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解析事例

株式会社日立製作所

日立グループにおけるCAEツール調達のとりまとめと、シミュレーションに対する展望

松下峰行様松下 峰行 様

日立グループは日立製作所を中心に900社以上・35万人を越える社員で構成されている、国内首位の総合電機メーカーです。次なる時代に挑む開拓者精神を表した「Inspire the Next」というメッセージの元、定評のある研究開発にも惜しみなく力を入れ、製品の高い品質を確保するためにもCAEをはじめとする各種ツールを利用されています。

今回のインタビューでは、日立グループ内で20年来に渡り多数のライセンスを利用いただいているCAEツール「Ansys」を中心に、日立グループでのツール調達の取りまとめや、今後のシミュレーションに対しての展望についてお伺いしました。

写真[株式会社日立製作所] 調達統括本部 ソフト調達部 アライアンスグループ:主任 松下峰行様
(以後、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

松下様のお仕事の内容についてお聞かせください。

松下

調達統括本部は、日立グループで各事業所の資材調達をまとめる部署です。その中の一つにソフト調達部があります。ソフト調達部は、日立グループにおける複数サイトを跨るソフトウェア導入や契約の取りまとめ、あるいは調達に際する法律・税務的な問題などに応対します。アライアンスグループに所属する私の仕事の1つは、異なる各事業所やグループ会社のバラバラに行っているソフトウェア調達に統一性をもたせ、一括して導入を行うことです。ソフトウェアの調達に関して、契約面で特有な注意点が多く、購入後のサポート体制などベンダーとの関係もあるので、現場との密接な連携が重要です。調達部は現場とベンダーの間に立って、グループ内のユーザーとベンダー間に立って調整する部署としてご理解頂ければと思います。

日立グループにおける現在のAnsysの利用状況をお教え下さい。

松下

日立グループでは20年来にわたりAnsysを利用しており、現在は、約30箇所の事業所、約40社の関連会社で多くのライセンスを活用しています。利用分野としましては主に機械系で、解析分野としては構造解析・振動解析等がメインになります。設計者はAnsys DesignSpaceを、解析専任者はAnsys MultiphysicsやMechanicalを使用しています。

昨年からAnsys製品を調達部が、取りまとめられることとなりました。この経緯を教えてください。

松下

1本、2本といった単位の、或いは単一事業所のみのソフトウェア導入の場合は、ソフト調達部は積極的には関与しません。特定のソフトウェアに対して毎年ある一定以上の購入が成されている場合にはじめて活動を開始します。ここ数年複数の事業所やグループ会社にて多数のAnsys製品群を購入していることがわかり、さらに今後も引き続き導入が増えることが予測されました。そこで、調達部としてまとめたほうが良いと判断したわけです。

取りまとめることによってどういったメリットがでましたか?

松下

グループ全体としましては、購入が決まった後の導入がとてもしやすくなりました。これまでは複数の事業所やグループ会社の調達担当が、それぞれ個別に御社(サイバネット)の営業担当者と契約などの交渉を行いました。本社でまとめたため、今後は面倒な個別交渉は必要なく、簡単に購入でき利用できるようになります。これが取りまとめによる弊社のメリットです。

調達部にて取りまとめをされたことで、Ansysの利用は日立グループ内部で促進されることにつながるでしょうか?

松下

調達部で取りまとめをしているソフトウェアに関しては各部門にイントラや掲示板を使って情報を発信しています。全社統一の推奨ソフトウェアを決めている訳ではありませんので拘束力のあるものではありませんが、社内で多数のライセンスが使用されている事や、契約等の面倒な手続きが簡略化された事は認識されていますので、実稼動部門でのツール選定においてAnsysが選択される確立は高まるかもしれません。

日立グループにて開発し利用されているCAEツールがあると伺っています。これについて教えてください。

松下

1982年から当社にて独自に開発をし、社内利用はもちろん社外に対しても販売を行っているHICAD/CADASというプリポスト製品を扱っています。日立グループ内では実際にはAnsysだけでなく、他の同等製品も利用しています。ですがHICAD/CADASとはAnsysが一番相性が良かったこともあり、グループ内でのAnsysの導入が進み、1990年頃からは社内でAnsysとのインターフェイスを開発しました。元々はソルバ開発にも取り組んでいたのですが、今はこの部分の開発は行っていませんので、プリポストとしてHICAD/CADAS、ソルバとしてAnsysを利用しているユーザーが多数いると聞いています。

サイバネットシステムやAnsys, Inc.に期待する事があれば教えてください。

松下

日立グループからのユーザーニーズとしては、Ansysにはソルバ解析プログラムの機能向上にもっと特化してほしいです。Workbenchのようにプリポスト機能に力を入れるのではなくて、解析機能そのものの向上に力を入れていただきたいということです。例えば非線形の解析機能などでは、まだまだ機能向上の余地があるのではないかと思われます。確かにプリポストを含めた使いやすさも設計者には必要ですが、我々日立グループにはHICAD/CADASがあります。ですので日立グループの人間からするとソルバの機能向上がAnsysに対する第一の希望事項になります。
もっと言えば、Workbenchにはソルバ機能向上とソルバの操作性向上を目指してもらい、プリポストは分離して販売できるようにしてもらいたいです。そしてプリポストの部分はHICAD/CADASが受け持つというようにしたいです。それから既に多数のAnsys製品群を日立グループとして導入していますから、サポート体制についても整えていきたいと考えています。このあたりは今後サイバネットさんと協議をさせてください。いずれにせよ、私たちのCAEツール(HICAD/CADAS)とAnsysがどうやってうまく連携して発展していけるかは、今後考えていきたいポイントではあります。

わかりました。ありがとうございます。これまで20年来に渡りAnsysをご利用いただいていて、日立グループ内にはCAEがかなり根付いていると思います。今後CAE、そしてシミュレーション技術はどういう方向に進んで行くと思われますか?

松下

難しい質問ですね。日立グループに限らず、現在のものづくりの現場では設計者が足りていない状況があります。そのような状況では、優秀な解析技術者は次々と設計部門に持って行かれてしまいます。設計開発部門への人材強化がどの企業でも最優先になっているはずです。唯一潤沢に解析担当者を抱えているのは自動車メーカーぐらいでしょう。
また、設計者にはCAEツールベンダーのサポート部門と頻繁なやり取りをしている余裕すらありません。この状況を考えると、解析は設計部門=設計者に行ってもらうしかないと思われますし、設計者が行う解析内容も高度なものである必要が出てきます。
そういった意味では「設計者でも簡単に使える高度なCAEツール」が今後もますます必要であると言えるのではないでしょうか。

株式会社 日立製作所 松下様には、お忙しい中インタビューにご協力いただきまして誠にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。

「CAEのあるものづくり2008,Vol.8」に掲載

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