ANSYS による超伝導マグネットの熱解析

McDermott 社

絶対零度に近い4K という極低温で動作する超伝導マグネットを設計するために、エンジニアは様々な要因を考慮する必要があります。設計のために、磁界とこれにより発生する機械的応力、さらに熱応力を結合しなければなりません。また、マグネットへの熱の進入をもたらす様々な要因を排除し、断熱性を保つ必要があります。イリノイ大学における低温超伝導磁気スペクトロメータを建築するために、McDermott 社のBWXTechnologies (BW/XT)所属のエンジニアはこのような難問に直面しました。
大学からの設計仕様に従えば、八つのコイルからなる超伝導マグネットは4Kから9Kの間の温度で動作しなければなりません。さらに、10日間で280度以上も温度を下げるという‘クールダウン’の過程を冷却メカニズムは完璧にこなす必要があります。マグネットを製造する前に、BW/XTのエンジニアは設計仕様を満たすことが可能かどうかを検討しました。プロジェクトマネージャーであるTimothy Antaya 博士とアドバイザリーエンジニアであるTimothyA.Brandsberg は、ANSYSを用いてマグネットの定常温度分布、冷却能力および冷却速度を見極めました。

Brandsberg 氏の談:
「原子炉、太陽熱ロケットモーター、超伝導マグネットおよびプラント建設器具などのプロジェクトでのANSYS の使用経験は6年になります。経験から、我々が必要とする結果をANSYS はもたらしてくれるという確信がありました。」

Antaya 氏とBrandsberg 氏は、冷却に必要な熱荷重を算出し、これを熱解析モデルへの入力として用いました。マグネットの冷却システムをモデル化するために、配管流れのシミュレーションが可能なFLUID66をANSYS 要素ライブラリーから選びました。この要素は、液体摩擦による圧力損失、浮力による圧力変化、レイノルズ数や流体の物理的特性に起因する伝熱における変動を考慮することができます。Brandsberg 氏は、定常状態での冷却データを得るために熱サイホン式冷却サーキットのモデリングから始めました。全体構造に対する熱荷重をシミュレーションするために ANSYS を用いたのです。熱荷重としては、使用時に想定される熱荷重よりも著しく小さな値から著しく大きな値までの範囲が入力されました。計算結果として、蒸気成分が25 パーセントに達するまでの熱量により流量が増加しました。この時点で、蒸気成分の増加と共に流量は一定の率で増加しました。同氏は、科学者たちによって報告されている自然循環の挙動と計算結果を比較し、結果が定性的に正しいことを確認しました。

次に、Brandsberg 氏は非対称荷重を調査しました。ひとつの冷却脚だけを他のものより加熱してみました。予想通り、この冷却脚における総流量は増加しましたが、他の冷却脚における流量が減少することはありませんでした。個々のコイルが他のものよりも温度が高くてもマグネット全体としては十分に冷却されたのです。熱サイホン式冷却システムの解析に加え、Brandsberg 氏は、ANSYSを用いてクールダウンのシナリオを調査しました。さまざまな流量を与えた結果、初期段階では冷却ヘリウムガスがマグネットを効率的に液体窒素レベル(約100K)まで冷却することを確認できました。しかしながら、第二段階では、液体ヘリウムを用いていては10日間という期間ではマグネットを超伝導温度まで冷却することは不可能なことが判明しました。最後に、アセンブリにおける重要なコンポーネントの熱容量を検討するための熱解析モデルが作成されました。重要コンポーネントは質点(MASS71)で表現され、これらが様々なタイプのリンク要素によって熱的に接続され、熱伝導、熱伝達、ふく射および接触熱伝達が考慮されました。

コンダクタにおける‘ホットスポット’を確認するために、熱流がマグネット構造物に現実的に負荷されました。発見されたホットスポットは、超伝導状態を安定に保つために十分に冷却されねばなりません。

Brandsberg 氏の談:
「ソフトウェアは我々の要求以上のことを成し遂げました。複雑な問題に取り組む際も柔軟に対応してくれますし、公式データと矛盾しない解を与えてくれます。重要なのは、顧客からの要望に応えるための手段を提供してくれることでしょう。」

ANSYS Solutions Volume 3 、Number 1 より転載

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