構造破壊を予測するためのモデリング

GB Tubulars 社

一般的に、有限要素モデリングで用いられるコンピュータ上のモデルおよびその解析結果は、現実の実証試験の結果を非常に良く近似します。すなわち、コンピュータによる解析が現実の条件を反映して実施されていると確信できるように、細部を一切無視しないならば解析結果と実現象とは非常に良い相関をもたらします。

当然の事ながらこのことは設計者や彼らの製品に信頼性を求める人々を安心させます。しかし、実証試験で製品が破壊してしまうようなエリアにおいてはこれら安心感の幾分かが蝕まれます。このようなエリアは、モデリングと実証試験の"際"あるいは"崖っぷち(ragged edge)"と呼ばれています。多くの産業界において製品の物理特性の範囲外での試験データが欠落している場合があります。その理由は、設計者による実証試験が許容される安全のマージンの範囲内で製品が正常に動作することを確証するためにのみ実施されるからです。基準を満たせば、ほとんどの場合において設計者と使用者は満足するのです。しかしながら、安全のマージンそのものを実証しなければならない場合があります。長年に渡り、コンピュータによる解析は、例えば骨組構造などの構造的部位における応力/ひずみを予測する上でかなり信頼性が高いことを実証してきました。断面内での応力/ひずみを決定するために有限要素法解析は有用なツールであり、実証試験では計測不能なさらに詳細な情報をもたらします。

崖っぷち(Ragged Edge)に関する調査

一方、破壊の予測はより難しくなります。モデリングにおける崖っぷちと 呼ばれる領域で作業を行っているのが米国テキサス州ヒューストンの GBチューブラ社(GB Tubulars, Inc.)です。同社が設計・販売してい るのは、カップリングと呼ばれている、石油あるいはガスの非常に深い 油田で用いられる特別仕様の管継ぎ手です。油田で用いるケーシング の結合部に関する実証試験で生ずる破壊を予測するためのソフトウェ アとしてANSYS/Mechanicalを採用し目覚しい実績をあげました。

ケーシングとカップリング(あるいはコネクタ)は筒状の形状をしています。ケーシングの各々は40フィート長であり両端の外側がネジ切りされていて、これらがネジ止めで連結され油田の開口から下げられます。コネクタは樽のような形状で内側にネジ切りがあり、ケーシングとケーシングを連結するために用いられます。コネクタは、引張/圧縮、曲げおよび内圧の組み合わせとなる穴からの荷重に耐え気密性を保つようにケーシングを連結しなければなりません。現在、多くの石油あるいはガスの油田では地表面下あるいは海面下にして10,000フィートから20,000フィート(約6Km)までの深さまで掘削されます。ここまでの深さになると圧力は12,000psiから15,000psi(約1,020気圧)にも達します。

油田採掘業者のニーズに対しての十分な把握と彼らの問題解決を永続的に行ってきたという名声を獲得しており、GBチューブラ社は長年に渡る成功の歴史を持っていますが、これらは膨大な数のモデリングと実証試験に起因しています。長い年月に渡り積み重ねられた試験データは、同社と顧客が解析に信頼を置けるような非常に高い信頼性をもたらしました。

最近、メキシコ湾で操業している大手石油会社から、非常に高い荷重レベルにおけるGB社製バトレス(Buttress;のこ歯)コネクションの性能に関するデモの依頼がGBチューブラ社にありました。巨大な石油採掘用やぐらの経営者やオーナーは数億ドル相当の投資をしており、不必要にリスクを負うことを嫌います。やぐらでの全作業員の安全性は、日常業務を遂行するための設計指針においても大事な事柄です。さらに、操業は環境への影響を最小化するために無数の法的要求事項に合致するように調整されます。

予定されている採掘プロジェクトで想定される状況に匹敵する荷重に対して実証試験が実施されました。想定される使用荷重での十分な性能に関するデモンストレーションの後に、使用荷重の安全率倍の荷重、すなわち極限荷重がコネクションに負荷されました。

