MEMSのモデリングとシミュレーションVol.3
(回路およびシステムシミュレーションツールのためのマクロモデルのエクスポート)

今日では、電子回路および制御系のバーチャルプロトタイピングのために、商業ベースの回路およびシステムシミュレーションツールが多く存在しています。しかしながら、MEMS設計エンジニアはいまだにFEAツールと回路シミュレータ、あるいはシステムシミュレータとを有効的にリンクすることに多くの時間を割いています。通常、MEMSにおけるエレクトロメカニカルコンポーネントは有限要素法解析を用いて詳細に解析されます。この手順が終了した時点で、この高精度の結果から、単なる入出力のインターフェース端子でありマウスのクリック操作で回路図やシステム図へダイレクトに組み込みができるマクロモデルをどのように作成するかが問題となります。モデルを変換するための数値的手法は既にあります。将来の製品リリースのために、ANSYS社はマクロモデルの生成、ファンクションのエクスポートの自動化を目指しています。ここでは、有限要素法による詳細なマイクロモデルからシステムレベルで必要とされるマクロモデルを導き出すための基本的手順の概要を説明します。

モデルサイズの縮小

有限要素法解析(FEA)の場合と同様に、システムレベルでのシミュレーションのパフォーマンスを決定するのは精度と計算速度です。しかし、必要とされる項目は両者ではまったく異なります。自由度数が数千を越えるようなモデルに関する数十振動サイクル間の過渡動的有限要素解析を行うことは可能であり、今日では自由度数が1万から10万の範囲におけるモデルに関しても普通のことになっています。しかし、システムレベルでは、シグナルには数千から1万サイクルの振動が含まれます。数秒から数分の時間における結果を得るためには、システムにおける自由度数を数百のオーダーに抑えねばなりません。最も簡便な方法では、ランプトパラメータ法(lumped parameter method)を用いての剛体近似により、有限要素解析とは関連性無しに、エレクトロメカニカルパーツに関する最も低次のマクロモデルがマニュアルで作成されます。稼動パーツのパラメータとしての剛性、減衰、慣性質量および静電場とのカップリングが、これらと等価な回路要素である、インダクタ、レジスタ、キャパシタおよび制御された非線形電源またはシステムブロックによって置き換えられます。
剛体モデルの難点は有限要素モデルによって正確に求められたシリコンコンポーネントの柔軟性を表現できないことです。一方、有限要素モデルをシステムの過渡シミュレーションへダイレクトにリンクすることは、システムにおけるソリューションプロセスにかなりの時間を要します。最も効率的な方法は、有限要素モデルのモデルサイズを数桁のオーダーで圧縮し、縮合されたデータからマクロモデルを、回路シミュレータやシステムシミュレータと互換性のある言語形式で書き出し、以降の作業はこれらのシミュレータのみで行うことです。サブストラクチャやモード重ね合わせ法等を通して、ANSYSでは長年に渡り縮合法の技法が使用可能であり、さらに、1999年にはトランスデューサ要素TRANS126も追加されました。新たな要請により、縮合マクロモデル(以下、ROM(reduced-order macromodel)と略記)の生成は、構造、静電場および流体に関するドメインをひとつにリンクするものでなければなりませんし、非線形特性は言うまでもありません。

形状関数による手法

メカニカルシステムの変形状態と動特性は、モード形状関数の重み付き組み合わせあるいはモード重ね合わせによって正確に表現することが可能です。実際、モード形状関数による手法は非線形システムに適用することもできます。例えば、モード剛性がモード振幅に関するひずみエネルギー関数の1階微分として算出できるならば、幾何学的非線形やストレススティフニングを考慮することも可能なのです。キャパシタンス−ストロ−ク関数は、ストロークをモード振幅と捉えるならば、各固有モードと静電モーダル力や電流などの電気的物理量との間での非線形カップリングをもたらします。減衰パラメータは個々の固有モードに割り当てられます。
カップリングされたシステム全体を表現するためには、モード当たり1方程式およびコンダク当たり1方程式だけを必要とするため、MEMSのモードによる記述は非常に効率的となります。静電スキャニング・マイクロミラーを例に、このアプローチを以下に説明します。

