[関西日本電気株式会社]ANSYSの活用について
─ 通常2〜3年かかる製品開発を、CAEで数ヶ月に短縮

今回のユーザー訪問は、関西日本電気株式会社の松井様・山田様・西尾様です。
関西日本電気株式会社はNECグループの中で、関西方面の電子部品関係の技術拠点であり、主にメモリーなどの半導体製品、ELバックライト、BSチューナやカラーブラウン管などの電子部品や、電子部品を外部環境から保護する気密端子などの設計製造を行われています。 ANSYSはRev5.2から導入されましたが、既に多くの解析事例等をお持ちで、ANSYSコンファレンスでも事例の紹介をいただいております。


山田様

松井様

西尾様

(以後、関西日本電気株式会社の方々の敬称は略させていただきます。)

− 松井さん、山田さんとお会いするのは初めてなのですが、ANSYSの導入時期はいつ頃ですか。

松井:ANSYSの導入は95年頃ですね。初めにANSYS LinearPlus Rev5.2を導入しました。それ以前に、いくつかのシミュレーションプログラムを使用していましたが。

− ANSYSが初めてではないわけですね。松井さん自身は有限要素法解析にはどのように携わってこられたのですか?

松井:私がこの会社に入社した頃は、電子部品の開発を行っていました。大学の頃に、有限要素法を使用したシミュレーションに携わってまして、会社に入ってからも解析の仕事をしたいと言っていたわけなんでが、電子部品の冶具等の解析から徐々に認められるようになってきたんです。

当時いきなり市販のプログラムを導入して解析を行うということは、なかなか社内で通りにくい部分もありますから、初めは簡単な二次元平面の静的構造解析のプログラムを自作して使っていました。94年ぐらいに他社さんの汎用有限要素プログラムを購入して解析を始めました。そのうち設計者レベルで使用したいとの考もあり、UNlXではなWindows NTで動作する解析プログラムが必要だと考えるようになったんです。現在のNIS(日本電気情報システムズ)の松山氏に相談したところ、ANSYSを紹介していただきました。そこで今ここにおられる徳永さんにデモンストレーションをお願いしました。そのときANSYSのモデリング機能が非常に優れていたのが確認できたので、購入を決定したんです。

− その後で、グレードアップされていますね。

松井:導入当時は構造解析で充分だと思っておりまして、設計者は塑性領域の挙動まで考慮に入れて設計しないと思っていました。ただ、実際には非線形性を考慮した解析や伝熱解析の要求がありまして、当時のFull ANSYS、今のANSYS Mechanicalへのグレードアップを行いました。

− どのような解析を主に行われているのですか?

松井:いろいろありますが、例えば気密端子の圧入解析ですね。気密端子は外部環境と遮断するため気密を行わなければならないのですが、その圧着部の圧力が充分保てるかを確認する解析を行ったこともあります。実を言うと三次元動的解析は最後まで収束しなかったんですけどね。非線形性がちょっと厳しすぎたようです。最後には考え方を変えて、軸対称解析で焼きパメの様な形で解析を行いました。これは実験等のデータを集めて製品を開発するのに通常2年から3年かかる物を、数値解析によって数ヶ月まで縮めることが出来ました。

− ANSYSコンファレンスでも、Visual Basicを使用した興味深い事例発表をされていましたね。

松井:あれは、シリコンウエハーの割断の解析ですね。シリコンウエハーの上にマトリクス状に製品が作られるわけなんですが、それをチョコレートブレーク工程と呼ばれる方法で割って分けるのです。これを現在手作業で行うか、もしくはダイシングと言って回転刃でカットしています。これに変わる方法としてこの割断という手法が研究されてます。この手法を簡単に説明しますと、局所的に加熱した周辺部に発生する引張応力を利用して亀裂を故意に進展させる技術です。一般的に亀裂は進展しないように扱うわけなんですが、これは積極的に亀裂を進展させる方法です。

− これは現在既に使われている技術なんですか?

松井:いや、これはこれからの技術ですね。この方法ですと切り屑がでませんし、切り代を狭くできます。これをFA推進のグループが開発を行っているわけなんですが、闇雲に実験するわけにはいきませんので、解析を行う必要が出てきたわけです。

− ∨isualBasicでユーティリティを作成されてますね。

松井:この解析ではいろいろパラメータを変更して解析を複数行う必要があります。設計者にANSYSのパラメータの変更を行わせるのは大変でしたので、変更を簡単に行えるようにVisualBasicでパラメータ変更用のユーティリティを作成しました。西尾が∨isualBasicのことを良く知っています。このユーティリティを使用してパラメータを変更し、解析ボタンをクリックすると、ANSYSのAPDLが自動的に作成され、それがANSYSに読み込まれるようになっています。ANSYSはパックグラウンドで解析が行われ、結果として必要な応力拡大係数K1と最高温度がユーティリティ上に出てきます。

− APDLは使用されているのですね。

松井:APDLは導入当初から検討項目の一つでした。これは非常に良い機能ですね。今はこれがないと仕事にならないですよ。入カデータの確認等は現在全てAPDLで行っています。入カデータの整理を行いながら解析を進めるために、APDLを使用することはうちでは標準作業になってます。
松井:あと、電子部品の落下試験の解析もやったことがあります。これは写真(写真1・2・3)のような気密端子に入った製品の落下時の衝撃応力を解析した結果です。加速度荷重を使用して静的解析もできたと思うのですが加速度の値を取るのが不可能なので実際に落下させるシミュレーションを実施しました。通常この様な解析は陽解法ソフトであるANSYS/LS-DYNAを利用するのだと思うのですが、これはANSYSの陰解法で解いています。

