コンプレッサのエンジン設計

Dresser-Rand Company

ANSYSを用いて市場ニーズに応える

Dresser-Rand社は、新型コンプレッサに対する要求に迅速に応えるために、有限要素法解析ソフトウェアANSYSを使用しました。

同社の新しいバルブ・イン・ピストン (VIP) コンプレッサは、市場に出るなり、直ちに成功を収めました。VIP設計は、従来のコンプレッサ設計を一新する、根本的に全く異なるものでした。吸入バルブと吐出しバルブがシリンダーヘッドに配置されている従来のものとは異なり、VIPコンプレッサではバルブが直接ピストンに組み込まれています。この可動部の少ない簡略化された設計により、運転費が安く保守の容易なコンプレッサを製造することができたのです。

当初Dresser-Rand社は、単一機種のVIPコンプレッサしか発売しませんでしたが、それが非常に人気を博したために、同社はできるだけ早期にさらに10機種(定格圧力の異なる)を発売しようとしました。通常、新しい製品を市場に出す前に設計変更を実際に試験するため、この過程は長期に渡るはずでした。VIP第一機種の試作品作成と実験の実施には6か月を要していたのです。そしてさらに10機種の試作実験を行っていたのでは、たとえ多くの作業を並行して行ったとしても、せっかくの製品投入好機を逸することになります。

コンプレッサの新機種を商品化するまでに要する時間を短縮するために、Dresser-Rand社の技術者たちは、ANSYSを用いて設計変更を評価し、10機種のうち2機種に限って実機試験を実施することにしました。同社のエンジン・プロセス・コンプレッサー事業部(ニューヨーク州Painted Post)の上級機械技師Ajay Garg氏は、実機試験のみであれば2〜3年かかったであろう新しい10機種の評価を6か月で完了できたのは、このアプローチのおかげであると考えています。

Garg氏は次のように述べています。「VIPコンプレッサの設計に有限要素法解析 (FEA) を使用し、解析結果と実機試験との相関が見出されたので、オリジナルの設計に関する変更を有限要素法のみで評価することに我々は確信を持ちました。設計モデルを変更し解析を実行し、修正した設計が我々の疲労寿命の評価基準を満たしているか否かを判定することまでのすべての工程が一日で可能となりました。」1日で完了できた秘訣は、3次元解析の後に2次元による解析を有効活用したことによります。

最初から最後までFEA(有限要素法解析)

VIPコンプレッサを設計したDresser-Rand社のエンジン・プロセス・コンプレッサ事業部は、ガス供給やオイル精製などの分野で用いられる、大型低速往復コンプレッサ、低速一体式エンジン、および高速往復コンプレッサを製造しています。

ここ数年、ANSYSは同事業部における新製品開発工程の一部となっており、ANSYSを、構造解析、伝熱解析、および振動解析に使用しています。解析結果は、新しいコンプレッサおよびエンジンの設計を評価するために、設計サイクルの初期に使用され、それ以降も設計が変更された場合、変更の効果を研究するためにも用いられています。

Garg氏はFEAの使用を次のように述べています。「私たちはFEAを、まず機械が目的の用途どおりに作動することを確認するために使用します。解析結果は、その後の機械の開発や改良の基礎になります。企画部門からは、作動条件を1000psiから1500psiへ上げるなどの要求を出されるかもしれませんし、あるいは1/8インチのフィレットを1/16インチのフィレットに変更するよう求めるかもしれません。FEAの解析結果と実機試験の結果との相関が取れているために、オリジナルから派生する各種の設計変更ごとに実機試験を行う必要はないのです。これはまた、開発周期の短縮およびコストの削減にもつながります。」

エンジニアは、設計がCADモデルとして定義される前に初期の有限要素法解析を入念に行います。「このような解析は、概念設計が特定の目標に合致する、すなわち指定の作動条件に耐えうることの確証を得るのが目的です。」とGarg氏は述べます。設計周期で解析を行う場合には、ANSYSのパラメトリック・モデリング機能が解析モデルの定義に用いられます。この機能によって、解析モデルの修正が容易になり、設計変更にすばやく対処することが可能となります。例えば感度解析の過程はパラメータによって手っ取り早く実施できます。壁の肉厚を変更する場合などのように、モデルを修正する際、ユーザーは新たに入力ファイルの全てを作り直す必要がないからです。

Dresser-Rand社では、通常新製品ごとに、一連の実機試験が行われます。ただし、必要なコストと時間内におさめるように、実機試験の使用は最終設計の評価に限られています。実機試験のもうひとつの欠点は、ひずみゲージを装着不可能な部分で応力レベルをチェックすることが困難か不可能であることです。同社の解決策は、可能なかぎりできるだけ完全に試作品を作成し、測定不可能な箇所における応力を知るためにFEAを用いているのです。「このようにすれば、不具合箇所や潜んでいるかもしれない問題点をエンジニアが見逃さないことが保証されるのです。」とGarg氏は述べます。

