熱可塑性燃料タンクの構造性能評価

Mannesmann VDO AG,

熱可塑性燃料タンクの構造性能を予測

コストパフォーマンスの向上とともに、さらなる快適さと安全性が求められる時代にあっては、自動車の設計はますます複雑になってきています。この難題の明快な例が、厳しい安全性とわずらわしいパッケージングが求められるコンポーネントである燃料タンクです。車体内のコンポーネントのパッケージングが最適化されるに伴い、利用可能なスペースを最大限に活用するために、燃料タンクの形状がますます複雑になります。

燃料タンクは厳しい製品安全法規もクリアしなければなりません。事故発生時でも、燃料タンク・システムが密閉を保ち、いかなる爆発や自己持続火災も防止しなければなりません。自動車用プラスチック燃料タンクの適用法(たとえば、ECE R 34.01)は、システムの耐久性と耐衝撃性を立証することを製造業者に義務付けています。立証できない場合にもし事故が起きれば、マスコミに広く取り上げられ打撃的で高くつく人身傷害訴訟となり兼ねません。

ここで、これまで採用されていた鋼の代わりに熱可塑性材料を用いれば、より安価で、軽量で、強く、安全で、複雑な形状の燃料タンクを製造することができるため、上記の要求に応えられる燃料タンクを製造することが可能となります。今までの出版物では、鋼製燃料タンクに比べた場合の熱可塑性燃料タンクの高い安全性が強調されてきました。しかし、安全性能を設計に組み込む方法については、詳述しませんでした。製品開発におけるリスクを低下させ、十分な安全性を確保するには、有限要素解析 (FEA) による製品パフォーマンス・シミュレーションが不可欠です。

自動車産業では、コンポーネント自体よりもシステム全体の供給を重視する傾向があります。その場合、供給業者は納品したシステムを構築する技術に責任が生じます。以前では、自動車用熱可塑性燃料タンクのほとんどの供給業者は、法的要求との合致を保証するために、試作実験の繰り返し手順を採用していました。ラピッド・プロトタイピングは試作実験の開発をスピードアップすることができますが、場合によってはラピッド・プロトタイピングが単に粗悪な製品を速く作るという結果に終わっていた場合もあります。その理由は、試験に不合格だった場合、現象は明らな場合が多くても原因が分からないことです。

詳細なFEAを用いれば、このような不合格の原因を特定できますが、製品開発周期のこの段階においては、すでに時間とコストの面で相当な不利益をこうむっています。製造業者の唯一の選択肢は、応急処置であると思われます。したがって、製造に移る前に製品のパフォーマンスを予測できることが絶対に必要です。そのためには、FEAを仮想ラピッド・プロトタイピング・システムとして使用する方法が考えられ、それを通して構造の機械的性能について、物理試験の場合より多くの情報を決定することができます。しかし、プラスチックの機械的特性は鋼の場合より複雑であり、荷重速度および温度によってかなり変化します。

熱可塑性材料は荷重速度に依存するため、一定のヤング率や降伏点を持ちません。したがって、すべての設計解析には、荷重速度の効果を含める必要があります。熱可塑性材料の剛性は金属の場合よりずっと低いので、熱可塑性材料を効果的に構造的用途に用いるには、金属の場合より高いひずみ状態まで負荷をかける必要があります。

高いひずみ状態では、熱可塑性材料の応力‐ひずみ挙動は明確に非線形性を持ち、熱可塑性コンポーネントは膜剛性の硬化および大きな変位を示します。したがって、熱可塑性コンポーネントのパフォーマンスを予測するには、これらの非線形効果を設計解析に含めることが絶対に必要です。

熱可塑性燃料タンクの挙動を正しくモデル化するには、応力状態を正しく考慮することが重要です。ストレススティフニング(幾何剛性)は、ある種の荷重に対して通常まったく抵抗を持たない構造に、かなりの剛性を与えることができます。たとえば、ゆるいケーブルと異なり、伸ばしたケーブルは垂直荷重に抵抗できます。熱可塑性燃料タンクの機械的性能を予測するに場合には、プレストレス(初期応力)効果を含めることが不可欠です。ANSYSの非線形静解析機能は、熱可塑性燃料タンクの大たわみ非線形クリープを予測することができます。この応力状態は、モーダル解析、調和解析、および過渡動的解析のような他の解析のために、プレストレス・モデルの状態として使用することができます。クリープ解析にとって最も大きな問題の1つは、適当なクリープ・データを入手し、それを有限要素システムで使用可能なフォーマットに変換することです。クリープする燃料タンクのスナップショットを得るには、等時性クリープ・データ(定温および定荷重における有効応力-ひずみ曲線)を効果的に使用することができます。

