フライホイールの設計

Satcon Technology Corp.

電気自動車用のエネルギー貯蔵フライホイールを設計

電気自動車の考えは、環境問題専門家、自動車メーカー、および消費者の関心の頂点にあります。しかし、鉛蓄電池では、迅速なレスポンスをもたらすための十分なパワーを急速に出せませんし、エネルギーの多くはドライバーがブレーキを掛ける際に熱として失われてしまいます。

このような困難を克服するために、マサチューセッツ州ケンブリッジのSatCon Technology社は、軍隊および宇宙計画のために自社で開発したフライホイール技術ならびに精密電動機、発電機、コントローラー、その他さまざまな電気装置に関する専門知識を使用しています。

電動機の働きをする内蔵のステーター(固定子)とローター(回転子)により50,000 rpmまで加速された後、フライホイールは電気エネルギーを運動エネルギーに変換し、そのまま定常状態で回転を続けます。急速な加速や上り坂のために特別なパワーが必要になると、フライホイールは電動機から発電機に切り換わり、運動エネルギーを抽出して駆動用の電力に変換します。制動時には、自動車の運動量による運動エネルギーはフライホイールに逆供給され、自動車がスピードを落とすと、フライホイールはスピードを上げます。

これは巧妙な技法です。しかし、このエネルギーを能率的に蓄積し開放するには、単に回転する金属塊を一連の蓄電池に接続する以上のことが求められます。SatCon社の設計者たちは、ほとんど摩擦のない真空シールされたフライホイール・システムおよび蓄積エネルギーの90%を戻す特殊な高性能ベアリングを開発しました。また、同調ジンバル・システムのおかげで、道路を横断したり右折や左折をするときに生ずる揺れ、振動、および傾きの影響を受けることなく、フライホイールは水平を保ち均一に回転を続けます。このようなフライホイール・エネルギー貯蔵システムは乗用車だけでなく、いつかは大量輸送システムや無停電電源装置も含めた実際的な用途に用いられるかもしれません。

早期の解析とシミュレーション

このようなシステムの開発にあたっては、設計が試作実験をとおして改変されるようなアプローチは問題外です。余裕のないタイトなスケジュールのため、そのように時間のかかる反復実験は許されません。また、高価な材料からオーダー・メードで作られたパーツは、設計上の欠陥を見つけるために試作を製造して壊す実験を行うには高くつきすぎます。

代わりに、SatCon社は開発中にフライホイール・システムの設計を精緻化する際、かなり早期に構造解析と機構解析を行っています。上級機械技師Luca Serdar氏は次のように語っています。「弊社のシステムにおける多くのコンポーネントは高価であり、予算の限度ぎりぎりの状態です。実際に金属を切削する前に、かならず徹底的な構造解析と機構解析を行わなければなりません。」

設計作業はParametric Technology社のPro/ENGINEERを用いて行われ、続いてANSYS社のANSYSを用いて有限要素法解析が行われ、Mechanical Dynamic社のADAMSを用いて機械系の動解析が行われました。

ソフトウェアはHP 735ワークステーションで実行されます。これは以前SatCon社で使用していたPCに比べてパワーが大きいために選ばれました。「弊社のアプリケーションにおいては、解析のスピードが大きな要因です」とSerdar氏は述べます。「弊社では非常に複雑な機械システムを開発しており、非常に多くのコンポーネントを同時に試験しているからです。」

Serdar氏の説明によれば、当初パーツの概念はPro/EまたはPro/Juniorでスケッチされます。このジオメトリーおよび設計目標に基づいて、材料特性に関するデータならびに境界条件や圧力、温度のような荷重条件も含めたパーツまたはアセンブリーのソリッド・モデルに対して、Pro/E内のモジュールPro/Meshを用いて、有限要素メッシュモデルが作成されます。目下の解析のために適当なメッシュが生成されるように、メッシュの制御を行うこともあります。ここで得られたモデルはANSYSに受け渡されます。ANSYSの選択機能により、ユーザーは材料特性の変更や、より複雑な境界条件や遠心過重を定義することも可能です。たとえば、ANSYSでは直交異方性の材料を指定することができます。さらに可動部の動解析を行うために、比較的粗いメッシュモデルがADAMSに送られます。「Pro/EからANSYSおよびADAMSへのリンクは、私たちが検討した他のどんなパッケージよりも緊密でした。」とSerdar氏は語ります。「これらと同じような連携を他のソフトウェアで行おうとすると非常に困難でした。」

構造解析および機構解析の結果に基づいて、Pro/Eにおける設計が修正されます。続いて最適なパフォーマンスが達成されるまで、新しいモデルの構造解析と機構解析が繰り返されます。満足の行くモデル・ジオメトリーが得られると、設計者たちは寸法を記入して完全なパーツを詳細に記述し、設計図を作成します。後に設計図は地元の機械工場に渡され、そこでパーツが作成されます。「解析から設計まで完全に統合されたシステムです。」とSerdar氏は述べます。「これなら反復計算もいたって簡単です。」

