土木用機械のコンポーネント設計

Volvo Wheel Loaders

Volvo Wheel Loaders社、SGIおよびANSYSを用いてコンポーネントを溶接物から鋳造物に変更

製品の改善、競争力増強、およびコスト削減に余念がないVolvo社の建設機械グループは、ホイール・ローダーのコンポーネントの再設計に取り組んでいます。再設計の主要部分は、溶接鋼アセンブリーから鋳鋼品へのリエンジニアリングです。

ホイール・ローダーは、基本的な土工機械であり、後部にディーゼル・エンジン、前部のリフト・アームにバケット、および中央にキャブが付いており、4つの大きなゴム・タイヤ付き車輪を持っています。ステアリング用に、フレームが関節式になっています。

土木建築機械産業は、いくつかの世界的な製造業者から成り立っています。事業は多くの資本金を要し、競争が激しく、当て推量や経験則の入り込む余地はありません。大きな設計変更はすべて、コストおよびパフォーマンスに関して徹底的に分析されます。建設機械の場合、パフォーマンスというのは、厳しい条件および度重なる酷使のもとでの妥協を許さない耐久性を意味します。

解析作業

スウェーデンのEskilstunaに本部を置くVolvo Wheel Loaders (WLO) 社の主要な設計解析および最適化作業は、つり上げフレーム構造、リンク、クロス・チューブ、リフト・アーム(つり腕)、バケット、リヤ・フレーム、フロント・フレーム、取付ブラケット、および標準コンポーネント(たとえば、油圧シリンダー)の寸法決定です。Eskilstunaの構造技師兼有限要素アナリストStefan Forsberg氏は次のように語ります。「静的モードおよび疲労モードにおける応力を理解し構造を評価するために、私たちは静的線形・非線形解析用にANSYSを使っています。」(ANSYS社;米国ペンシルベニア州Canonsburg)

WLO社は、6シートのANSYS、つまりANSYS/Mechanical(構造解析と伝熱解析のモジュール)とANSYS/Structural(構造解析のモジュール)を組み合わせて使用しています。ほとんどの計算は線形静的解析ですが、接触要素解析も徐々に導入しています。またこれらの非線形計算に加え、モーダル解析および動解析もある程度行っています。

WLO社の再設計における主な焦点は、バケットつり上げ構造における重要コンポーネント、つまりクロス・チューブです。クロス・チューブは、ローダー・バケットのすぐ後ろのリフト・アーム間に取り付けられており、バケットを上下に傾けるための複雑な機構とリンケージを支えています。2つの大きなブラケットがクロス・チューブから後方に突き出し、垂直に取り付けられたレバー式リンクを支えています。リンクの一端には傾斜用油圧シリンダーが取り付けられ、他端にはバケット後部へのコネクティングロッドが取り付けられています。クロス・チューブから前方に突き出しているブラケットには、傾斜機構の残りの部分のための取付具が付いています。

クロス・チューブの再設計を行った主な理由は、ドライバーの視界を改善するためです。また、クロス・チューブの溶接部に生ずることがある少量の疲労亀裂を排除する必要もありました。「この亀裂はある一定の用途に際して生じるごく希な現象でしたが、それでもやはり直す必要がありました。」とForsberg氏は述べます。

「新しいクロス・チューブは、溶接物として作るには形状が複雑すぎました」と同氏は続けます。「しかし、解析するのは簡単でした。鋳造物のほうがずっと複雑であるとはいえ、モデリング、計算、解析、および再設計の時間は従来の50%にまで短縮できました。」

このように大幅な時間短縮に成功した最大の理由は、ANSYSとWLO社が採用していたCADシステムとの新しく密接なインターフェースのおかげです。WLO社の用いていたのは、Unigraphics Solutions社(旧Intergraph社)のSolid Edgeです。Forsberg氏は次のように述べています。「溶接物を扱っていた当時のANSYSプリプロセッサーによるモデリングではなく、モデルのボリュームごとをSolid Edgeから直接インポートできました。ANSYSのプリプロセッサーで形状作成するよりずっと速く作業できました。以前時間をかけていた形状の再生成やモデルの構築が節約されたので、解析にずっと多くの時間を費やすことができるよになりました。」さらに劇的に時間短縮が実現できたのは、Forsberg氏のチームがホイール・ローダーのリヤ・フレームを解析した際です。「モデリング、計算、解析、および再設計の時間は1/5に短縮しました。」とForsberg氏は語ります。

