起爆装置の構造・振動・熱解析

Ensign-Bickford Company

危険な爆発物の設計もFEAで難なく

コネティカット州SimsburyにあるEnsign-Bickford社は、1836年から今日にいたるまで火薬および起爆装置の大手供給業社として業界屈指の地位を築き上げてきました。同社は鉱山用、建設用、および石油探査用の製品の製造に関して数世代に及ぶ専門知識・技術を持っており、30年以上前から軍需品システムおよび航空宇宙用アプリケーションにまで事業を拡大しています。

最近のプロジェクトの一つに、大型ブースター・ロケットの燃料タンクに穴を開けるための自爆用装置の設計製作がありました。これは、打上げ中に一つ間違うと、ロケットの破壊につながりかねないものでした。

技術者たちは、この装置が強い飛行振動および大きな温度変化に耐えられることを確認しなければなりません。また、ユニットを組み立てる安全な方法を決定する必要があります。これは、ステンレス鋼製カバーをハウジングに結合する2,600°F(1427℃)のレーザー溶接継ぎ目から1/4インチ (6.35mm) しか離れていないところに発火温度400°F(204℃)の強力なC4火薬が置かれていることを考えると、相当に際どい作業であるといえます。

ANSYS社のFEM解析ソフトウェアを用いて、技術者たちは組み立て装置の構造特性および振動特性を調査しました。その結果、当初計画していた0.03インチ(0.76mm)の溶接深さでは十分な強度が得られないことが分かりました。さらに、同ソフトウェアによる伝熱解析の結果から、火薬を過熱することなく、必要な0.06インチ (1.52mm) の溶接を安全に行えるということが分かりました。後の熱電対テストでもこれが証明されています。

認定試験で自爆用装置の製造工程および運用中動作が1回で検証されたため、Ensign-Bickford社は設計工程をたった4か月で、それも予算の範囲内で完了させることができました。

設計解析技術部長Mike Alessio氏は次のように述べています。「ANSYSを用いたことにより、コンピューター上で設計を改良できました。また、数回にわたる試作実験によって検証する代わりに、1回のハードウェア試験で妥当性を検査することができました。そのため、実験は2/3にまで削減され、かなりの時間と費用の節約が実現できたのです。この分野では、各実験に別々の試作品を使わなければなりません。製品の働きが爆発ですから、実験を行っても働きを見る機会は1回しかないのです。」

自爆用装置プロジェクト

この精巧なシステムの設計と製造は、Ensign-Bickford社が初期の時代に生産した爆発装置とは大違いです。今日の製品は、詳細な設計によって厳密な公差と厳しい締め切りが守られることを必要とし、当て推量や試行錯誤の余地はありません。

自爆用装置は、外径8インチ (20.3cm) 厚さ1インチ (2.54cm) のパンケーキ形の組立品です。2枚の鉛板の間に挟まれた約1.25ポンド (567g) のC4火薬が、ステンレス鋼製の円筒状ハウジング周辺にレーザー溶接されたカバーによって、同ハウジング内に密閉されています。ハウジングには3本のFCDC(柔軟密閉型導爆線)が接続されており、飛行管制エレクトロニクスから信号を受信すると起爆します。

この装置は1993年に導入した当時Hewlett-Packard社、現CoCreate社 の3次元CAD−Solid Designerによって設計され、FEMプログラムANSYSを使用して解析が行われました。これらのソフトウェアは、HP 720ワークステーションのネットワーク環境上で稼動が始まりました。

「構造応力、熱伝達、時刻歴の荷重、および動的応答に関する一連の問題を扱えるので、ANSYSを使用しています。」プロジェクト・エンジニアーJim Fritz氏は述べます。「ある解析の出力を別の解析の入力として使用する連成解析の機能がサポートされているのが特に便利です。我々は、伝熱解析の結果を使用して構造解析を行う際に、この連成機能を頻繁に使います。」

Fritz氏は、「時間と費用のかかる試作実験を避けて、開発中に組み立て部品を検証し最適化するという点で、設計と解析をコンカレントに行っているといえます。私達にとって解析は特別の作業ではなく、設計工程と一体をなしています。設計中に変更をリアルタイムで繰り返し行い、設計が完了するまで設計図は作成しません。」

最初の設計ジオメトリーは、Solid DesignerからIGESファイルを介してANSYSに渡されていました。複雑な変更の場合には、Solid Designerモデルを変更して別のファイルを送る必要がありました。そこで時間を節約するために、小さな設計変更はANSYSモデルに直接加え、満足できるパフォーマンスが得られるまで再度解析を行い、最適化したジオメトリーをCADに反映するようにしました。

Fritz氏は次のように述べています。「ANSYSでモデルを作成しジオメトリーを変更するのは単純明快でした。そのため、簡単な変更はたいてい解析システム上で直接行うことができました。」

専任の解析技術者として、Fritz氏は当プロジェクトおよび他のプロジェクトにおいて、ほとんど専ら有限要素法解析を担当しました。他の2人の技術者は、CADと解析に均等に時間を割きました。専任の解析技術者は、様々な問題の発生する広範な用途にその技術を適用させることができると、Fritz氏は述べています。一種類の製品を専門に扱う技術者は、設計の詳細を熟知しているため、設計と解析を扱うのに最も適しているといえるかもしれません。

「このようなプログラムを学ぶことは、誰にとっても問題ではありませんでした」とFritz氏は述べます。「将来はそうなるかもしれませんが、現状ではプラグ・アンド・プレイという訳ではありません。しかし、このようなハイエンド解析パッケージとしてはANSYSは最も使いやすいプログラムです。」

