航空宇宙電子部品の冷却問題へのFLOTRANの適用

プロトタイプ製作前の段階で精巧な電子機器における熱的挙動をCFDツールにより明らかにすることができます。

航空宇宙分野での応用のための最新電子機器の設計は重量と環境に関する厳しい制約に耐えねばなりません。同時に、これら機器の電力として常に高いものが要請され、浪費される発熱量も増加する結果となります。典型的に、これらの電子機器は広範囲に変動する周辺温度において機能し過酷な環境条件に耐えねばなりません。しばしば、収納容器の開口部や他の発熱源から保護するために、これらは密閉されていて摂氏100度以上では使用されないように図られています。米空軍の統計によれば、電子部品の破壊原因の50パーセント以上が熱関連の現象によってもたらされます。よって、高い信頼性を確保するためには健全な熱設計が不可欠なのです。

長年、熱設計指針からの保守的かつ完全ではない理論式に基づく経験的方法を主な拠り所として熱設計が行われていました。実際にプロトタイプが作成されテストが行われ、設計の良し悪しはしばしばエンジニアの経験レベルに依存していました。時間と経費による制約によって、テストに用いるプロトタイプの数は制限されるため、実際の最適な設計が見落とされていました。テストにより予期せぬ問題が明らかになった場合、設計を修正し再びテストを実行せねばならず、設計サイクルを長引かせる結果となります。今日の電子製品市場における厳しい競争から、設計者は最初に決着をつけるために相当なプレッシャーを感じています。代替の設計を迅速に評価し設計サイクル全体をドラマティックに短くするような、より良いアプローチが必要とされました。多くの電子デバイスおよびシステムに関して、冷却材の流路は非常に複雑であり、淀みや循環の領域がしばしば結果としての流れのパターンを特徴付けます。従来の手法によって伝熱効率を定量化することは実質的に不可能になってきました。しかし、今日のコンピュータにおけるパフォーマンスとキャパシティの進歩によって数値流体力学(CFD;Computational Fluid Dynamics)シミュレーションツールは電子製品の熱設計手法に大きな変革をもたらしました。CFDは、実際にプロトタイプを作成する前に、設計レンジにおける流速、圧力および温度に関する広範囲の情報をもたらします。妥当な時間と経費の範囲内で熱設計エンジニアが現実の流れの問題を解くことが可能になったのです。

CFDボックスの内部

一般の流れ挙動を数学的に記述する方程式は、質量の保存(連続)、運動量の保存およびエネルギーの保存に関する式から構成されます。ナビエ・ストークス(N-S)方程式は、ニュートン流体の粘性流れのための運動方程式の特殊形です。この非線形、二次の偏微分方程式は粘性流れに関する理論やCFDの数学的な基礎を形成しています。流れの問題に対して“正確な”解を解析的に導き出すことは流れの変数(流速成分、圧力および温度)を流れの領域全体に渡って連続に記述することに帰着します。しかし、流れの方程式は非線形性が高いため、一握りの理想的な場合に関してだけ完全形の解が存在します。よって、流れ領域内の離散点で流れ変数の近似値を計算するコンピュータベースの流れシミュレーションモデルにエンジニアは頼らねばなりません。

工学的に問題となる複雑な流れはCFDの数値解法によってのみ解が得られるのです。

CFDコンピュータモデルは着目する幾何学的領域を表現し、この流れ場と呼ばれる領域では、境界における流れの条件が既知であるか仮定されることで詳細な内部流れの特性が求められます。流れ場は、固体壁内での内部流れか物体周辺における外部流れかのいずれかに分けられます。CFDシミュレーションは定常か非定常(過渡)のいずれかになります。これらは、熱伝導、輻射伝熱、乱流、圧縮性、浮力、多成分流れ、非線形材料特性による効果や、さらに多彩な効果を含みます。流れの対称性により、CFDモデルは二次元平面、二次元軸対称あるいは三次元になります。

有限要素法によるCFDでのモデリングは流れ場を離散化、すなわち節点を介して相互接続している要素で構成されるメッシュで空間を分割することを必要とします。一般に、要素形状は、二次元では四辺形か三角形、三次元では六面体、三角柱、四面体あるいはピラミッド形状となります。要素は、要素内における流れ変数の分布を近似するための内挿関数を持ちます。内挿関数としては、微積分が容易な低次の多項式が用いられています。一般に、多項式の次数はひとつの要素を構成する節点数に依存し、内挿関数は節点と要素境界において連続であることが要請されます。一つの要素に関して構成節点での数値が同一ならば要素内で内挿関数は一定値をとります。また、流れ場変数は隣接要素の共有要素面において連続であることが要請されます。


