テニスラケットの衝撃緩和

Wilson/3M

FEAがテニス・ラケットから唸りを除去

Wilson Sporting Goods社のPo-Jen Cheng氏は、有限要素法解析プログラムANSYSを用いて、テニス肘に悩むプレーヤーに優しいラケットの開発に成功しました。
テニス・ボールがラケットに当たると、衝撃によって振動が起こります。そのためプレーヤーは、集中力を失い、痛みを感じることさえあります。振動の少ないラケットを作るために、Wilson Sporting Goods社は、フレームに拘束層制振構造を追加しました。制振構造は、ボールの衝撃によって発生する歪(ひずみ)を散逸させるために、フレーム内壁に3M社の粘弾性制振ポリマーを使用しています。

このラケットの設計上の課題は、重量の増加をできるだけ抑えながら制振性を高めることでした。エンジニアたちは、FEA(有限要素解析)を用いて材料の厚さと配置を最適化することにより、これを達成しました。3M社のアドバンストデザインエンジニアのMichael Harms氏によれば、「当プロジェクトにとってFEAの使用は極めて重要でした。これまでのような試作実験だけに頼るより、ラケットの制振に関してより多くの情報が得られたからです。

またHarms氏は次のように述べています。「弊社は3Mの粘弾性材料を含むラケットの試作品を作りましたが、実験という方法から学べることには限度がありました。解析を用いることにより、ラケットのパフォーマンスをより効果的にシミュレートでき、最適化したい変数を分離することができました。」

3Mの役割

3M社の60,000品目に及ぶ製品の1つである粘弾性材料は、電子機器、航空宇宙、および構造の分野で振動減衰のために使用されています。たとえば、ニューヨークのワールド・トレード・センターでは、風の振動と運動を散逸させるために使用されています。また、地震の多発する地域にある建物にも使用されています。

制振材の供給に加え、3M社は顧客が製品を最大限に活用できるように、技術的なアドバイスを提供することもよくあります。Wilson Sporting Goods社もまた、テニス・ラケットへのこの材料の使用に関して3M社に相談しました。3M社のリサーチスペシャリストであるMing Lai-Lai氏は、Wilson社が材料の制振性を最大化できるように助力しました。

そのためには、設計に修正を加えるべきファクターがいくつか考えられました。材料の厚さおよびラケットへの取付け位置(フレーム断面内の位置およびラケット表面や取っ手に沿った位置)もそうです。「材料はラケットのフレーム全体に連続的に使用すべきだろうか、またはフレームをセグメントに分けて最も効果的な部分にのみ使用すべきだろうか」とHarms氏は考えました。「これらは、解析を採用することで決定できました。」

試作品によって幾つかの制限が加えられたため、このプロジェクトでは、解析は試作実験を補完するものでした。粘弾性材料はラケットの内部に用いられたので、成型過程で材料になにが起こったか、初めは分かりませんでした。

試作実験のもうひとつの欠点は、単一のファクターだけに着目し、その特性を変化させて再度実験を行うのが不可能なことでした。Harms氏は次のように説明しています。「成型中にすべての変数を制御することはできませんでした。1つの変数に対して意図的に変更を加えると、別の変数も変化してしまう場合がありました。試作品では不要なファクターを完全に排除するのは不可能ですが、解析ツールでは、変数を一度に1つずつ分離して変化させることが可能です。」

進行中の最適化

最適化プロセスにおける最初のステップは、ラケット(Wilson Staff 5.7 Liteの特大型)のソリッド・モデルの作成でした。Harms氏は、3次元CADのPro/ENGINEERを用いて、フレーム、粘弾性材料、および拘束層からなるアセンブリーとして、ラケットをモデル化しました。次に、Pro/MESHを用いて、ソリッド・モデルを有限要素モデルに変換しました。ラケットと拘束層のためにシェル要素を選択し、粘弾性材料のためにソリッド要素を選択しました。モデルは約5,000の節点と13,000の要素を含んでいました。

次に、このモデルを解析プログラムANSYSに転送して解析しました。3M社にも幾つかのFEAシステムがありましたが、この解析では歪(ひずみ)エネルギーのソリューション機能を持つANSYSを選択しました。「ANSYSは、サポートしている解析機能の幅が広く、広範な物理現象を扱えるので、ANSYSは弊社で最もよく使うFEAシステムです」とHarms氏は述べています。

様々な材料構成における制動比を求めるためのモーダル解析を実行する前に、ラケットの固有振動数に対する糸の張力の効果を明確にする必要がありました。「テニス・ラケットに糸を張ると、構造内に圧縮応力が生じ、剛性と固有振動数が低下します」とHarms氏は説明します。

解析用モデル定義では、ラケット・フレームの有限要素モデルに対して、各糸の位置で糸の張力60 lbfをかけました。糸を張ることによって生ずる応力の静的応力解を求めました。これらの応力は、糸を張ったラケットの固有振動数を求める際に、応力も考慮したモーダル解析の入力として使用しました。ANSYSによる解析結果では、糸の張力がラケットの固有振動数に影響することが分かりました。粘弾性材料の制振能力は振動数に依存するため、これは問題を解く重要なカギの1つとなります。

次に、ラケット内の粘弾性材料に関して様々な厚さと構成の効果を調査するために、一連のモーダル解析を実行しました。制動比を求めるために用いた技法は、モーダルひずみエネルギー法です。ほとんどの解析計算はConvexスーパーコンピューターで行われ、それぞれ1時間かかりました。結果は様々な設計反復における制動比を示しました。最も効果的な制動比および粘弾性材料の最良の配置が得られるまで、多数の解析を行いました。

「FEAは当プロジェクトにおいて試作実験を減らすための良い方法でした」とHarms氏は述べます。「しかし、本当に良いところは、ラケットの制動比に対する個々の変数の効果を研究できたことです。これにより、制振システムが一層よく理解でき、設計を最適化することができました。」

解析種類


関連キーワード

CONTACT US

ご購入・レンタル価格のお見積り、業務委託についてはこちら。

お問い合わせ

ページトップへ