時間の節約は別として、ANSYSを用いることの主要な利点は、設計工程の初期に強度を検証できることです。Forsberg said氏は次のように述べています。「重要なことは、強度試験で試作品を壊す心配がなくなった点です。私はWLO社に2年半いますが、静的試験や実機試験に不合格となったことは一度もありません。解析を行っていたので、今回もそうだという確信がありました。」

解析を徹底的に行っているとはいえ、やはりクロス・チューブの試作品を作る必要はあるでしょう。強度解析、計算の検証、および他のパーツ(油圧装置、動力伝達装置、およびエンジン)の機能試験のために、試作品は依然として必要です。「解析結果と実測値の間には常に誤差が生じます。」とForsberg氏は指摘します。「予測しなかった力が発生することもあります。境界条件は計算したものとは異なります。モデルで考慮しなかった荷重や力が構造内の他のパーツによって誘導されるからです。」

クロス・チューブのモデルは、かなり大きいものでした。形状はSolid Edgeを使用して非常に直接的に作成しました。ANSYSの自動メッシュ生成機能により、モデルは約110,000の節点と約60,000の要素を持つ有限要素モデルとなりました。モデルに使用された要素は、20節点のソリッド要素 (Solid 95)、10節点四面体要素 (Solid 92)、およびビーム要素(beam4)が含まれおり、初めのモデルは約322,000の自由度を持っていました。このモデルに対しPCGソルバーで数百反復の繰り返し計算を実行しました。また、クロス・チューブについてはサブモデリングは行いませんでした。

WLO社は鋳造物と溶接物のいずれにも、線形静的解析用にANSYS対話式PCGソルバーを使用しました。しかし、溶接物には自動メッシュ生成は使用しませんでした。「溶接物の場合には、溶接継手の整合性および全体的な構造の強度に焦点を合わせる必要があります。したがって、メッシュ要素のサイズと配置には十分に注意しなければなりません。」とForsberg氏は指摘します。オートメッシャーは一般に必要とする以上の要素を生成し、したがってモデルが大きくなりすぎてしまうということも、Forsberg氏は付け加えました。

同氏は次のようにまとめています。「ANSYSを使えば、試作品および、そのリンクに対する作業はずっと減ります。Solid Edgeでは、形状をANSYSにエクスポートしてから、ANSYSのオートメッシャーを使うことができます。これにより、形状の微少変更を非常に迅速に行うことができ、再設計の反復には非常に役立ちます。」解析の結果、設計変更を5回行いました。クロス・チューブを強化し、リフト・アーム構造に正しく適合することを確認し、鋳物工場の一部の生産要件を整えました。

1994年にANSYSを導入する前に、WLO社は鋳造物に対してAriesとI/FEMを試しましたが、満足の行く結果は得られませんでした。その前には、業界のハンドブック、自社の膨大な実地経験、概算値、および社内で開発したプログラムに頼っていました。どんな資料でも同じですが、解釈がきわめて重要でした。試行錯誤により工学的相関関係を見出し、多くの試作実験を用いて、ゆっくりと費用をかけて、それを確認しました。

ハードウェアとソフトウェア

溶接構造から鋳造物の多用への移行に伴い、設計解析に複雑さという新しい要素が導入され、ハードウェア・プラットフォームとCADシステムの重要性が高まりました。「強力なコンピューターをANSYSおよび堅牢なCADパッケージと組み合わせることにより、品質、徹底性、および精度を非常に急速に改善でき、多様な計算をこなすことができるようになりました」とForsberg氏は述べます。