電子機器の水冷に関するシミュレーション。上図は発熱パネルにおける温度分布、
下図は冷却水の流れを表す。実測値と解析値の間で温度の誤差は8パーセント以下。

コンピュータで偏微分方程式を解くことは、この方程式が離散化されているか代数式に変換されている必要があります。支配方程式における偏微分項を擬似的に等価な代数表現で近似するするために数値的離散化の手法が用いられます。CFD有限要素法では、偏微分方程式であるN-S方程式は連立する代数方程式に置き換えられ、マトリックス解法により解かれます。流れ場における個々の要素は各々が離散化空間を表していて、これら離散化空間に関してN-S方程式が解かれます。要素の方程式はマトリックス方程式と呼ばれるもので、これらは連立方程式のためにマトリックス形式に組み立てられます。各要素に関し、これらの式は、流れ場変数の節点での値からなる離散化式の積分形式を表します。個々の要素マトリックス方程式は集められ統合されて、流れ場全体の挙動を表す系全体に関するマトリックス方程式を構成します。これらのアセンブリは、全体系における要素のトポロジカルな配置をフォローします。

CFDの問題を解く際、一般的に反復解法が適用されます。反復解法は、真の解に対する初期近似値を用いて開始され、収束計算を繰り返し近似値を解へ導きます。連続する2つの反復の間での変化が指定トレランスよりも小さくなった時点で収束条件が満たされます。流れ場変数マトリックスの各々に対して個別の解法スキームが用いられます。各方程式においては独立変数はひとつであり、他の変数は既知であるとの仮定がなされます。ソリューションにおいて、シングルイタレーションは1つの独立変数に着目して系全体の方程式を解くループを、グロ−バルイタレーションはすべての独立変数に関するループを意味します。過渡解析の場合、グロ−バルイタレーションの外側に時間積分のためのタイムステップループが存在します。グロ−バルイタレーションが終了すれば、流れ場内部の流体要素に徐々に境界条件の影響が及びます。ソリューション収束モニターには、連続するグロ−バルイタレーションの間での各変数の(流れ場全体で平均化された)変化量が規格化された値で表示されます。各変数に関して出力される、平均値、最小値および最大値の履歴も収束性を判断する一助となります。

有限要素CFDモデルは流れ場変数の節点における値を求めるために個々の要素の内部での支配方程式(N-S方程式)をまとめて解いています。節点における流れ場変数が求まれば、これは要素内挿関数と共に(要素の集合体である)モデル全体に渡る流れ場の挙動を決定します。ANSYS/FLOTRANソフトウェアは、有限要素法を用いて粘性流れに関するナビエ・スト−クス方程式を解きます。流体領域において、質量、運動量およびエネルギーの保存式が、固体領域においてはエネルギーの保存式が解かれます。


航空機搭載電子機器の熱解析冷却効果を保つ

冷却効果を保つ

電子製品の冷却効果は構造と周辺流体との界面における対流熱伝達率の大きさに依存します。“対流”という用語は、界面と界面周辺を流れる流体との間で温度差がある場合に生ずる、これらの間でのエネルギーの移動を意味します。拡散のメカニズムもエネルギーの移動に寄与しますが、支配的なのは界面周辺の雰囲気の流れなのです。熱設計エンジニアの間での長きに渡る慣例として、対流熱伝達は有効熱伝達係数を用いて表現されます。局所的熱伝達係数は、局所的な表面温度とその近傍の雰囲気温度との温度差に対するその表面における熱流束の比として表されます。CFDでのモデリングにおける観点から、局所的熱伝達係数を正確に予測することは、表面近傍における流れの速度勾配が正確に求められる場合に限られるため、モデル中のすべての壁境界近傍において、(壁面に近いほどメッシュが細かくなるような)かなりグラデーションの強いメッシュを必要とします。


