[アルプス電気株式会社]プリンターへのANSYSの解析適用について

今回インタビューに協力して下さったのは、アルプス電気株式会社 システム機器事業部開発部の泉 博志様・石黒 克之様・澤口 恵様(写真)です。アルプス電気株式会社は、「通信・放送機器」「コンポーネント」「情報機器」「車載電送」の4つの事業を柱とした総合電子部品メーカーで、非常に多岐に渡る製品群で活躍されている会社です。一昨年は記念すべき創立50周年であり、すでに国内だけでなく海外にも多くの拠点を持っておられます。また、最近はパーツだけでなく自社プリンターなどの完成品も製造されています。
今回は、ベルト伝動技術懇談会の企画委員長をされている同事業部の片野 圭二様にインタビューの機会をアレンジしていただきました。

(以後、アルプス電気株式会社の方々の敬称は略させていただきます。)

泉 博志様 石黒 克之様 澤口 恵様
写真左より アルプス電気株式会社 システム機器事業部開発部
泉 博志様・石黒 克之様・澤口 恵様

まず皆様は、アルプス電気の中で実際どのような商品に関わっていらっしゃるかご説明下さいますか。

我々は、OEMあるいは自社ブランド商品である熱転写カラープリンタ(写真)の設計・開発を行っています。これは、他社さんが採用している微少量のカラーインクを紙へ飛ばす方式とは異なりまして、溶融型ヘッドのプリンターです。カラーリボンに付いているインクを非常に微少な発熱ヘッドで溶かし、紙に転写させる方式を採用しています。この方式はインクのにじみなどが機構上出ないため、高画質で鮮明なプリント出力ができるのが特長です。ANSYSは、このプリンターの解析に利用しているのです。

なるほど。では、ANSYSの導入の経緯をお聞かせ下さい。

石黒FEMはANSYS導入以前から利用していました。初期は3次元CADに含まれていた線形のFEMシミュレータを使用していました。しかし我々は、熱転写という方式をとっていますから、紙とリボンをヘッドで押さえるプラテンへの接触の様子が問題となっています。このような接触問題が解けるソフトウェアが必要となり、あらためてFEMを検討すつことになりました。
このプラテンはゴムでできており、この接触の様子は画質の精度に非常に影響する部分なのです。
石黒ゴムとの接触ということで、他社のソフトと共に検討いたしましたが、伝熱解析や電気磁場解析の要求もありましたので、最終的にANSYSに決定しました。

解析に携わっておられる技術の方は何名ほどなのでしょうか?

3次元CADの解析プログラムや他のソフトウェアを含めると、7名です。そのうちANSYSを使用できるエンジニアは我々を含め5名です。

解析専門という形で作業されているのでしょうか?

解析専門とはいかないですね。それぞれの技術者にテーマが与えられていますから、そのテーマの中でANSYSを使用して解析を行っているわけです。でもこの部分については我々も他社さんの運用方法に興味があるところなのですが、実際はどうなのでしょうか?

アルプス電気さんと同じように、ある技術者に開発テーマを与えて、その開発を行うためにFEMを使用している企業もあります。FEMを使用することを前提にテーマを組むようです。またFEMが設計サイクルの中に定着しているところは、やはり開発専任者がいるようです。専任者でなければ出来ない難しい解析は多くありますし、身近に相談できる人がいると助かるようですね。さらに進んだところでは、設計者が試行錯誤し易いように解析責任者がプロトタイプを作成したり、特別なGUIを作成して設計者を積極的にサポートしている例もあります。ところで、何か実際の解析事例を見せていただけますか?

石黒この事例はヘッドとプラテンの三次元接触問題を解いた結果です。(図1)

図1a.ヘッドとプラテン接触解析概念図
図1b.ヘッドとプラテン接触解析圧力分布
この解析でのプラテンに発生している接触圧力の分布は非常に重要です。先程も申したように、この圧力分布はプリントの画質に大きく影響します。
石黒さらに、ヘッドが載るキャリッジとフレームの構造解析も行っています。(図2)
フレームがたわむことで、角度が変わりヘッドの圧接の状態がどの程度変わるかを解析しています。

図2.紙送りを考慮したヘッドと紙の温度伝熱解析

伝熱解析での事例はありますか?