実スケールでの実証試験に先立ち、ANSYS/Mechanicalを用いてのシミュレーションをGBチューブラ社は行いました。解析の結果から新たな知見が得られ、試験の健全性を改善する過程でコネクションの挙動を把握することができました。実証試験はQ-125スペシャルクリアランスGBバトレスコネクションを用いて行われました。このコネクションは、1フィート当たり72ポンド(32.7Kg)の重量を持つ特殊圧延鋼材で製造されています。同コネクションの外径は13-3/8インチ(34cm)で肉厚は1/2インチ(1.27cm)よりも若干薄いものです。Q-125は米国石油学会(API;American Petroleum Institute)の規格に合致する鋼材で、その降伏点は125,000psi(約88Kgf/mm2)、引張強さは135,000psi(約98.6 Kgf/mm2)という材料特性を持ちます。鉄鋼メーカー自身は、降伏点として143,100psi (約104.6Kgf/mm2)、引張強さとして153,700psi (約112Kgf/mm2)を保証しています。スペシャルクリアランスコネクションの外径は減ぜられ、使用時にきついクリアランスを実現するようになっています。解析結果は表1に示すように指定された組み合わせ荷重のレベルにおいて十分な性能を示唆していました。等価引張力はコネクションの定格引張力である1,707,000ポンド以下となっています。これらの荷重レベルの意味を明らかにするために、ケーシングとカップリングの定格を表2に示します。


表1.規定荷重レベルでの性能

表2.ケーシングとカップリングの定格

実際の現象における種々の要因

これまで述べたように、コンピュータモデルにより破壊を予測することは難しいことですが、解析が不正確だからという理由によるものではありません。困難さは、コンピュータモデルでは考慮することが不可能な実現象の要因に拠るのです。すなわち、冶金や製造工程における不正確さに拠るのです。油田用コネクションの解析において該当する要因には以下のものが含まれます。

部品が楕円形状であること
解析および規格ではすべての部品が完全に円を成すと仮定。
偏心
コネクションとケーシングの肉厚は均一でなくばらつきがある。
二次元あるいは軸対称モデルで扱うことは不可能。
ネジの潤滑
ネジの粉末は潤滑材としてコネクションに作用し油田全体を通して密閉性は相対するネジの間で達成されている。コネクションにおいて閉じ込められている粉末の存在とその潤滑は、用いられた量、組み立て速度、コネクションのトレランス、温度によって左右される。その油圧はコネクションにおいて重要なフープ応力を伝達するが、これを算出することは不可能。
ネジにおけるトレランスのばらつき
鋼材にねじを切る際に用いる超硬工具の収縮を考慮することも、ネジ山の高さやテーパーのばらつきを考慮することも不可能。
不均一な材料あるいは等方性でない材料
規格においても解析においても、採掘業者が用いる鋼材のすべては均質であり三次元空間のいずれの向きに対しても一貫した挙動を示すことが仮定されている。現実にはそのような材料は存在しない。

GBチューブラ社はコネクションのモデリングに関して卓越した経験を持ち、解析結果は多くの実証試験の結果と比較されています。これらの経験から、実証試験のシミュレーション、新製品の設計および設計改善にANSYSを用いることに高度の信頼性を確立しました。メキシコ湾でのプロジェクトは同社に新たな段階の予知能力をもたらしました。実証試験のシミュレーションは、スペシャルクリアランスGBコネクションが所定の荷重の組み合わせに耐え得ることを示しました。さらに、破壊に至るまでのコネクションの挙動を明らかにするという副産物も与えてくれました。ANSYSの結果を、カップリングに用いられている材料の降伏強さや引張強さと比較することで、エンジニアはどの箇所で破壊が生ずるかを予測することができたのです。内圧が8,500psi、作用引張荷重が689,000ポンド、等価引張力が1,707,000ポンドを越えるまで増加した時点で、カップリングの引っ張り破壊が生じると予測されました。実際、この荷重の段階で破壊が生じました。

