは軸受けの潤滑問題に適用できないかと考えています。ANSYS/LS-DYNAは先ほど話したように、高速で動くユニットが、何かの弾みでダンパーに突撃した場合の解析を行おうかと思っています。DADSはANSYSで解析した結果を利用した弾性機構解析ですね。

大変ありがとうございました。

豊田工機株式会社の皆様にはお忙しい中インタビューの時間を作っていただき誠にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

「ANSYS Product News1999 Winter」に掲載

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