総合燃料運搬システムの供給業者であるMannesmann VDO社は、自社の熱可塑性燃料タンク・システムの機械的性能を予測するために、有限要素法解析プログラムANSYSを使用しています。利用するシミュレーションは次のとおりです。

  • 高温および高内部圧力における変形と耐久性を予測するための大たわみ静解析。
  • 動的連成問題を回避するための予荷重付き線形動的解析。
  • 局部的なホット・スポット問題を防止するための熱/構造の連成解析 (ANSYS/Multiphysics) 。
  • 安全性試験法規との製品の合致を保証するための非線形過渡動的解析 (ANSYS/LS-DYNA)。

タンクの全般的な変形の予測に加え、解析はタンクのどこが最も強い応力を受けるかについて貴重な洞察を与えてくれました。タンクのアセンブリを自動車に組み付ける際に、固定バンドの締付けにより、タンクの底面が側壁と合流する位置に大きな界面荷重を生じました。これは、過度の応力集中を避ける上で、タンク支持体の剛性を最適化することの重要性を明示しています。

燃料タンクの製造前にタンクの耐衝撃性能を予測すれば、戦略的および経済的に有利です。これは、適当なコンピューター・ハードウェアとソフトウェアがなかったため、以前は行われませんでしたが、現在では可能です。タンクの機械的性能を予測する能力は非常に重要です。最適化技法を用いれば、この種の構造の機械的性能を最適化するための基礎として、これらの非線形有限要素シミュレーションを使用することができます。

結論をいえば、非線形有限要素解析は不可欠であり、この種のコンポーネントおよびシステムの機械的性能について相当な洞察を可能にし、それにより試作実験において高くつく不合格を出す確率を低下させます。

FEAを "仮想ラピッド・プロトタイピング・システム" として用いることにより、自信を持って設計概念から直接ハード・ツールに移行することができ(場合によっては多少の修正が必要)、ブロー成形ツールの試作を少なくとも1つ節約することができます。この節約額だけでもFEAシステムを正統化するのに十分です。

VDO社のCoulton氏はMultiphysics(複合物理学)にFEAの将来性を予見

FEAがエンジニアリングとして確立されるに伴い、VDOのような会社は、社内でFEA能力を持つことの付加価値面をますます重視するようになっています。「今日の解析事業においては、次のように自問する必要があります - PowerPCを持ち経費のかからない在宅者にはできないような何が社内で可能だろうか。」Mannesmann VDO社燃料システム事業部の工学アナリストJerome Coulton博士は次のように述べます。「私たちは材料間で複雑な相互作用を持つ非線形問題および熱/構造解析のような複合型の問題に取り組みたいと思います。」この分野の技術解析は、Multiphysics(マルチフィジックス)と呼ばれます。

Coulton博士はマルチフィジックスをFEAテクノロジーの最先端であると考え、知識ベース工学 (KBE) への統合を期待しています。「KBE型パラメトリック・アプリケーションの良い例は、Pro/ENGINEER内で稼動する解析ツールANSYS/ProFEAです」と博士は述べます。「アナリストはPro/ENGINEERのパラメトリック・エンジンを用いてANSYSの解析モデルを駆動することができます。これは、ANSYS解析の結果に基づいてパラメトリックな幾何学的モデルを自動的に再生成できることを意味します」と博士は説明します。

Coulton博士はFEAを社内で行うことに固執しています。それで得られる報酬は、エンジニアリング、解析、および他のあらゆる業務の間で並行性を維持できることです。博士は次のように述べています。「解析を外注すると請負業務の利益が減り、さらに並行性を失います。並行性を維持すれば、多少の修正が必要かもしれませんが、設計概念から直接ハード・ツールに移行することができ、ソフト・ツールのプロトタイプを少なくとも1つ節約することができます。」

「しかし、FEAは製品開発周期における重要なツールのうちの1つにすぎません」と博士は述べます。「製品開発の成功にとって同じように肝要なのは、販売からマーケティングそしてエンジニアリングから生産にいたるすべての分野を統合する製品開発チームです。これが、マルチフィジックスと知識ベース工学にFEAの最先端があると考えるもう1つの理由です。」

しかし博士は次のように注意します。「解析によって相当量の試作実験を省くことができますが、すべての解析の妥当性を検査するために、いぜんとして本格的な試験を行うのが賢明です。もちろん、これが不可能な場合もあります。たとえば、耐震建築物の設計です。そのような場合、解析の解を検証し、その安定性を確立するために、感度研究が絶対に必要です。」

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