実証試験で定められた荷重履歴に従い実施されたANSYSによる解析は、GBチューブラ社が実際の構造破壊を予測できるような応力/ひずみデータをもたらしました。材料の引っ張り強度近傍の応力成分が得られました。エンジニアは有限要素解析の結果と実証試験の結果との素晴らしい相関を見出しました。この相関は実証試験の現実においてかつてないほど素晴らしいものでした。さらに、特定のタイプの破壊は変則的なものでした。通常、コネクションのひび割れは径方向に生じますが、この変則的な破壊はさまざまな破壊モードを組み合わせたようなものでした。ANSYSの結果を検討することでこの現象を説明することができました。


図1.カップリング断面における結果。最大応力は赤色で表示。
F11(シールリンググルーブのフィレット)、F12(ネジ山の根元)
およびF13(ネジ山の逃げグルーブのフィレット)の位置で
破壊が予測される。F14とF15においても起こり得る。

クラックと引裂の特定

GBチューブラ社のエンジニアは、一連のクラックや引裂において起きている現象を特定することでコネクションの安全のマージンを得ることができました。特に、カップリングに用いられている鋼材について測定された強度である153,700psiに達するか越えるような局所的応力が発生する三つの領域のいずれかで破壊が生ずることをANSYSの結果は示唆していました。破壊は、8,500psiの内部ガス圧力と689,000ポンドの引張荷重の組み合わせで生ずる等価引張荷重が1,707,000ポンドにおいて発生しました。

冶金学のコンサルタントによると、カップリングにおいて破壊が起こり得る三つの領域、すなわち、シールリングのためのグルーブのフィレット、端のネジ山の根元、ネジ山の逃げグルーブのフィレットのいずれかの箇所で破壊が始まるとのことでした。コンサルタントが指摘した位置は、ANSYSの結果において高い引張応力が示された位置に合致しました。解析結果からは、さらに別の二箇所で破壊が起こり得ることが示唆されましたが、これは実際に破壊が発生した位置に非常に近いものでした。

しかし、これらの箇所で算出された応力成分のレベルの差は相対的に小さいものでした。よって、これらのいずれかの箇所において破壊が始まり他の二箇所における破壊を誘因するか、あるいは三箇所で同時に破壊が始まるようなことが起こり得るのです。

これらの応力は塑性変形をもたらしますが、これは非線形現象です。応力が除去されても金属は元の寸法形状には戻りません。応力レベルが低い場合、変形は弾性範囲内にとどまり、応力除去により完全に元の寸法形状に戻ります。

実際の材料特性に非常に近い、ほとんどフラットに近い接線係数(10,000psi = 70.3Kgf/mm2)を持つバイリニアの応力―ひずみ曲線を用いての解析が行われました。ここでは、降伏後の塑性を考慮するために大変形オプションが適用されました。さらに、コンタクト要素の接触面では弾性クーロン摩擦が適用され、接触剛性として10,000psi、摩擦係数として0.041が用いられました。

GBチューブラ社は、現物と同様の径とフィレットを持つようにネジをモデル化しました。コネクションのネジが鋭角なコーナーを持つようにモデル化することが日常的に行われています。このように、ネジにおける微細なフィレットを無視することで解析時間をかなりスピードアップすることができます。この方法はコネクションの大まかな構造的評価には適しているでしょう。しかし、このようなモデリングでは実際の性能に多大な影響を及ぼすだろう重要な微細構造の多くを見逃すことになることをGBチューブラ社での調査検討は示しています。

良好な結果を得るためにはメッシュにおける要素サイズも非常に重要ですが、ANSYSにおいてはエンジニアは非常に詳細なメッシュを適用することができます。GBチューブラ社が用いた二次元有限要素モデルは、ソリッド要素が16,759個、コンタクト要素が5,838個というモデル規模であり、総自由度数は24,020というものでした。

19荷重ステップが設定されましたが、15番目の荷重ステップを過ぎた時点での破壊が生ずるという解析結果が得られ、この結果は実現象に近いものでした。


図2.実証試験のためにカップリングに装着されたセンサ

図3.破壊後のカップリング。鋼材のクラックや引き裂きはANSYSにより予測した箇所に生じている。

本文はANSYS Solution Volume 4, Number 1 に掲載されております "Web Site Streamlines Analysis of CAR PARTS"(by Joe Saxon and Chip Beaulieu, AvinMeritor Light Vehicle Simulation and Analysis)を転載したものです。

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