[東京都立産業技術研究所、日本シグマックス株式会社]関節固定帯開発へのANSYSの活用

今回のユーザインタビューにお答えいただいたお客様は、東京都立産業技術研究所の大久保様・松田様・田中様、と日本シグマックス株式会社の須賀様・中根様です。

東京都立産業技術研究所は、労働経済局の一部門で、東京都内の中小企業を対象として工業試験や研究・技術指導を行っている研究所です。東京都立産業技術研究所はANSYSをRev4.2時代から利用されているお客様です。
また日本シグマックス様は、サポーターや特殊ガードなどの整形外科分野の医療機器を設計および製造を行っている会社で、東京都立産業技術研究所との共同研究としてANSYSを利用されているお客様です。現在では日本シグマックス様もANSYSを導入され、社内でも活用されています。

東京都立産業技術研究所

大久保 様

松田 様

田中 様
シグマックス株式会社
 

須賀 様

中根 様
 

(以後インタビュアーは徳永、お客様の敬称は略させていただきます)

まず、都立産業技術研究所様の事業内容を詳しく教えていただけませんでしょうか。

大久保: 我々は、都内の中小企業を対象とした、技術育成が主な目的なのですが、業務を大きく三つに分けますと、工業試験と研究および指導となります。工業用の試験機は高価なので大企業でないとなかなか簡単に導入できるものではありません。そのような場合に主に研究所に試験を依頼する『依頼試験』や試験機をお貸ししたりする『開放試験室』等が利用出来ます。もちろん研究所ですので、その試験等から発生する研究や自主的に行う経常研究等も行っています。それから都内の中小企業様向けのセミナーなどを開く技術指導や一般企業を集めて交流会などを開いたりしております。CAEセミナーも年1回のペースで開いておりまして、CAEや有限要素法についての概論やANSYSを用いた実習、さらに解析結果と実際の試験との比較等を行っています。2日間コースで定員が20名ですが、いつも満員ですので、この分野はニーズが高いのでしょう。我々は、製品科学技術グループに属しておりまして、以前は機械部と呼んでいたのですが、研究所の中でも最もANSYSを使用している部署になります。

ANSYSはいつ頃から導入されたのでしょうか。

大久保: 古くはRev4.2時代から導入しています。もう10年以上も前の話です。5年程前に行ったコンピュータシステムの変更の時に、ソフトウエアの再選定も行われたのですが、そのときに少し選定に関わっています。Rev4.2の時は、とりあえず入っていた状態で、使用率は低かったですね。前回のシステム変更時に他のソフトウエアも検討したのですが、まずANSYSが一番安かったのが第1理由です。さらに我々は機械系の部門だけでなく、電気や化学系の部門もありますので、そこからは当然、構造解析以外の要求も出て来ました。ANSYSは汎用の有限要素プログラムで、多くの要求を満足するという特徴もありましたので、これも選定理由になりました。

日本シグマックス様はどのような製品を製造されているのでしょうか。

須賀: 私どもは、サポーターや関節固定帯などの整形外科医療器具を設計しています。有名なのは腰痛などの患者さんに使用するウエストのサポーターですね。(写真.1)

写真.1 腰部固定帯

研究所とはどのような御関係だったのでしょうか。

須賀: 日本シグマックスの社員が研究所主催の交流会に参加したのがきっかけです。
大久保: 異業種交流会というグループのことです。都内の中小企業の方を募集いたしまして、毎年1グループを作っていただいています。そのグループの中で技術交流を行って、いろいろな意見の交換やアイデアを出しあう中から新しい商品などの芽を生み出してもらおうという事が目的です。もう既に15グループほど集まっています。各グループに対して初めの1年は東京都から予算も付いていますので研究所の方で音頭を取りますが、その後は自主的に運営していただいています。日本シグマックスさんは確か平成4年のグループだったと思います。
須賀: そのような関係があったのと、私が研究所の見学に参加したときに、CAEシステムとしてANSYSが展示されていたのを見た時に、担当者の大久保さんからそのシステムの説明をうけたのが現在ANSYSを使用しているきっかけです。我々の商品は人の体に装着するものですがら、設計に間違いがあってはなりません。そのためにはこのようなCAEシステムが必要だと感じたわけです。

ANSYS導入以前にはなにか他にCAEソフトウエアを導入されていましたか。

須賀: 3次元CADを導入していました。しかしシミュレーション用のソフトウエアは導入していませんでした。ANSYSが初めてです。

今までANSYSでどのような解析を行われてきましたか。

須賀: 導入してまだ間もないため、まだ2〜3ケースしかありません。例えばマックスベルトという腰をサポートする固定帯があるのですが、この中に入っている樹脂ステーの解析(図.1)を行ったことがあります。現在は研究所の大久保さんと一緒に足関節の固定帯の解析に取り組んでいます。(写真.2)