2次元解析か、3次元解析か

当初シリンダーの寸法は、直径は3.5インチ (89cmm) から15インチ (3.8cm)の範囲でした。Dresser-Rand社では、様々な圧力および流れの条件に対応したVIPコンプレッサの製品ラインを提供しようとしていたので、様々なシリンダー・サイズをそろえる必要がありました。しかし、シリンダーの寸法を変えるということは、VIP機構のコンポーネントを変えるということを意味します。寸法が変更された場合、変更された量だけ結果がスケール倍されるとは限りません。よって、同社では、ANSYSを用いてシリンダーの全ての寸法パターンに関して、仕様を満足するものであることを確認しました。

技術者たちにとって評価する必要のあったコンポーネントの一つは、ピストンの働きをするスチール製円盤でした。寸法を様々に変えた場合の応力に着目して評価しました。ピストンは、一様な荷重を受ける円盤であり、ドリルであけられた穴とミルド・グルーブ(フライス加工された溝)を持ちます。そして、片持ち梁のように変形します。技術者たちは、最も内側のミルド・グルーブにおける0.03インチ (0.762mm) のフィレットに最大の応力がかかると予想しました。

円盤は実験室試験で決められた繰り返し荷重のもとで検証されました。Garg氏らは、まず穴(ドリル・ホール)と溝(ミルド・グルーブ)も含めた円盤の3D有限要素モデルに対して構造解析を実行しました。この総自由度数46,176の解析モデルを、パラメトリックに形状定義し、六面体要素での分割を行うのに約3週間を要しました。

解析の結果、片持ち梁のように円盤を曲げることにより、穴の部分に圧縮応力が生じ、溝の部分に引っ張り応力が生ずるものでした。この溝における応力は設計における支配的要因として選びましたが、有限要素モデルが溝にフィレットを持たないものであったため、この着目すべき点は特異点となっていました。技術者たちは、穴の表面の圧縮応力を最小化することにより、引っ張り応力を減少させるよう設計を最適化(円盤の厚さを増加)しました。これは別の解析によっても確認され、穴の圧縮応力の低下率 (%) は溝の応力低下に対応するものと想定されました。

できるだけ早く寸法の異なる他の9つの円盤に関する解析を行うために、技術者たちは3次元構造解析を2次元構造解析で置き換える可能性を検討することにしました。「疲労環境と同様に静的条件においては、引っ張り応力のほうが圧縮応力よりも有害です」とGarg氏は説明します。「したがって、ドリルの穴を無視し、ジオメトリーを2次元軸対称有限要素モデルによって表現しました。」

2次元円盤のパラメトリック・モデリングは、非常に迅速に行われました。このモデルは溝を含みますが、解析のための準備は約1時間で済みました。解析に要したCPU時間は2分足らずしか掛かりませんでした。技術者たちは、いくつかの寸法の異なる円盤に関して、2次元解析の結果と実機試験の結果の相関関係を調査しました。彼らは、一部の円盤は信頼性を改善するために設計変更し、2次元解析を繰り返しました。2次元モデルを開発する以前は、信頼性ファクターは不明であり、結果として実機試験のいくつかは失敗でした。最も内側の溝の信頼性ファクターを決定するためには、技術者は実際の応力を知る必要がありました。2次元による解析手法の開発後、彼らはいくつかの寸法に関して信頼性ファクターが1以下になることを発見しました。(信頼性ファクターは1以上、さらに可能であれば2以上になることが望ましい。)彼らは、これに関して、信頼性ファクターが2以上になるように設計変更を行い、これらに関する実機試験は成功しました。このようにして、他の寸法の円盤に関しても2次元有限要素法解析が行われました。Ajay Garg氏は、3次元挙動を2次元で模擬し解析を有効なものとするためには、2次元における修正と補正が決定的であると警告しています。また、技術者は2次元有限要素法解析を解析的及び実験的手法で検証しますが、これらの努力は報われるものです。実機試験の成否は信頼性ファクターと符号します。この相関は、有限要素モデルにおける形状、荷重及び境界条件に関する仮定の検証に役立ちます。

Garg氏によると、「2次元解析によるアプローチを確立した後、VIPコンプレッサの設計と最適化のサイクルを短縮しコストと時間は一桁にも減少しました。」Dresser-Rand社は、全ての用途に対応するシリンダーの大きさを備えた革新的VIPコンプレッサによって、ガスを圧縮するための最も進歩し信頼性の高い方法を顧客に提供できるのです。

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