[大阪大学 藤本研究室]ナノ電子デバイス実装技術の開発と、産学連携推進で日本のものづくりを牽引
─複合領域の連成解析にANSYSを活用─

藤本公三先生

今回のインタビューでは、大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻 藤本教授にお話をお伺いしました。
大阪大学では、「地域に生き世界に伸びる」をモットーに、世界最先端の研究、研究領域の新しい融合、大学院レベルでの教養教育、産学連携・社学連携による積極的な社会貢献活動など、特色豊かな教育・研究活動が展開されています。
工学研究科 マテリアル生産科学専攻では、科学的な基本原理に基づくアプローチにより豊かな未来社会を拓く「ものづくり」に役立つプロセス・システムを構築することをねらいとした教育と研究を行っています。

藤本研究室では、コンピュータや携帯電話等の電子機器製造における電子デバイス実装について、設計からプロセス、評価・検査など多岐に渡る研究を進めていらっしゃいます。企業とも密に連携しながら、微細化・高機能化が進む今日の電子デバイス開発技術を牽引し続けています。

また、2007年には産学連携推進の専門機関である「ものづくりリエゾンオフィス」が設立されました。
その革新的な産学連携推進のあり方に大きな期待が寄せられています。
写真[大阪大学大学院 工学研究科 マテリアル生産科学専攻] :藤本公三教授
(以後、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

研究室の概要をご紹介下さい。

藤本 当研究室は、大阪大学大学院工学研究科のマテリアル生産科学dl.cybernet.専攻生産科学コースに所属しており、電子システムインテグdl.cybernet.レーション研究領域を担当しています。構成人数は、講師1名、dl.cybernet.助教1名、博士後期課程学生3名、博士前期課程学生7名、学部dl.cybernet.4年生4名、そして教授の私で合計17名です。そのうち8名が実dl.cybernet.際にANSYSを使っています。
研究内容は、電子デバイス、マイクロマシン、極微センサなどの微細システム創成に必要な機能設計から、微細加工プロセス、実装プロセス、知的センシング・制御、更には評価・信頼性に至るまで電子システムインテグレーションの研究を行っております。

ANSYSの導入経緯はどのようなものでしたか?

藤本 15年ほど前に、熱画像による電子デバイス実装部の内部検査法の研究や、多層薄膜構造の熱応力解析にANSYSを導入しました。それ以降、各種の研究課題で熱や応力の解析に利用しています。例えば、図の事例は、微小なBGAパッケージ実装基板の熱解析と振動解析を別々に行い、双方の結果から電子デバイス実装部の信頼性を評価しています。

今後やってみたいと思う解析や、取り組むべき課題だと思われている点は何でしょうか?

藤本 電子機器の信頼性は非常に重要な課題であり、使用環境において、様々なストレス(熱ストレス、力学的ストレスなど)が製品に作用します。これらのストレス下において信頼性を保証するには、信頼性設計が重要なのですが、現在の信頼性設計では、応力-ひずみ場での解析が主体となっています。しかし、これらの環境ストレス下では、材料内部における組織変化等による材料の機械的特性の低下が生じます。このため、信頼性設計するには、材料の環境ストレス下での組織変化を予測し、それによる機械的特性の低下を組み込む必要があります。また、加えられるひずみの速度により破壊現象が変化するため、ひずみ速度による解析も必要となります。また、各種ストレスが信頼性に及ぼす影響を学術的に明確にし、各種のストレスが複合的に作用する実環境下での信頼性設計手法の確立を目指して研究を行っていく予定です。

電子デバイス実装技術の開発では、どの程度解析が活用されているのでしょうか?