図.1 樹脂ステーの構造解析

写真.2 足関節固定帯
大久保: 今は日本シグマックスさんと『共同開発研究』ということで、この固定帯の解析を行っているわけですが、このような共同技術は毎年2ケースぐらいのペースで企業さんと一緒に行っています。
須賀: これは、捻挫で痛めた足首の関節を保護する装具です。この装具による足首周りの肉や骨への影響を調べるために解析を行っています。

この解析は大変そうですね。

大久保: この解析の場合、まずモデルを作成する段階で非常に悩みました。どのようにして寸法を測るかを考えなければなりませんでしたから、石膏モデルがありますのでそれを計測する事も考えましたが、内部の骨も測らなければなりませんから、結局CTスキャンを利用しました。
須賀: 知り合いの医師に頼みまして、自分の足の断面をスキャンしてもらったんです。
大久保: 断面にして30枚ほど撮りまして、そこから15枚ほど選んで使用しています。

実際断面図から数値にするのは手作業ですね。

須賀: そうです。代表点を選んで手作業で座標を決めました。代表点を今度はANSYSのキーポイントにしてラインを引いてエリアにするという作業に2ヶ月ほど費やしました。次にモデルの調整です。骨と肉をモデル化しますので、肉の薄いところがあるのですが、その部分の座標値が悪いのか曲面の表現が悪いのか、骨が飛び出してしまう部分がいくつか出てきまして、飛び出さない様にキーポイントの位置を微少にずらす作業にまた約1ヶ月かかりました。(図.2)さらに現在解析中ですが、この足の周りに固定帯をモデリングし、肉と固定帯との間での接触解析を行っています。でもなかなか収束しなくて苦しんでいますが。

図.2

この解析ではどのような評価結果を行うのですか。痛みが発生する部分の予測を行うとか。さらにこのような人体のモデルだと材料データを求める方法があまりないですよね。

須賀: 痛みに関しては、良い評価方法がありませんのでまだ無理だと思います。疲労骨折などの実験データがありますから、それと照らし合わせて評価する方法を考えています。また捻挫のパターンがいくつか有りますので、境界条件としてはその方向にひねるような拘束条件を選んでいます。
大久保: 確かに材料データを求める事は難しいですね。特に肉の部分は場所によって異なりますから。実験して求めようと考えたのですが、まだ良い方法が見つかっていません。骨に関しては過去のデータがありますので、何とかなりますが、今のところは均一に考えています。実際には骨の表層と中ではヤング率が異なりますので、変えないといけないのですが現実問題無理ですね。

研究所では過去にどのような解析をされてきたのでしょうか。

大久保: 例えば加振試験器の基礎になる大きなコンクリートの固まりの固有値解析やフロッピーディスクのヘッド部の固有値解析、あとは大きな送電線を巻き付けるドラムの構造解析を行ったことがあります。それから私の研究で必要だったK値の算出にANSYSを使用したこともあります。現在はメカトロ系の部署にいる松田が、私と同じ部署だった頃に、ANSYSを使用した応力緩和計算システムというものを作成し発表したことがあります。
松田: これは、自作のプログラムとANSYSをリンクさせたシステムです。応力緩和は昔から在る考え方なのですが、例えば部品の一部に応力集中する部分がある場合、その近くにわざと穴を追加することで、部品の外形を変えずに応力集中に緩和する事が出来ます。このシステムは、その追加する穴の径や位置を、最大応力が最小になるように探索するものです。ここでは、自作プログラムからANSYSの入力コマンドを作成し、それをANSYSのバッチ処理して応力値に出力させ、さらに自作プログラムで読み込んで判定するという仕組みです。(図.3)ANSYSコマンドの与えかたによっては、様々な応用も出来ると思います。まだ探索方法など改良すべき課題も残っています。

図.3 (a)応力緩和前

図.3 (a)応力緩和前

最後になりますが、ANSYSへの要望とか将来の展望などがあればお話いただけますか。

須賀: 現在は足首の固定帯の解析だけですが、他に膝や腰などのサポーターもありますので、そちらの方へ適用していきたいと思っています。要望としては、今後もやはり人体のモデル化を行っていくことになるのですが、自由曲面に対する制限をもっと無くしてほしいですね。
大久保: 我々はANSYSのNON-GUIユーザです。GUIは一度使ってみたことがありますが、階層が深すぎて自分がどこにいるか解らなくなってしまうう。だからマウスのオペレーションはほとんど行いません。GUIを利用しないモードでANSYSを使用すると、マルチウインドウの操作で絵が欠けてしまったりといろいろ支障があります。GUIを使用しない昔からのユーザに対してもちゃんとフォローしてほしいですね。また、非常にディスクを消費するのも困りものです。もう一つ付け加えると接触要素の定義でいろいろ複雑な数値を定義しなければならないので困っています。
松田: それから白黒濃淡でのプリンタ出力をもっと簡単にしてほしいですね。

東京都立産業技術研究所と日本シグマックス株式会社のみなさまにはお忙しい中インタビューの時間を作っていただき誠にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

「ANSYS Product News1999 Spring」に掲載

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