Webベースの入力画面で自動車部品の解析を能率化

ArvinMeritor 社

自動車用モジュールや自動車用部品などのメーカーであるArvinMeritor社では、スタビライザの設計開発に有限要素法解析を利用することが日常業務となっています。しかしその解析工程では、設計担当者が解析を依頼してから解析担当者が実際に解析を終了するまでには相当の時間を必要としていました。つまり、解析と報告書作成を全てやり終えるまでに解析担当者が数時間も費やさなければならなかったのです。もしそれらの解析作業や報告書作成までを自動化するようなマクロを有限要素法解析のスペシャリストが作成し、それが誰もが使えるような仕組みになっていれば生産性は明らかに改善されるでしょう。また、同社ではテネシー州に在るオフィスが解析業務を担っていますが、ここにある有限要素法解析ソフトウェアとハードウェアを、ミシガン州や英国のオフィスにいる設計担当者がアクセスできるようになれば、生産性はさらに向上するはずです。

これらの理想を実現するために、ASP(Active Server Page)テクノロジーとAPDL(ANSYS Parametric Design Language)マクロとを統合するソフトウェアツールが開発されました。この試みは、ArvinMeritor社におけるWebベースエンジニアリング(WBE;Web-Based Engineering)導入のゴールとポテンシャルを示す典型例であり、これにより専門的な工学的スキルを利用するためのテンプレートとインターネットあるいはイントラネットを横断する解析ツールがもたらされました。

有限要素法解析マクロ

このツールの開発においては、その過程のかなりの部分が有限要素法解析マクロの作成に充てられました。このマクロは、スタビライザバーの形状と境界条件の定義に始まり、有限要素モデルの作成、解析の実行、結果の出力、最後にHTML形式でのレポートの作成を行わねばなりません。このような機能を実現するためにはANSYSのマクロ機能は理想的なものです。作成されたこのツール(名称はStabar)のためのユーザーインターフェ−スを 図1 に示します。ここでは入力変数を定義するための入力一覧も表示されています。


図1.Stabarツールのユーザーインタフェース

OEMにより課せられる実装時の制約から、サスペンションに沿ってスタビライザバーが配置されるパスが定義されます。実際にStabarへ入力する設計項目は断面積、材料およびプロセスとなります。一般的にスタビライザバーは両端に球面ジョイントを持っています。そのために端部における応力はさほど重要ではなく、詳細な形状も必要としません。ですから、バーの形状は断面積とその中心線のみで十分に定義されるのです。ここでは、バーの中心線はデータ量の軽いIGESファイルによってツールに供給されます。現在のツールの機能では、三種類の断面形状を選択することができます。すなわち、一定の直径を持つ中実円、中心線に沿って直径がテーパー状に変化する管あるいは中実円の三種類です。断面積オプションを選択する際、引き続き表示されるメニューによって該当する断面に対して必要な数値の入力を行なうようになります。3番目のオプションが最も複雑となるのですが、直径だけでなくその入力直径が中心線上のどの座標に該当するかも入力しなければなりません。指定した座標点の間では直径が線形補間されることでテーパー付き断面形状が定義されます。

有限要素メッシュの生成においては、断面の形状に応じて異なる要素タイプを適用することがベストです。中実で直径が一定の断面ならばBEAM189要素を用いれば非常に計算効率が高くなります。管すなわち中空断面ならばSHELL93を用いればよいでしょう。シェル要素を用いればビーム要素による解では見逃されるであろう応力成分が得られますが、より多くの計算時間を必要とします。テーパー付きの中実断面の場合なら、六面体形状あるいは三角柱形状のソリッド要素(SOLID45)によるモデル化が最適でしょう。ソリッド要素はさらに多くの計算時間を必要としますが、テーパー付きブーム要素を用いるよりも後処理において利点があります。マクロによるメッシュ分割のアルゴリズムは、ビーム要素の場合は非常にシンプルですが、テーパー付き断面の場合は非常に複雑なものとなります。解析精度と計算効率の観点から、規定のメッシュ密度を最適なものとすることを目的に検証が実施されました。通常は、バーの端部に一定の大きさの強制変位を与える耐久力試験が実施されます。有限要素法解析モデルにこの境界条件を負荷することは非常に単純です。しかし、ブッシュにおける拘束は単純ではなく、ブッシュの等価剛性をユーザは指定しなければいけません。この剛性を用いてマクロはモデルにバネ要素(COMBIN14)を設定しなければならないからです。ビーム要素を用いるモデルではこの操作は些細なことですが、シェル要素あるいはソリッド要素を用いるモデルでは局所的な応力の精度を保つために断面の周方向に注意深くバネ要素を配置する必要があります。この重要な操作を行うためにマクロ内では多くの分岐やループが行われます。