WLO社が接触境界解析の使用を増やせば、コンピューターとソフトウェアのパワーは、さらに一層重要になるでしょう。これらの解析は非線形なので、さらにずっと多くの計算が必要となります。そこで、1998年初めに同社は、Silicon Graphics社 (SGI)製のOrigin 2000コンピューター・サーバーを購入しました。Origin 2000は4台のCPU、2GBのRAM、および140GBのディスク・ドライブを搭載しています。WLO社は新しいサーバーが、計算を伴う作業をスピードアップしてくれることを期待しています。同社の所有する他の3台のSGI機は、SGI製R10000 CPUを搭載した1台のIndigo2およびR4400 CPUを搭載した2台のIndigo2です。オペレーティング・システムは、SGIのIRIX (UNIX) バージョン6.2および6.4です。

WLO社は自社のコンピューター環境に関する次の3つの主要な要件を明確にしています。

  • 解析すべき要素をより多く作成するANSYS自動メッシュ生成機能を使用する。これはより大きなモデルを作成するので、RAMおよびディスク・スペースも多く必要となる。
  • 非線形解析の使用を増やす。これは、より多くのCPUサイクルを必要とする。
  • スーパー・エレメントを使用する。これも、より大きなモデルを作成し、より多くのRAMおよびディスク・スペースを必要とする。

また、Solid EdgeはWindows NTオペレーティング・システムでしか動作しませんが、これはWLO社にとって問題ではありません。Forsberg氏は次のようにコメントしています。「応力アナリストとして、私は強力なSGIサーバーで計算したいと思います。しかし、Solid EdgeのSATフォーマットは、NTでもUNIXでも同じです。したがって、そのことは問題にはなりません。」ファイル転送は、ftp(ファイル転送プロトコル)で行われるか、または交換イーサネットLAN上で動作するNFS(ネットワーク・ファイル・システム)バージョン3によって行われます。

Solid Edgeのジオメトリーは、ジオメトリー・カーネル、具体的にはSpatial Technology社のACISを用いているため、設計解析および最適化への使用に特に良く適しています。ANSYSはこのジオメトリーを容易にインポートし、それに続く有限要素メッシュ生成の多くを自動的に行います。(当時Solid EdgeのカーネルはACISでしたが、現在ではParasolidが採用されています。Parasolidの場合でも同様の環境でANSYSを使用することが可能です。)

WLO社のアナリストたちにとって、これは非常に重要なことです。「私たちのねらいは、時間をかけた形状作成から、もっと高度な解析に、計算の重点を移すことです」とForsberg氏は説明します。「私たちはすでにSolid EdgeのSATジオメトリー・ファイルの使用と評価を始めています。ANSYSはSATファイルを読み込み、構造のメッシュをじかに自動生成し、計算を行うことができます。」

自動メッシュ生成、非線形解析、およびスーパー・エレメントは、Forsberg氏の解析目標に密接に結び付いています。同氏は次のように述べています。「私の目標は、解析の実行を増やし形状作成を減らすこと、もっと高度な計算を行うこと、および設計のごく早期に計算を実施することです。これによって得られる利点は、最初から正しく設計でき、試作実験にまつわる問題を回避できることです。」

Volvoについて

Volvo Wheel Loaders (WLO) 社は、スウェーデンのEskilstunaに本部を置き、製品開発部の150人のエンジニアを含めて1,100人の従業員を擁しています。製造施設は、スウェーデンのEskilstunaとArvika、米国ノース・カロライナ州のAsheville、およびブラジルのPederneirasにあります。AshevilleとPederneirasの工場では、Volvo連節ハウラー(貨物自動車)も製造しています。

WLO社はVolvo建設機械グループ (VCE) の一員であり、1995以降Volvo社内の事業部門となっており、ベルギーのブリュッセルに本部を置いています。全世界における1997の売上高は22億米ドルと報告されています。従業員数は約8,600人です。

VCEは、Volvoホイール・ローダー以外にも、次のように様々な製品を扱っています。Zettelmeyerミニ・ホイール・ローダー(ドイツ)、Pel-Jobミニ掘削機およびMecalac多目的機械(フランス)、Volvo掘削機およびVolvo連節ハウラー(スウェーデン)、ならびにEuclid硬式ハウラーおよびChampion道路建設機械(カナダ)。

1998の初めに、VCEは韓国のSamsung Heavy Industries社から建設機械事業部およびChang Won工場の過半数の業務管理を取得することで、両者間で暫定的合意に達したことを発表しました。

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