これはヘッド周りの伝熱解析です。(図3)
ヘッド部に非常に微少な電熱体が並んでいるのですが、電熱体の発熱によるヘッドの温度分布も画質に影響します。ヘッドの両端部の温度が下がってしまいますが、発熱部は均一な温度分布にならないと鮮明なプリントができません。

図3.ヘッド周りの伝熱解析
石黒発熱条件を1行印刷毎にヘッドの発熱がON/OFFを繰り返すよう設定しまして、ヘッド部分の温度上昇を時間を追って計算しています。(図4)
実際には何マイクロ秒という単位で発熱を行わせているのですが、この解析ではそこまで細かな設定はしておりません。

図4.ヘッド温度伝熱解析 温度−時間グラフ

これはヘッド周りだけですね。紙やプラテン等を考慮した解析はあるのですか?

用紙面上にヘッドを走らせた過渡伝熱解析も行っています。(図5)

図5.紙送りを考慮したヘッドと紙の温度伝熱解析
石黒紙の送りを以前のANSYS Conferenceで発表があった熱移動の定義を利用して行っています。またインクリボン各層の温度が印刷に大きく影響するので、上の表層の温度が問題となりますから、これは紙だけでなく非常に薄いリボンなども考慮しています。
この様に非常に薄い紙などの温度分布が絵として出せたのはこれがはじめてです。測定は実際には無理ですから。どの程度の温度になるかは印字の状態から予測するしかありませんでした。
石黒この様に目に見えるのは便利ですね。さらに基本モデルが出来れば後はパラメータ変更して試行錯誤できますから。

これは2次元ですが、将来的に3次元でも考えておられますか。

2次元では、すべての発熱体が同時ON状態しか解析できないので、発熱体の相互関係を調べるには3次元的な解析が必要になるでしょう。

澤口さんはどのような形で関わっていらっしゃるのでしょうか。

澤口私はまだ初心者で、ANSYSを勉強中です。私自身元々ソフト開発等の仕事をしていたのですが、私のような者がANSYSの様な機械設計のための解析ソフトを初めから勉強して、どの程度の期間で解析が可能となるかの私自身のトライアルを行っています。将来的には設計者から解析の依頼を受け、仕様通りの解析を行って、結果を提示するような仕事が出来るようになり、そのような仕事を定着させることが目標です。

最後になりますがANSYSに関しての要望はございますか?

石黒いろいろあります。他社の3次元CADを使用して解析も行っているのですが、そちらのメッシュジェネレータと比べると、デフォルトの設定でのメッシュはANSYSの方が忠実すぎて困るときがあります。つまり、小さな丸があったり円弧があったらそれを曲線としてメッシュしてしまう。小さな曲線は忠実にメッシュを切らなくてもかまわないと思うことがよくあります。要素の数が増えてしまうものですから。全体の大きさから判断して小さな丸は極端に四角や三角まで荒くてもかまわないし、小さなアールは角でもかまわないでしから、もう少し“気の利いた”メッシュを切ってほしい。ANSYSにはスマートサイズという機能がありますが、なにもしなくても適度に省略してくれるメッシュが切れてほしいと思います。CADからのIGES変換ももっと自由度の高いモデルとして変換してほしいですね。つまりIGESで持ってくると、その後ANSYS上でモデル変更が難しい場合がありますよね。

そうですね、DefaultsとAltemativeオプションの違いからもありますが、ブーリアン演算などの操作が思い通りに出来なかったり、変換後の操作が可能ですが面がつながっていない状態で読み込まれるとか。

石黒その他は細かいことですが、要素の材料番号・リアルコンスタンと・要素番号がモデル作成中に混乱することがあります。何か識別が簡単なツールがあればよいのですが。

新しいバージョン5.6からは、画面に現在どのような属性がアクティブなのかを表示する機能が追加されてきます。それを使用すれば少しは手助けになるかもしれません。5.6に期待していて下さい。

アルプス電気株式会社の皆さまには、お忙しい中インタビューの時間を作って下さいまして誠にありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

「ANSYS Product News 2000 Winter」に掲載

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