電子機器の放熱板における温度分布

対流熱伝達は壁面に沿って発達する境界層によって現れますから、熱伝達は壁面形状、流れ条件、流体物性を含むファクターに依存します。特に速度境界層は速度勾配とせん断応力とによって特徴付けられますが、温度勾配と伝熱は温度境界層を特徴付けます。壁面摩擦と対流熱伝達は境界層での流れが層流であるか乱流であるかに強く依存します。層流境界層では流れの挙動は全く整然としており、流線を特定することができます。逆に、乱流境界層では流れの挙動は非常に不規則であり、運動量、エネルギーの伝達を助長し、よって壁面摩擦を増加し結果として対流熱伝達を助長する、流れの変動により特徴付けられます。乱流においては、メインの流れに渦と呼ばれる小規模な回転挙動を重ねあわせたような流れ挙動が現れます。


航空機搭載電子機器の筐体における強制空冷のシミュレーション

乱流における渦は広範囲の大きさあるいは長さを持ち、それは上は流れ場の代表的寸法から下は粘性拡散メカニズムの範囲となります。渦は、一つまたは二つの振動周期で絶えず凝集したり崩壊したりし、小さな時間スケールを有します。実際の多くの流れの問題に対して、現在のコンピュータは、3次元過渡のN-S方程式を重要なスケールの乱流のすべてを考慮して解くために十分なパフォーマンスを備えてはいません。今日の商用CFDソフトウェアでは、乱流そのものはダイレクトに計算されず、統計的手法を用いて平均流れにおける効果の平均がモデル化されます。この手法では、乱流挙動を瞬間量ではなく時間平均量の項で記述します。乱流を数学的項で記述するために、乱流は便宜的に平均流と乱れあるいは乱流挙動に分けられます。流れ場変数の各々が平均成分と乱流成分により構成されることになります。乱流成分は平均からの偏差であり、その時間平均は零となります。乱流の流れ場変数が支配方程式に組み込まれ、方程式は時間平均がなされ乱流のためのレイノルズ平均方程式となります。これらの方程式は、質量、運動量およびエネルギーに関する保存の時間平均を記述します。実際の乱流において現れる瞬時のさまざまなスケ−ルの代わりに乱流の平均のスケールが代入されます。


プリント基板からなる電子部品における強制対流を伴う熱解析

レイノルズ平均N-S方程式(RANS方程式)の成分方程式の各々は平均流速に加え(変動流速の相関として)変動流速の平均値の積の項を三つ含みます。これら相関の項は、トータルで9つとなり変動流速による運動量の輸送を意味します。これらは、数学的に応力の効果をもつためにレイノルズ応力と呼ばれています。RANS方程式を解くためには、これらの相関のための関係式が必要となります。乱流モデルの役割は、統計的手法と実証データを用いてレイノルズ応力と平均流とを関連付けることにあります。


通信室電子装置の冷却で用いられるファンモデル

k-ε乱流モデルを用いれば、経験的な定数や関数を補正することなく、壁面近傍を含めせん断流れを予測できます。その前提条件は、乱流が分子拡散のごとく振る舞い、乱流によって生ずる運動量の輸送が局所的に追加される粘性によってモデル化されていることです。この追加粘性は乱流渦粘性と呼ばれています。乱流渦粘性の概念は層流における分子粘性と同様の方法でレイノルズ応力の項を平均流のひずみ速度と関連付けることにあります。渦粘性は物性値ではなく、乱流の挙動を統計的な量として特徴付けるための存在です。

k-ε乱流モデルでは、スカラー量としての渦粘性が乱流の運動エネルギーkとその単位時間当たりの散逸量εのための追加の輸送方程式を解くことで得られます。スカラー量としての渦粘性を用いることは乱流がすべて局所的に等方性を持つことを仮定しています。

数値解法によって乱流境界層を適切に解くためには壁面近傍でかなり詳細なメッシュが必要となります。k-ε乱流モデルは、境界層と完全な乱流領域とを関連付けるために壁面関数(wall function)を用いています。壁面関数では、壁面に非常に近い領域では壁条件を、かなり離れた領域では対数則を用いて流速分布およびせん断応力を決定します。一様なせん断応力が現れるような場合、壁面関数は流速に関する対数分布を再現し、エネルギーに関する発生と散逸は釣り合います。

本文はANSYS Solution Volume 4, Number 2 に掲載されております "FLOTRAN Chills Out Hot Aerospace Electronics"(Mark Troscinski (ANSYS,Inc)、Jiang Guangnan, Zhang Minyi (ANSYS/China))を転載したものです。

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