ロケットモーターの設計

Thiokol Space Operations

再設計がスペース・シャトルの続行を可能に

1986年に起こったスペース・シャトル「チャレンジャー」の事故の後、固体ロケット・モーター・ブースターの設計を担当するThiokol Space Operations(ユタ州Brigham市)の技術者たちは、問題を特定しました。モーターのセグメントを接続しているゴム製Oリングが、打上げ基地周辺の異常に寒い天候で硬化したために、継手を完全にふさいでいませんでした。その結果生じた漏れにより、排気ガスがブースターのシリンダー壁を伝わって燃焼し、さらにはシャトルの主燃料タンクが発火しました。

Oリングの欠陥修正に伴い、NASAにはロケット・モーター全体の再認可が必要となりました。この過程で、Thiokolの技術者たちはモーターの設計整合性を立証しなければなりませんでした。これは、現在航行している最大の固体燃料ロケット、NASAによって有人宇宙飛行用に格付けされている唯一のロケット、そして再利用可能な唯一の固体ロケットのモーターです。一対のブースターが、打上げ後40秒でシャトルを音速まで加速する6百万ポンド (272万kg) の推力を生みます。打上げ後に使用済みロケット・モーターは回収されて、他の飛行のために再生されます。

3年近くの間、有人宇宙飛行プログラムは棚上げされ、技術者たちはモーター設計のあらゆる側面を検討しました。飛行ごとにモーターを詳細に検査するという条件つきで、1988年9月にシャトルの飛行は再開されました。再設計された固体ロケット・モーターは、20飛行まで再利用可能であるとして、1994年に完全に認可されました。

再認可に際し、モーターのコンポーネントとアセンブリーの多くを解析するために、Thiokolは有限要素ソフトウェアANSYSを使用しました。解析の結果、Oリングの問題の他に、モーターのセグメントを連結しているピンの取り付け継手構造に高い応力集中が見つかりました。

ANSYSによる解析の結果、技術者たちは、継手の隙間をできるだけ減らし応力集中の特徴がつかめるように、継手構造をうまく再設計することができました。それにより、ロケット・モーターの再認可につながる糸口が得られ、シャトルのブースターの寿命を延ばすことができました。

大きな問題の発見

Thiokolの上級スタッフ・エンジニアーであり、ロケット・モーター再認可プロジェクトのチーム・リーダーであるRonald Webster博士の説明によれば、長さ125フィート (38.1m) のモーターは一体型として製造・出荷するには大きすぎるので、モーターを11のセグメントに分け、それらを連結する継手を直径1インチ (2.54cm) のピン177本で固定する方法をとっています。まずThiokolのユタ工場で製造された数対のセクション(部分品)が工場組立て継手で連結されます。そして、ケープ・カナベラルの機体組立場に設置されたセグメントが現場組立て継手で連結されます。

ANSYSを用いた詳細な解析の結果、モーターを使用するたびに穴の周りで周期的な弾塑性変形が起こっていたことが分かりました。これにより技術者たちは、予定される20回の使用中に、継手の周りに低サイクル疲労亀裂が形成される可能性を懸念しました。そしてコンポーネントの寿命中における打上げ、回収、再生、および試験の反復によって生ずる材料降伏の影響と損傷の蓄積が解析されました。「私たちは解析を行うまで、このような問題の存在に気づきませんでした」とWebster博士は述べています。「明らかに、ピン穴の部分の弾塑性変形は、調査すべき重要な課題でした。」

徹底的な解析

解析は、すべてのパーツを組み付けたモーターの大規模な弾塑性モデルを用いて開始されました。特定の領域を詳しく評価するために、解析結果からサブモデルが抽出されました。