どの解析モデルも本質的に線形となります。後処理として、バーに沿って計算結果のXYグラフの出力をするか否かはユーザーの選択に委ねられています。解析モデルは4CPU、メモリ1GBのSGI製ワークステーションで処理されます。このマシンをリモートアクセスすることもWebベースツールの利点のひとつでしょう。ビーム要素モデルを解析する場合のターンアラウンドは1分以内です。シェル要素モデルあるいはソリッド要素モデルを解析する場合のターンアラウンドは約4分ですが、後処理としてXYグラフの出力を追加するならば約10分となります。従来の手順に比べ、モデリングと解析に要するターンアラウンドはだいたい100倍程度は改善されているでしょう。

外部ファイルへ任意の書式で様々な書き込みができるというANSYSのVWRITEコマンドの機能をマクロは有効利用しています。ANSYSのマクロ機能は実際にHTML形式レポートを出力し、入力や結果をテキストあるいは図によって完全に文書化できるのです。ここで、テキストによる出力の例を 図2 に示します。反力ベクトル、バーの長さや重量、最大応力、最大ひずみが出力されています。


図2.テキスト形式出力の例

レポートにおけるグラフィック出力の例を 図3 に示します。これにより応力とひずみの分布図を含めることができます。また、 図4 に示すようなバーの長さに沿ってのXYグラフを含めることも可能です。ビーム要素モデルの場合、このようなXYグラフを作成するためのマクロプログラミングは簡単ですが、シェル要素モデルとソリッド要素の場合は複雑なものとなります。


図3.応力分布の例

図4.グラフ出力の例

ArvinMeritor社では、ANSYSの機能に元々用意されている一般的なレポートを作成することにとどまらず、フルにカスタマイズしたレポートをデザインしました。解析が終了すれば、利用者はブラウザを用いてレポートを見ることができます。レポートの内容をハードコピーとしてプリント出力したり必要なグラフィック出力をクリックするだけで保存したりできるのです。

ASPテクノロジー

ツールのWeb関連の部分はマイクロソフト社のIIS(Internet Information Server)WebサーバのASPテクノロジーを用いて構築されました。ASPを選択した理由は、プログラミング言語としてVisual Basicを用いており有限要素法解析のエンジニアでも習得が容易で柔軟性に富んでいるからです。ユーザーインタフェース( 図1 )を介して入力されたデータはWebサーバに保存されます。このデータをASPはテキスト形式のANSYSパラメータファイルに変換し、このファイルをマクロが読み込むのです。当初のもくろみは、Webサーバ上でANSYSマクロを実行し解析を行うことでしたが、IISでは単純にANSYSのような資源集約的なジョブを引き起こせないことが判明しました。この問題に対する解答はやや複雑ではありますが、当初のもくろみよりは洗練されたものでした。WindowsNTはネットワーク内のUNIXマシン上のリモートシェルプログラムをコールすることができます。そこで、この機能を用いて、より適したマシンである4プロセッサUNIXマシン上でANSYSをリモートで実行するようにASPが作成されました。このことによって、ホストであるサーバのCPU速度を守り、より高速のStabarツールによる処理を実現したのです。FTPを用いてサーバとワークステーションとの間でのファイルの受け渡しが行われます。パラメータファイルやHTML形式レポートのような小さなテキストファイルのみが転送されるため、この方法は非常に効率的です。ANSYSのデータベース(DB)やリザルト(RST)のようにサイズが大きなファイルはワークステーションに作成されます。

解析がどの段階まで処理されているかを利用者に知らせることもASPに対する現実的な要求でした。最終的には、ASPが自動的にステータスウィンドウを構築し数分毎にその内容を更新するという方法が採用されました。マクロによって定期的に更新され、例えば“Meshing Complete”のようなメッセージが表示されます。解析が終了した後、ユーザーインタフェースはHTML形式レポートを表示するためのボタンをクリックするように利用者を促します。解析終了時のステータスウィンドウの例を 図5 に示します。


図5.ステータスウィンドウ

ツールの最初のバージョンでは複数の利用者が同時にツールを利用することはできませんでした。なぜなら上書きの問題が生ずるからです。現在のバージョンでは同時にツールをアクセスできる設計者の数に制限はありません。しかし、実際には契約しているANSYSライセンスの数によって制限されています。

同様のASPロジックを、Webベースのユーザーインタフェースを介してさまざまなアプリケーションの駆動に応用できるでしょう。マクロのような機能を備えているエンジニアリングソフトウェアならば可能です。既存のスクリプト、コマンドファイルおよびプログラムのアクセスならばさらに容易でしょう。

WebベースのStabarツールで示されたテクノロジーの創造的組み合わせはArvinMeritor社における設計担当者と解析担当者の生産性を向上させました。さらに、解析の専門家でない技術者に専門的なスキルやプログラムの恩恵をもたらすような同様の解析ツールを開発するためのテンプレートを手にいれたのです。ArvinMeritor社では、他の製品をサポートする同様のツールが既に開発中です。

本文はANSYS Solution Volume 4, Number 1 に掲載されております "Web Site Streamlines Analysis of CAR PARTS"(by Joe Saxon and Chip Beaulieu, AvinMeritor Light Vehicle Simulation and Analysis)を転載したものです。

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