溶接問題の発見

自爆用装置プロジェクトにおいて、伝熱解析、構造解析、固有振動モード解析、および動的応答解析を含めた、いくつかの異なるタイプの有限要素法解析が行われました。同じ基本ANSYSジオメトリーを用いて、目下の問題にしたがって領域ごとにメッシュ密度を変えながら、すべての解析を行いました。

プロジェクトをとおして、主も問題とされる領域の1つは、カバーをハウジングに取り付け爆発物を密閉しているレーザー溶接継ぎ目の強度でした。プロジェクトの提案段階で行った最初の伝熱解析では、爆発物を限界温度まで加熱することなしに深さ0.03インチ (0.76mm) の溶接を安全に行えることが示されました。しかし、その後行った構造解析の結果、高層大気中で外部圧力がゼロになった場合に14.7psiあるハウジング内の圧力によってカバーが破裂したり歪んだりする危険性、または衝撃や振動によって溶接部が損傷する危険性について懸念が持ちあがりました。

異なる溶接深さについて繰り返し解析を行った結果、0.06インチ (1.52mm)の深さで十分な強度が得られることが実証され、その後の伝熱解析の結果、爆発物を過熱することなくこのような深い溶接を行えることが証明されました。限界温度400°F(204℃)の爆発物から0.25インチ (6.35mm) 離れたハウジングを過熱することなしに、ステンレス鋼をレーザー溶接シームに沿って2,600°F(1427℃)で溶融できることが分かりました。

プロジェクトのために指定されている-65〜165°F(-54〜74℃)の温度範囲内で、温度およびその変化に伴う様々な材料の膨張と収縮を研究する目的でも、ANSYSの伝熱解析機能を使用しました。設計者たちは解析を用いて、組み立て装置を構成するC4爆発物、鉛、およびステンレス鋼の熱膨脹率の差によって構成部品に過度な応力がかからないことを検証しました。

開発の他の段階で、組み立ての共振周波数およびモード形状(つまり、固有周波数で振動した場合に組み立てが受ける曲げ、ひねり、その他の変形の状況)を求めるために、モーダル解析が行われました。この解析により、設計者たちは、構造に生ずる応力を求め、激しい振動下における個々の構成部品の挙動を観察しました。

モーダル解析で得られた情報は、打上時と飛行時の振動をシミュレートするために入力されたランダムな振動(スペクトル密度と周波数)に対する組立品の応答を求めるために、動的荷重解析にも使用されました。この解析において、設計者たちは広い周波数範囲について組立品の挙動を検証しました.その結果、10Hz以下の周波数は静的荷重として働き、それ以上の周波数はモーダル振動を駆動する傾向があることが分かりました。

「これだけの反復計算をもし試作実験に頼っていたら、開発と認定のサイクルには、かなり余分な時間と費用がかかっていたはずです」とFritz氏は説明します。「ANSYSの場合、設計の最適化に必要なすべてのツールが1つのパッケージに入っており、実機を作成する前にそれを済ますことができました。認定試験に不合格なものがあると、開発時間が数週間延び、プロジェクトのコストがかなり増えることになります。明らかにANSYSの広範な解析機能のおかげで、設計を予算の範囲内で時間どおりに完了することができました。」

広範囲にまたがる問題

Jim Fritz氏によれば、ロケット自爆用装置プロジェクトで遭遇したような広範囲にまたがる問題は、Ensign-Bickfordではそれほど珍しいものではありません。同氏は様々な製品の開発にANSYSを用いることの効用について述べています。そのような製品としては、地下数千フィートにあるガス井や油井において25,000psiの外部圧力に耐えなければならない下げ孔雷管、建築現場で厳しい熱や衝撃に耐えなければならない電子雷管、およびアラスカの北部油田から南アメリカの暑い路傍にいたる現場の広い温度範囲において一貫して動作しなければならないプラスチック爆破クリップがあります。

最もやりがいのあるプロジェクトは、爆発自体のシミュレーションならびにそれに伴う圧力および周りの構造に対する影響に関するものです。同社は、ロケットの段の切離しや航空機の脱出口パネルの吹飛ばしのような用途で爆発の衝撃によって壊れるように作られた装置を製造しています。EZ-DETRのような他の製品は、実際に榴散弾を含み、複数の爆発を一斉に、または意図的に遅らせて引き起こす爆発配管とでも言うべき衝撃波管を通して力を伝達するように設計されています。

FEAの恩恵

設計解析技術部長Mike Alessio氏は、解析ツールの利点をいくつかのレベルで考えています。

「ANSYSは、緊急な設計問題を、実機の試作実験の必要なしに迅速に解決します。したがって製品開発の時間とコストが大幅に削減されます。もっと一般的に言えば、ANSYSのおかげで、弊社の設計者たちは、当て推量で解を求めたり、行き当たりばったりの実験を行ったりする代わりに、製品の挙動に関するより深い洞察を得ることができます。」

Alessio氏によれば、このような認識は製品設計業務を改善するだけでなく、顧客からの信頼増加につながります。「弊社はこのように徹底的なコンピューター解析を行うことができるので、自社製品のパフォーマンスについて業界一よく知っているとして顧客から尊敬を受けています。新しい受注を求めて競争している矢先、この種の評判は大きな意味を持ちます。」

Alessio氏は、Ensign-Bickford社における業務と品目の拡大も、解析の恩恵であると考えています。「昔は、単に指定どおりに部品を製造するだけでした。今日では、弊社はハイ・レベルの供給業者であり、弊社の開発技術を信頼する顧客のために高度な爆発装置を詳細に設計しています。弊社はシステム統合事業との連鎖を強めており、ANSYSはその戦略にとって不可欠な部分なのです。」

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