藤本 電子デバイス実装における研究開発では、対象が各種材料の多層構造体であり、さらにサイズが1mm以下のミクロンオーダーとなるため、温度分布、応力―ひずみ分布などの計測が非常に難しいため、これらの物理量を求めるのにANSYS等の有限要素解析が広く使われています。また、企業における製品開発でも、3D−CADと組合せた解析システムを導入しているところは多いです。しかし、信頼できるデータはやはり実際の実験データであり、解析は、傾向を見たいときや寸法を特定したい場合などに、実験結果に合わせこむような形で補助的に利用されていることが多いです。
その理由の一つは、現状では解析に使える材料データが揃っていないためです。例えば薄膜のような微小材料は計測が非常に難しいので、シミュレーションにデータを入力するのが大変なのです。逆に、材料データが揃うようになれば、解析はさらに増えてくると思います。

ANSYSの機能についてご意見をお聞かせ下さい。

藤本 詳しいチュートリアルがあるので、初心者には練習しやすいと思います。当研究室では、学部・大学院ともにチュートリアルを使って指導していますよ。また、同じモデルで複数場の解析ができますし、連成解析時に解析結果の受け渡しが楽ですね。
電子デバイスはどんどん微小化していくので、今後シミュレーション、特に連成解析の重要性は増していくと思います。
ANSYSの解析だけでなく、他の会社の解析結果まで統合的に扱えるようなプラットフォームが開発されるといいですね。

ものづくりリエゾンオフィスの概要と設立の背景をお聞かせ下さい。

藤本 国立大学の行政法人化をきっかけに、産学連携推進を目指す大阪大学の教員が出資して、「合同会社フロンティア・アライアンス」が2007年5月に設立されました。ものづくりリエゾンオフィスは、フロンティア・アライアンス内の部署の1つです。
設立の目的は2つあり、1つは従来の大学法人の枠組みを超えた形で大学の研究環境を支援すること、そしてもう1つは産学連携の積極的な推進です。
今まで、企業側の研究開発の進め方と、大学の研究の進め方には大きなギャップがありました。本来、工学部はものづくりの研究を行う部門であり、理学部の基礎研究と企業の製品開発とを橋渡しする役割があるのですが、実際は理学部的な研究をする先生が多かったのです。そこで、製品開発に対して、きちんと意味のある研究を産・学で連携しながら進めていこうという気運が生まれました。また、欧米では企業が多額の研究費を大学に投入しており、その点では日本はかなり遅れている、との危機感もありました。
一方の企業側では、従来は製品を期日までに作ることが最優先で、製造の条件や材料選定の妥当性を、学術的に検証する必要はあまりありませんでした。しかし、昨今のように開発期間やコストの削減要求がさらに厳しくなると、正しい材料の選び方や、製造条件の決め方を学術的に研究して、最適解を導き出すことが必要になったのです。これには大学の研究とタイアップするのが良いだろうということで、少しずつ双方の歩み寄りが進みました。

産学連携は、実際にはうまく進めるのは難しいと聞きますが、その理由は何でしょうか?

藤本 ものづくりにおける各種現象は、多入力−多出力の系であり、この多変量場での解の導出、定式化が必要となります。しかし、すべての変量を対象として科学的に解明・定式化するのは難しいため、大学での研究は、特定の変数に着目したモデル化を行って、検討を行っているのが一般的で、その結果を実際のものづくりに直結させるのは難しいものです。産学連携は、双方のニーズとシーズのマッチングを前提とした役割分担を行って、共同研究をアレンジできるコーディネーターがいるとうまく進むのですが、従来の産学連携推進機関は、紹介はしてもコーディネートまでは行ってきませんでした。
そこで、ものづくりリエゾンオフィスが設立されたのです。ものづくりリエゾンオフィスでは、共同研究のコーディネートのほか、企業向けの教育プログラムの実施などの教育事業、受託研究、コンサルティング、技術セミナー等の開催など、多岐に渡る活動をしています。また、Mate2008をはじめとした学会等のイベントの事務局業務の請負なども行っています。

幅広い分野で活動されているのですね。今後の展望についてお聞かせいただけますか。

藤本 ものづくりリエゾンオフィスを作ったもう一つの大きな理由は、知識や経験のある企業OBの方の働く場を提供することです。企業だと55歳を過ぎた頃から次の職場を考え出しますが、それまでに培ってきた専門性を活かした職場を得るのはたいへんなことです。企業と大学の共同研究も、技術を持った人が間に入ると話がスムーズに運びます。今は大学の先生が主なメンバーですが、今後はぜひ企業OBの方にも参加していただきたいですね。
また、個人でコンサルティングをしている企業OBの方には、経理や法務などの業務を代行するサービスも行っているので、活用してもらえればと思います。