ステップ1:縮合手順

ROMを生成する第1ステップは、どのモードが重要であるかを見極め、個々のモードにおける適切な振幅レンジを見積ることです。いくつかの基準を適用できます。例えば、モーダル解析における低次の固有モード、稼動方向のモード、典型的試験荷重における変形状態に寄与するモードが重要なモードとなります。試験荷重としてマイクロミラーの一方の電極に単位電圧を印加することで、マイクロミラーの挙動は、回転(1次モード)、横振動(3次モード)およびたわみ(7次モード)により支配されることが明らかになりました。
次に、モーダル振幅から得られる相互キャパシティCijとひずみエネルギーとの従属関係を多項式でフィッティングします。フィッティングに必要なデータポイントは、各固有モードへ強制的に、ひずみエネルギーに関してメカニカルモデル、キャパシタンスに関し静電場モデルに印加する振幅を変化させることで得られます。モーダル減衰は流体モデルから得ることができます。

ステップ2:マクロモデルのエクスポート

モード重ね合わせの概念において、各固有モードはモーダル質量miとモーダル減衰Ciを備えた独立した共振器を表します。システムスケマティックは、加算、利得および積算ブロックをシンプルに組み合わせることで共振器の運動方程式を置き換えます。非線形モーダルにおける励起力とストレススティフネス力に関する多項式は解析関数ブロックへ書き込まれます。このスケマティックの構造はすべてのタイプのシステムシミュレータに関して不変であり、適切なマクロ言語によりモデルファイルへエクスポートする必要があります。
例では、MATLAB/SIMULINKのためのモデルが作成され、電圧入力ポートViを3つ、1次、3次および7次の固有モードの伸長を伝達するためのメカニカル出力ポートを3つ備えています。同様の構造は回路シミュレータでも応用でき、電気的ポートがキルヒホッフの法則に従い双方向信号を伝達します。(VHDL-AMS言語)

ステップ3:システムシミュレーション

フィードバックコントローラユニットと組み合わせることで、画像投影の際の滑らかな鋸歯波形の挙動をマイクロミラーは再現することができます。MATLAB/SIMULINKを用いてのシステムシミュレーションは、使われた3つのモードによるミラーの挙動をトレースします。実際、回転モードの起動のみに貢献する静電力を横振動モードはかき乱します。これを含む攪乱を補正するために制御ループが用いられますが、この時点で、これこそがシステムシミュレーションの目的となります。たわみモードに関するインフォメーションに基づき、ミラーの反射特性を決定することが可能となります。
剛体仮定に基づくマクロモデルは回転モードと、かなりの近似による横振動モードのみを含むことができます。一方、有限要素データからの縮合は、有限要素解析で典型的と言える精度を保証し、かつシステムシミュレータと回路シミュレータで典型的と言える処理速度の両方を実現します。
MEMSバーチャルプロトタイプの概要について説明しましたが、ここでは少なからずひとつ以上の数値解析手法を必要とします。多くの団体および企業における開発は、CAD、有限要素法解析、電子回路シミュレーション、制御系、機構およびマイクロ加工に関するさまざまな商業ベースのツールに依存しています。これら多くのツールが適切なインターフェースによってリンクされ用いられるようになるでしょう。

本文はANSYS Solution Volume 3, Number 4(FALL 2001)に掲載されております“Exporting macromodels for crcuit and system smulation tools”(Jan Mehner(FEM-ware GmbH), Juergen Wibbeler(CAD-FEM GmbH), Fouad Bennini (Chemnitz Unversity of Technology)の共同執筆)の内容を一部再構成し転載したものです。
また、「MEMSのモデリングとシミュレーション」のvol.1は本誌2001年秋号、vol.2は本誌2002年冬号に掲載されております。

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