モーター・セクションの凸部が合わせ目の凹部にはめ込まれる個所の複雑なジオメトリーを表現するために、工場組立て継手部位のFEA(有限要素解析)モデルは、30,000の要素と100,000の自由度を持っていました。2つのセクションを締結するピンと穴、組立ての際にパーツを所定の位置に導く位置合せスロット、および組立ての際に継手の通気とシールの確認を行うための漏れ点検口の詳細も表現されました。モデルは3Dソリッド要素および2D軸対称要素、圧力の更新を行うためのサーフェス・エフェクト要素、パーツが互いに接触する部位を表現する接触要素から構成されていました。

ANSYSを用いて弾塑性および大変形の非線形解析を行った結果、漏れ点検口の降伏領域と位置合せスロットが破壊圧力近くで併合するの分かりました。その後、このデータは、亀裂生長のレベルを求めるために、破壊力学解析に使用されました。これらの解析結果は実際の破壊試験と密接な相関関係を持っていました。また、位置合せスロットおよび漏れ点検口の部位における飛行荷重および保証試験荷重をシミュレートするための供試体の設計にもANSYSが使用されました。

Thiokolの主任構造アナリストTroy Stratton氏によれば、弾塑性および大変形の解析に費やされた計算時間は、当時Cray YMPスーパーコンピューターを用いて、100CPU時間以上でした。「おそらく、これは当時Crayで実行された最も大規模なANSYS非線形モデルだったでしょう。」とStratton氏は説明します。「当初の予測では数週間かかると思われました。しかし、ANSYSのおかげで、大規模な問題に対するソルバーの効果を利用してマシンの提供元であるCray Research社との共同での解析作業を行うことができました。」

ANSYS解析の結果に基づいて、技術者たちは継手アセンブリーの変形および、その変形によって位置合せスロットと漏れ点検口の周りに生ずる応力の特性を明確化できました。この応力に関する情報は、疲労および破壊力学の評価に使用されました。

再設計された現場組立て継手においては、新しいキャプチャー・フィーチャーが、継手シール面の間の運動を制限する特別なリングかみ合い機構として追加されました。この新しいクレビス‐クレビス(uリンク-uリンク)設計は、加圧に際して継手が開くのを防ぎ、Oリングの密閉を維持させます。3つ目のOリングが継手に追加され、どんな天候でもシールの弾力性を確保するためにヒーター・システムが追加されました。また、金属部品間の締りばめおよび継手のカスタム・シムにより、シール面におけるパーツの動きが制限されます。保守容易性および構造的整合性を向上させるために、ピンの設計が修正されました。

解析の主力

ThiokolのCAD技術部長Nathan Christensen氏によれば、解析には、大変位理論、弾塑性、および弾塑性破壊力学の革新的利用が必要でした。さらに、破壊試験データに照らして有限要素モデルの妥当性を検証するために、延性破壊理論を特徴づけ、適用する必要がありました。そして、最終結果を得るために、革新的解析と破壊試験の組合せを適用しなければなりませんでした。供試体の非線形コンピューター・モデルが、破壊試験の設定および延性破壊モデルの特徴付けに重要な役割を演じました。

「解析における計算作業の主力はCray YMPスーパーコンピューター上で実行するANSYSでした」とChristensen氏は述べます。「ANSYSではプリプロセッサーとポストプロセッサーが1つのパッケージに入っており、データと結果を変換し照らし合わせならない他のソルバーに比べて、大きく複雑なモデルの取扱いがずっと便利です。ANSYSはすばらしい汎用解析ツールであり、我々の技術者たちは、その統合された操作環境をひじょうに高く評価しています。」

Christensen氏はまた、非線形性を扱う能力が、プロジェクトのためにANSYSを選んだ際の主要な着眼点であったと述べています。Thiokolにとり、ANSYSを利用して分かった大きな利点は、非線形性や大規模全体モデルを扱う際の柔軟性、およびより詳細なサブモデルへの連携能力です。Thiokolは、あらゆるタイプの構造解析に加え、流体解析および伝熱解析にもFEAを使用しています。このようにして技術者たちはスペース・シャトル・プログラムにANSYSのFEA機能を用いています。それがわれわれにとって間違いなく利益となることを知っているからです。

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