企業OBの方にとっても、今までの知識や経験を存分に活かす好機になりそうですね。今後のものづくりリエゾンオフィスの一層のご活躍を楽しみにしております。

<参考>
合同会社フロンティア・アライアンスについて
ものづくりリエゾンオフィスについて

BGAパッケージ実装基板におけるはんだの信頼性評価

はじめに

近年、携帯電話からパソコン、産業機器に至るまでさまざまな電子機器の微細化、高機能化に伴い、その電子基板に実装される部品も微細化、高密度化の傾向にある。そんな中、はんだボールをアレイ状に配列した接合部を持つBGAパッケージ実装基板を対象に解析を行った。特に、熱環境負荷および振動負荷に関する解析を行い、信頼性評価につなげるために、主な破断個所であるはんだボールに生じる応力分布・ひずみ分布を知ることを目的にしている。

(a) リフローソルダリング時の残留応力解析

熱解析、熱弾塑性クリープ解析にて、リフローソルダリング過程をシミュレーションする。ANSYSのBirth/Death機能を利用し、はんだ凝固時にDeath状態であるはんだを復活させることで、パッケージと基板の接合を表現する。冷却後に発生する残留応力および残留ひずみを求解した結果が図3である。残留応力、ひずみ共に最大値を示す位置はコーナーのはんだバンプの基板外側の端部であった。

(b) 素子発熱を考慮した熱サイクル試験における熱応力解析

図4が示す位置での自己発熱を伴う場合のBGA実装基板の熱サイクル試験をシミュレーションする。パッケージ中央部の温度が熱サイクル試験の最高温度である125℃になるように、自己発熱の発熱量を調整する。熱解析温度分布を伝熱解析によって求めたものが図5である。この温度分布を用いて、熱弾塑性クリープ解析を実行する。この時コーナーのはんだバンプに生じる最大の非線形ひずみを、自己発熱を考慮しなかった場合と比較したグラフが図6である。発熱を考慮した場合の方が考慮しない場合よりも最大ひずみの値は大きくなった。更に、環境温度が低いほど発熱量は増大するため温度分布の差が増大し、最大ひずみの値は増大した。

(c) 振動負荷試験における応力解析

BGAパッケージ実装基板に振動負荷を与えた場合の解析を実施する。実験では、基板は4隅の貫通孔に通した治具をワッシャーとボルトナットを用いて振動試験機に固定する(図7)。 モーダル解析により求めた共振周波数を用いて周波数応答解析を行い、基板中央の最大変位を求解し、この最大変位を振幅とする弾塑性解析によって振動負荷試験における塑性ひずみ量を求める(図8, 9)。振動負荷試験における破断までの振動付加回数(破断寿命)と非線形塑性ひずみ範囲の関係を示したものが図10である。この関係により、非線形ひずみ範囲が求まれば、その寿命が予測できる。

(d) 熱サイクル負荷後の振動負荷によるはんだの劣化

熱サイクル後に振動負荷をかける場合のはんだの劣化がマイナー則に従うとすると、熱サイクル試験における寿命をNT 、負荷した加速度における振動試験の寿命をNVとし、実際に負荷する熱サイクル数をnTとした時、振動負荷による余寿命nVは以下の関係を満たす。
エキスパート:楜沢祐司様
この時、事前に負荷した熱サイクル数とその後破断に至るまでに負荷された振動サイクル数の関係は図11における点線で示された直線関係になるはずである。しかし、実際の熱サイクル試験後の振動寿命は、同図のプロットのように直線よりも低下していた。これは、熱サイクル負荷によって材料そのものが劣化し、その物性に変化が生じているために、ひずみ量が解析結果と異なっているためであると推測される。この物性の変化を推測できるようになれば、複合的な負荷に対する寿命予測が可能となる。

大阪大学 藤本先生には、お忙しい中インタビューにご協力いただきまして誠にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。

「CAEのあるものづくり2008,Vol.8」に掲載

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