人工膝関節の接触領域の最適化

Depuy Inc.

FEAで人工膝を最適化

DePuy社は上関節面と下関節面の間の応力を低下させる方法を見出すために、ANSYSを用いました。

整形用品メーカーであるDePuy社(インディアナ州Warsaw)が新しい人工膝関節を開発するにあたり、最も重要な設計目標の1つは、関節の上部と下部の接触域を最適化することでした。同社の思惑は、接触域を増やすことにより関節内の応力を分散させ、最終的には、患者に埋め込んだ場合に長持ちする製品を生産することでした。

過去には主に感圧フィルムを用いて接触を調査していましたが、今度のプロジェクトでは、DePuy社の技術者たちも有限要素法解析(FEA)プログラムANSYS を用いて、関節の上部と下部の相互関係を正確に求めました。解析結果は設計者に送られ、設計者はその情報を用いて関節コンポーネントのソリッド・モデルを修正しました。

解析を行ったDePuy社分析開発技師Paul Tomaszewski氏は次のように述べています。「新しいインプラントのために全部で2つの異なるポリマー、5つの異なるジオメトリー、および多数の屈曲角度を検討しました。FEAでは関節上の応力に関して感圧フィルムより優れた描写が得られただけでなく、フィルム法と異なり試作品の作成も必要ありませんでした。」FEAのおかげで設計の進行中に関節の応力を評価することができたため、DePuy社は同社の以前の型に比べて2倍の接触域を持つ新しい膝インプラントを作成することできました。

移植の困難な膝

今年100周年記念を迎えるDePuy社は、整形インプラントおよび移植用外科用具を製造しています。どんな整形用品メーカーもそうであるように、DePuy社も、おそらく実物のつくりが非常に複雑なため、膝は最も複製の困難な関節であるという見解を示すはずです。

実物にしろ、人造品にしろ、関節は2つの主要なパーツを持っています。大腿に接続する上部と下腿に接続する下部です。関節の上部と下部の間の接触領域は、決して規則的ではありません。「表面が複雑なため、この関節は非常に不調和です」とTomaszewski氏は述べます。「天然の関節には荷重を分散させるために半月板が付いていますが、多くの代用品設計においては、2つの表面はぴったり一致しておらず、接触はまばらです。この意味で、基本的には球窩関節に似ている肩や臀部とは非常に異なります。」

人工膝において、一般に上部はコバルト‐クロム‐モリブデン合金のような金属からできており、下部はUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)のようなポリマー材料からできていて、しばしば金属床に取り付けられています。人工膝を設計する際には、技術者はポリマーと金属コンポーネントの間の接触度を理解する必要があります。関節内に発生する応力、特にポリマー・コンポーネントに発生する応力を評価することも重要です。応力が大きいほど、速く関節が磨耗する可能性があるからです。

効果的な有限要素接触アルゴリズムが得られるようになる前は、上記の情報を得る最良の方法は、試作品を作成し、次に感圧フィルムを用いて接触を評価することでした。関節の試作品に荷重が加えられると、このフィルムは様々な濃淡の赤を表示することにより、接触域の形状および圧力の強さを示します。この方法のひとつの欠点は、試作品の作成が必要であり、それに伴って時間とコストがかかることです。もうひとつの欠点は、ピーク応力が膝の表面下で発生し、その情報が感圧フィルム法では得られないことです。

DePuy社はインプラントの設計パラメーターを評価するために、設計ツールとして、FEAを数年前に使い始めました。同社はいくつかの理由で、ANSYS社の解析プログラムANSYSを使用しています。まず、同社の設計問題は一般に材料と形状の非線形性を伴うために、非線形解析を扱えるFEAパッケージが必要だったことです。またTomaszewski氏が述べるように、「広く用いられ、高い評価を受けている汎用有限要素コードが必要だった」ということも導入の決めてとなりました。

もっと接触域を、より優れた関節を

新しい膝インプラントの設計に際して、目標は、関節の上部(金属側)と下部(ポリマー側)の間の接触を増すような新しい表面を、ポリマー側に作ることでした。DePuy社の系列会社DePuy DuPont Orthopedicsのおかげで、設計技師は、ポリマー表面の形状を変更することに加えて、様々な材料を実験してみることができました。この会社はインプラントの最長寿命を伸ばす新しい材料を見つける目的で、人工関節に使用するポリマーを開発しています。

当プロジェクトの設計者はプロジェクトエンジニアと共同で作業し、プロジェクトエンジニアは、インプラントの要件を決定するために、さらに整形外科医と共同で作業しました。設計が進むにつれて、2つの異なる材料および4つの一般的な形状変更を検討しました。各設計反復 はIntergraph社の I/EMSソリッドモデラーでモデル化しました。そのモデルは、IGESファイル転送の際のデータ欠落を避けI/EMSモデルの表面トポロジー(表面の位相)を維持するために、Intergraph社の有限要素モデラーI/FEMで関節面をメッシュ化し、続いてI/ANSYSトランスレーターを用いて解析モデルをANSYSに転送するという方法を選びました。

このアプローチは関節面を正確に再現しただけでなく、解析の能率も向上させました。Tomaszewski氏は次のように説明しています。「I/FEM メッシュを使ったため、六面体へ押し出すことのできる均一な四辺形要素の割合が高くなりました。これは、マップトメッシュ可能な領域にソリッドを再分割せずに、単一の不規則形状ソリッドのフリーメッシュから得られる四面体要素とは対照的です。」四面体メッシュが13,000の要素を含むのに対して、同氏の作成したI/FEMモデルには約3,000のソリッド要素しか含まれていませんでした。その結果、解析にかかる時間が短くなり、Tomaszewski氏の推定では、この方法により総計で数か月分の解析時間を節約できました。

Tomaszewski氏はANSYS内に材料特性を記述しました。その際、試験データから得られた応力‐ひずみ曲線を入力することによりポリマーの非線形挙動を記述しました。また、解析の能率を改善する目的で接触パラメーターを定義しました。0.10インチ (2.54mm) 離れた点は互いに接触しないものと見なし、できるだけ接触する対の数を減らしました。その後、境界条件を定義し、歩行サイクル中の荷重を加えました(公表されているピーク荷重データを用いて)。ANSYS内に問題を設定するのに約1時間かかりました。Silicon Graphics Indigo R4000ワークステーションを用いて、問題の解析時間は約10時間でした。

解析結果は、関節にかかる応力の形で、全領域の色を用いてグラフ表示されました。これらのイメージは感圧フィルムにおける赤の濃淡より解釈が容易でした。また、試作品作成が不要なため、情報入手が迅速で設計に関する決定に役立ちました。

「解析結果を検討してから、設計に戻り、修正を加えます。」とTomaszewski氏は述べます。「予備的な2D研究も含めて多数の反復を行った後、接触域を前のインプラントの2倍以上に増やしました。それでいて、私達や外科医達の望んでいた応答と感触は維持しました」と同氏は付け加えます。「初期の反復には試作品を使用しませんでした。私たちの推定では、FEAの使用により当製品の全開発周期は約20%短縮しました。」

この新しい膝インプラントは、AMK Congruency PSと呼ばれ、現在FDA(食品医薬局)の審査を受けています。「FDAが要求する限り、試作品による実験は続けます。試作実験は開発にあたって重要な評価ツールとなります。」とTomaszewski氏は述べます。「しかし、ANSYSを用いることにより、その試作実験の数をかなり減らすことに成功したのです。」

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