写真-1

写真-2

写真-3

− 電子部品自体の落下試験も行うのですね。携帯電話やノートPCなどの落下試験は良く聞くのですが。

松井:この部品もそれらの製品に使用されるのですが、一番厳しい試験として単体の落下試験を行っています。あと実装されている部品の応力解析ですね、基盤を曲げた時に実装されている部品にどのような応力が発生するかも解析しています。

− かなりの数の解析を行われているのですね。ANSYSに限らず解析シミュレーションの効果はかなりのものがあったようですね。

松井:シミュレーションの効果とか効用という部分はかなりあるのですが、例えば無重力状態での実験のように、ハードウエア的な制約があって出来ない実験や、非常に高温での実験のように簡単には再現出来ない実験を解析では簡単に行うことが出来る。またこの小さな電子部品の落下衝撃解析ですが、この様な小さな部品の内部の応力を実測することは不可能に近いですよね。解析ではこの様な制約を受けることはないわけです。
松井:実験を行う上で変更するパラメータがいくつか有ったとします。例えば寸法AとBとか。そこで寸法Bをい<つか変更したときの結果の変化を知りたい場合、Aの寸法は完全にコントロールされていないと、パラメータBに対する結果の変化が正確に読めないわけなんです。つまり結果に寸法Aのばらつきによるノイズが入り込むわけです。数値解析でも仮定や制限でノイズみたいな物が入り込むわけなんですが、Aという寸法に対しては完全にコントロールする事が出来るわけですよね。
山田:私も磁場解析を行ってたんですが、その点では非常に有効だと思いました。

− FEMではさきほど言った仮定による誤差という話もありますが、FEMだからこそ仮定が出来る訳ですね。

松井:また一般的なことですが、実験の数を確実に減らすことが出来る。解析で結果が悪くなる方向を見定めておいたり確認しておけば、そろらの実験はする必要が無くなる訳ですよね。本来は悪くなる方向での実験も行って、悪くなることを確認するペきなんですが、時間等の問題で通常は行わない。解析では悪くなることを確実に数値で示しておくことが出来ます。さらに、実験を行う場合と解析とでは、全ての結果が出るまでの時間が全く違う訳です。先程の気密端子で、実験に2年3年かかってたものが数ヶ月で出来てしまう。これはお金の問題だけではなくて市場にいかに早く出せるかという問題にまで繋がりますから。

− 設計者向けの解析フログラムとしてDesignSpaceというものがあるのですが、松井さんは、操作手順を簡単にしたこの様なプログラムに関してどのようにお考えですか?

松井:DesignSpaceならば、SolidWorks用の評価版をすでに持ってます。設計者向けの解析プログラムには非常に興味がありますし、社内で啓蒙活動のようなことはやってます。正確に調査したわけではないのですが、製品設計や工程設計の設計者には、潜在的な解析のニーズがかなりあるようです。ただ、まだワープロ感覚で誰にでもすぐというわけにはまだいかないようです。それに、若干設計者側に意識の壁みたいな物があるようですね。有限要素法は難しいとか境界条件の設定がめんどくさいとか。そのような障壁が取り除かないといけない。

− 最後にANSYSへの要望や将来の展望などはありますでしようか?

松井:要望はいろいろありますよ。非線形の収束性をもっと良くしてほしいとか、ブーリアン演算をもっと早くしてほしいとか、モデラーをもっと良くしてほしいとか。3次元CADのSolidWorksを持ってるんですが、やはリANSYSのPREP7は現在の3次元CADに比ペて自由度が少ないですよね。例えば、設計者向けに自由度の大きいモデラーと、ハイエンドユーザ向けにメッシュのコントロール等細かい設定が可能なモデラーと二つ用意しても構わないと思いますけどね。現在ANSYSでモデルを作成する場合は、出来上がるメッシュのことを考えてモデル化していかないと良いメッシュが切れないですよね。メッシュのことを考慮しないでもかまわないモデリングを行いたいですね。

− 日本のユーザの場合、固まりより薄板形状の物を解析するケースが多くて、その点で、やはりソリッドモデルでは切りにくい等の不満もあるようなんですね。

松井:あとメニューの階層が深いのもちょっと問題ですね。例えばポスト処理ではコマンド入力の方が早いですから。
松井:将来は流体も含めた伝熱解析も行いたいと思っています。熱伝達境界条件だけでは不安なところもありますので、FLOTRANを使用して1Cの冷却フィンなどの伝熱解析を行いたいと思っています。あとイントラネットヘの対応ですね。情報によると、ANSYSもVRMLファイルの出力が可能となるようなのですが、モデルの確認や結果の評価をネットスケープ等を使用して誰にでも行えるようにしたいと思っています。

− お忙しいところ大変ありがとうございました。

関西日本電気株式会社の皆様にはお忙しい中インタビューの時間を作っていただき、誠にありがとうございました。この場を借りて、お礼申し上げます。

「ANSYS Product News1997 Autumn」に掲載

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