防波堤の解析

ANSYS を土木建築業界向けにカスタマイズしたCivilFEM を利用した解析事例


Malaga港(スペイン)において施工中の防波堤

今回は、スペインにおけるANSYS代理店であるIngeciber社が、ANSYSによる拡張機能を活用し、マドリード工科大学と共同開発したカスタマイゼーションツールCivilFEMをご紹介いたします。このCivilFEMは、土木建築業界のエンジニアにもANSYSを手軽に利用していただくためのツールで、CivilFEMでは、使用可能なコマンドが増やされているだけでなくグラフィックユーザーインターフェース(GUI)の機能とスクリーンが強化されており、これらのすべてが土木工学および建築工学に関するものとなっています。

ここでは、CivilFEMとANSYSを用いての解析例として、スペインのMalaga港およびCartagena港を荒波から守る防波堤に関する解析事例をご紹介いたします。荒海から港を守るための防波堤は港をほぼ取り囲み海底から海面までの高さの大きな構造物です。古典的解析手法から得られた結果と実験室における防波堤の縮小モデルに関して得られた実験値とが異なるという報告をIngeciber社は受けました。問題解決のための第3のアプローチはシミュレーションソフトウェアによるものであり、同社はCivilFEMとANSYSにより対処しました。Malaga港とCartagena港での防波堤の施工費はそれぞれ4千2百万ユーロと1億6千6百万ユーロです。そもそも、港を守る必要があるような厳しい環境下で防波堤を施工するのですから、エンジニアは施工過程におけるすべての事柄に配慮し、それがプロジェクトの今後にどのような影響をもたらすかに注意を払う必要があります。例えば、セメントが注入された後に海水を押しとどめる役割を果たす構造物であるケーソン、コンクリート製ケーソンを支持する構造物であるバンケット、さらに地盤に関してさまざまな問題を考慮しなければなりません。すなわち、次の事柄を考慮する必要があるのです。

  • 波を受ける際のコンクリート製ケーソンの動的挙動が(ケーソン、バンケットおよび地盤からなる)全体系にどのような影響を及ぼすかの評価
  • ケーソンによってバンケットおよび地盤へ伝達される応力分布の計算
  • ケーソンのショルダーオフセットが防波堤の安定性に及ぼす影響
  • コンクリート製ケーソンの構造解析を実施する際、異なる荷重の組み合わせを考慮することで、有用性および極限状態を解析する
  • コンクリート製ケーソンの鉄筋による補強設計

ケーソンとバンケットの解析

防波堤に用いられるケーソンは、幅22m、高さ23mであり、ショルダーを含めた場合の高さは30mにもなります。ケーソンの底面にあり、10mの層をなす砂土の上に配置されるバンケットはトータルで幅28mの構造物です。砂土層の最下層に位置する節点には垂直および水平方向に零の強制変位(拘束)が与えられ、さらにこの層の節点すべてに水平方向に零の強制変位(拘束)が与えられました。異なる波および構造変更(オフセットの有無)を扱うために四つのシナリオが選ばれました。

ケースA:ショルダーのオフセット無し、Tp=9sかつHi=7.92mの波
ケースB:ショルダーのオフセット無し、Tp=13sかつHi=7.21mの波
ケースC:ショルダーのオフセット有り、Tp=9sかつHi=7.83mの波
ケースD:ショルダーのオフセット有り、Tp=13sかつHi=6.94mの波

これらの各ケースに対して、非線形の静解析および動解析が実施されました。解析過程で負荷される荷重には永続的荷重が含まれます。構造全体に死荷重が、ケーソンには水圧が負荷されました。また、波の挙動は実験結果から決定されました。

4つのシナリオによる結果を表1に示します。地盤に発生する最大応力(Kp/cm2)が静解析と動解析とで比較されています。ケーソンによって地盤へ伝達される応力は三角形状に分布し先端部分において10Kp/cm2をはるかに越えることはないだろうというものであり、これはケースB、CおよびDに関して良い近似が成り立っていると考えられました。しかしながら、ケースAは良い近似とは思えません。応力は15Kp/cm2にも達しバンケットにおいて局所的に塑性化が生じていました。バンケット内部で最初の数メートルにわたって傾斜状の応力分布が生じた後に急激に垂直方向への応力分布が増加していました。

動解析


表1

表1に示すように、静解析と動解析の差は顕著であり、ケースAとケースCのように最大の波がまさに防波堤に押し寄せる際には動解析を実施することが適切でしょう。さらに、防波堤のショルダーがオフセットされていない場合、防波堤が砕けた波を受ける際における地盤の応答は減少するため、動解析の実施が適切でしょう。ケースAの場合、防波堤の浮き上がりは、ほぼ3サイクルに換算される大きな振動からの動的効果に起因し、この現象の後に静解析におけるものと同様の応答を伴うと解釈されます。

図2.ケーソンからバンケットへ伝達される垂直成分応力(Kp/cm) 図3.波による圧力分布とさまざまなタイプの波に関する理論解を求める手法
   
図4.A )材料の非線形挙動をモデル化するためのCivilFEM 応力- ひずみダイヤグラム 図4.B )CivilFEM での材料の力学的特性の定義
   
図4.C )鉄筋コンクリートの箱型断面とその力学的特性のリスト(曲げ、せん断およびねじり) 図4.D )断面内部での応力分布
   
図5.ケーソンの各コンポーネントでの応力分布

ケースC の場合、ショルダーのオフセットによって砕けた波からの衝撃は減少しています。一方、ケースBとDのように砕けていない波に対して動解析はさほど適切ではありません。これらの結果は防波堤のショルダーに集中する波による圧力の分布と整合しています。このことは、砕けた波に対してはショルダーのオフセットが鍵を握っていることを意味します。
他に得られた結論は、バンケットと波との間に共鳴はなく、局所的変位はケーソンの浮き上がり面に支配されるということでした。

非線形静的解析

動的解析に加え非線形静的解析も実施されました。エンジニアはCivilFEMを用いて材料の非線形特性を定義し、異なる荷重を組み合わせてケーソン、ショルダーおよびビームの補強を計算しました。これらのコンポーネントのために二次元と三次元のモデルが作成されました。解析においては有用性と極限荷重状態が考慮されました。これらコンポーネントでの応力分布は図5に示す通りです。

解析結果

防波堤のモデリングはメッシュ分割の密度に非常に敏感であり、感度解析の結果、一次要素を用いると容認できない誤差が生ずるため、二次要素を用いることが不可欠であることが判明しました。個々のコンポーネントに必要とされる強度を達成するために必要十分な補強策が、スペインにおけるコンクリート規格(EH-91)に基づき見出されました。しかしながら、これより少ない補強を用いるならば、コンクリートの緩和、クリープ、施工過程の研究、他の現象を解析において考慮しなければならないでしょう。

本文はANSYSSolutionVolume2Number2に掲載されておりますIngeciber,S.A.のJuanCarlosLancha氏等の執筆による記事"AnalyzingBreakwaters"の抄録となっております。

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