自転車用ヘルメットの安全性評価

頭部への衝撃をシミュレーションすることによりヘルメットのエネルギー吸収を予測

衝撃下における製品や部品のパフォーマンスを調べることは、自動車や航空宇宙はもとより消費者製品や玩具に至る様々な産業分野において重要なことです。日常生活で遭遇する難関に対する耐久性を確かめるために、完成品の試験には多大な努力が費やされています。ここでは、製品開発の効率を改善するためにバーチャルプロトタイプが如何に貢献するかを紹介します。保護用スポーツ器具は自転車やローラブレードのような娯楽用途においても広まっています。軽量かつ快適でありながら着用者を怪我から保護する能力が、設計において最も重要な事柄となります。その検討のために、自転車に乗っている子供が時速40kmで頭か ら電信柱へ衝突した場合を、ANSYS/LS-DYNAを利用してシミュレーションした例をご紹介します。子供用の自転車ヘルメットのみが頭と剛なる電信柱との間での緩衝の役目を果たします。ヘルメット、頭蓋骨および剛体仮定の電信柱のメッシュが図1のように作成されました。自転車用ヘルメットは(内部に空洞をもつ)エネルギー吸収の良い細胞構造のフォーム材をプラスチック性の皮膜でカバーしたものです。フォーム材の材料特性としては、玩具店やデパートで 販売されている典型的な中価格のヘルメットに用いられているものの材料試験から得られた特性を採用しました。実際にはDatapointLabs社が材料試験を行い、ANSYSへ直接入力できるように材料モデルを準備しています。解析者は、このデータを用い、シミュレーションに必要となる幾何形状モデルと環境を用意し陽解法動解析を実施しました。材料試験は次のような手順で行われています。まず、フォーム材から棒状の試験片を切り出します。この試験片を圧縮盤の間に据え付け、これを落錘型衝撃試験装置を用いて2m/secから4m/secの衝突速度で圧縮しました。結果として得られる荷重変化曲線は荷重−変位曲線に変換され、これから応力−ひずみデータが算出されました。従来の材料試験機によっても圧縮データは整備されました。

材料データは、この材料の非線形性の高い応力−ひずみ関係に適合することが可能な圧搾性発泡材モデルとしてフィッティングされました。典型的な圧搾性発泡材の挙動を図2に示します。微小である弾性領域に続き、広い領域である圧搾領域が在り、圧搾限界に近くなると剛性が指数関数的に増加します。粘弾性材料モ デルが頭蓋骨の応答をシミュレーションするために用いられました。モデル化されていない脳の質量を考慮するために、その密度は3倍としました。また電信柱は、ヘルメットや頭部に比べ遥かに剛性が高いため、剛体材料としています。
頭蓋骨とヘルメット、ヘルメットと電信柱、および頭蓋骨と電信柱の間に、節点と面の標準接触(NTS)を用いて接触が定義され、さらに、静摩擦係数として0.2、動摩擦係数として0.1、粘性減衰係数として10が用いられました。簡略化のために、すべてのケースにこれらの数値データを用いることになりました。荷重としては、電信柱の方向(+Z方向)に時速40km、下向き(−Y方向)に時速9.6Kmの初速度を頭蓋骨とヘルメットに与えています。
このシミュレーションを実行するには、数週間という計算時間が懸念されましたが、8CPUを備えたSGI社製マシンを採用することで、実際には2日で計算を終えることができました。結果は、衝撃エネルギーの大部分の量をヘルメットが吸収しているにもかかわらず、かなりの量のエネルギーが頭蓋骨へも伝達され致命的な怪我を予測させるようなものでした(図3と図4)。解析モデルを修正することで計算結果をいくらか改善することができるにしても、この結果により電信柱によって侵食される空隙を安全に保ちながらもさらに多量の衝撃エネルギーを散逸させるためにヘルメットの設計変更が不可欠であることが判明したわけです。一方で、低速度での電柱への衝突に関しては、ヘルメット装着者の安全を保障する結果が得られました。このように、利用者の安全に直接関わるような製品開発においても、シミュレーションによる検証が貢献しているのです。

図1 図2
図3 図4

本文は、デジタル化されましたANSYS Solution e-zine(www.ansyssolutions.com) の2003年1月15日付け内容における”Assessing Bicycle Helmet Protection " by Hurbert Lobo(DatapointLabs)の内容を一部再構成し転載したものです。

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