Pro/Eは主要な寸法に関して異なる値を入力することにより設計全体を簡単に変更するためのパラメトリック機能を持っており、反復は特に速く行うことができました。また、設計データの一元化により、パーツの変更は自動的にアセンブリーおよび図面にも反映されます。ドライブトレーンには相互関係を持つ非常に多くのパーツが含まれており、それらを正確にはめ合わせなければならないため、アセンブリーやサブアセンブリーを効率的に扱うPro/Eの機能は特に貴重だとSerdar氏は言います。

Patriotプロジェクト

SatCon社において、これらすべてのパッケージを活用した最初のプロジェクトは、Patriot用の500馬力ドライブトレーンの開発でした。Patriotは、テクノロジーを将来の乗用車設計に適用するためのテストベッドとしてChrysler社用に開発されたハイブリッド・レーシング・カーです。

Patriotの水冷式ドライブトレーンは、アルミニウム製ハウジングに真空シールされた135ポンド (61.2kg) の炭素合金製フライホイール、液体天然ガスを燃焼して発電するタービン式交流発電機、自動車を駆動する3相電動機、およびエネルギーの蓄積と自動車の駆動を調整する動力制御装置で構成されています。

ADAMSを用いて、特に、自動車の走行中に水平を保つようにフライホイールを支えるジンバル・システムの開発において、可動部の動作を評価しました。Pro/Eの基本ジオメトリーを用いて、ローター・システム全体を構成するコンポーネントおよび自動車へのアタッチメント、ならびに適当なリンケージ、ばね、および制動要素と共にアセンブリーに相互接続されているパーツを、ADAMS内にモデル化しました。

システム・モデルが完成すると、フライホイールの定常的回転運動を入力しました。次に、路上を走行中に隆起部、急カーブ、急ブレーキなどに際して自動車が受けると考えられる方向変化、衝撃荷重、および振動を入力しました。続いて、フライホイールのたわみおよび支持構造物とシャーシに対する反力も含めたシステムの動応答を表すグラフおよび数値が、ADAMSによって生成されました。このADAMSから得られた情報により、Serdar氏はジンバル支持系のばねシステムおよび制動要素を容易に変化させることができ、それに基づいて振動を最良に減衰させフライホイールを安定化させることができました。また、ADAMSで得られた荷重をANSYSに入力し、個々のコンポーネントにおける応力レベルの決定に用いました。

Patriotプロジェクトにおいて、ANSYSを用いた作業の大部分はSatCon社の上級機械技師Mary Ann Patridge氏によって行われました。同氏の説明によれば、コンポーネントの数が多く、多くの異なるパーツやアセンブリーが緊密に相互作用し、パーツが高速で回転し、材料が直交異方性を持ち、多くのコンポーネントが高い熱負荷を受けるため、ドライブトレーンの解析とシミュレーションは特に複雑でした。

Patridge氏の話によれば、有限要素法解析を用いて静的とみなした解析を行い、回転するコンポーネントの受ける応力を求めました。場合によっては、1つのローターに2つのモデルを使用しました。それらは、2D平面応力または軸対称モデル、および端部領域における3次元くさび形モデルです。必要な荷重に耐えられるかどうかを予測するために、すべてのハウジングに対して座屈解析を行いました。また、自動車周囲の熱、気流、および内部で発生する伝熱を基に熱解析を行い、様々なコンポーネントの温度分布を明らかにしました。Patridge氏は次のように述べています。「制御システムではデリケートな半導体が使われており、ローターとステーターのパーツは大量の電流を通すため、温度を知ることは非常に重要です。」

熱および応力に関する研究の大部分は、連成解析と呼ばれるANSYSの機能で行いました。2つの物理現象の相互作用を研究するためによく用いられる方法です。これは連成解析に適用される要素を使用し、2回ではなく1回の解析で両方の変数を求めます。関連する物理現象を継続的に解析するために、要素は、各節点において複数の自由度を持っています。

Patridge氏は次のように述べています。「ANSYSは、システムのために振動モードの形を求める上でも貴重であることが立証されました。回転するアセンブリーの固有振動数が明らかとなったため、臨界速度を運用速度に適合させるようにシステムを再設計できました。」

SatCon社は、2年半にわたる開発作業の後にPatriotドライブトレーンを期限どおりに納入できました。Serdar氏は、ANSYSおよびADAMSがプロジェクトにおいて非常に重要な役割を演じたと考えています。そして、次のように述べています。「弊社には、これらの構造解析/機構解析ソフトウェアのスピード、パワー、および柔軟性、さらにPro/Eと非常にスムーズに連動する能力が本当に必要でした。弊社にとって、試作実験は、なにかの製造を始める前に最適コンフィギュレーションを開発するための方法です。もしこのようなツールがなかったら、疑いなく物理試験に多くの時間と費用を要していたことでしょう。」

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