電装パッケージ

3M Company

ANSYSによりBGAパッケージにおける熱膨張率の不整合に関するソリューションを完成

電装パッケージをプリント回路板に取り付ける技法を設計する際の主要な問題は、熱膨張率 (CTE) の違いです。ほとんどのチップの熱膨張率は1℃につき2ppmです。回路板の熱膨張率は、15〜18ppm/℃、つまりチップの場合の7.5〜9倍です。そのため、チップをプリント回路板に接合しているBGA (Ball Grid Array) パッケージのハンダ継手に大きな応力が生じ、故障につながることがあります。

以下に示すのは、テキサス州Austinにある3M社の電子製品事業部のアナリストおよび設計技師が上記の問題に取り組んだ経緯です。Randy D. Schueller氏の技術論文「A New Advanced Flex Based Chip Scale Package with Improved Thermal Performance and Board Level Reliability」を翻案したものです。

業界には、パッケージを排して、チップを基板に直接取り付けることを好む者もあります。しかしこの方法を用いると、熱膨張率の不整合による応力を低減させるために、エポキシ樹脂でチップに余盛りしなければなりません。ここで問題となるのは、基板取付工場における生産インフラストラクチャーが限られており、工場に明確な投資意欲がほとんどないことです。各ダイに余盛りするには30秒以上かかり、1時間に数千のコンポーネントを取り付けることに慣れた基板工場にとっては、これは非常に長い時間です。さらに、後で問題が見つかった場合に、余盛りがあるとダイを再加工しにくくなります。

そのため、この分野では、エンジニアリングおよび生産に関するR&D(研究開発)が急激に増えています。Surface Mount Technology誌の1997年6月号に載った記事「What does A Chip Cost?」によれば、この5年で35以上の異なるチップ・スケール・パッケージ (CSP) 概念が生まれています。

一般に、CSPは3つの主要な基準を満たさなければなりません。

  • -25〜125℃において1,000熱サイクルで計った信頼性。
  • 標準工業プロセスによる大量の入手可能性。
  • 低コスト、つまりチップの単位量を月に百万として1取付ピンまたはリードあたり0.8セント。

現在、これらの3つの基準をすべて満たすCSPはありません。ある方法は、ハンダ球にかかる面内(水平)応力を低減させるために、チップと基板の間にエラストマー層を使用しています。この方法では、信頼性は高くなりますが、エラストマーの面外膨張により結合リードに過度な応力がかかり、熱サイクルの信頼性が低下します。

柔軟基板CSPとして知られる別の方法は、メッキまたは接着剤によってチップ・ダイと基板の間に銅とポリイミド層を挿入し、次にポリイミドを貫通して機械的にエッチングまたは打抜きを行い、ハンダ球パッドを露出させるものです。手持形装置用としては十分な信頼性が達成されました。しかし、より要求の厳しい電気通信や自動車に使用するには、低速かつ高価な余盛りが必要となるでしょう。

テキサス州Austinにある3M社の電子製品事業部は、もっと優れた方法を考案し、設計解析のための有限要素法解析プログラムANSYSによって、それを検証しました。新しい方法は、厚さ5ミル (0.127mm) の薄い銅製リードフレームをフレックス層に積層します。これは強化フレックスCSPと呼ばれます。他の利点としては、テープの使用が可能であり、アセンブリ組立て時の取扱いが非常に簡単になります。裸のフレックス(軟質)回路が半硬質ストリップによって置き換えられています。リードフレームおよび接着剤層に付けられたスロットにより、フレックス上のボンディング・パッドへのワイヤー・ボンディングが可能です。ハンダ球の位置は、エッチングでポリイミドに化学的に穴をあけてハンダ球パッドを露出させることによって形成されます。実は、これは、基板の熱膨張率と一致させるために銅の層を用いている3M社の実績あるテープ・ボール・グリッド・アレー (TBGA) 製品の小型版です。

基板として軟質回路が用いられていれば、ユーザーは高精度ラウティングを活用することができます。これは、電装設計者から需要が高まっている高密度ボール・アレーに必要なものです。現在の設計規則では、32ミクロンの線とスペースが可能ですが、開発者たちは、25ミクロンのレベルに向けて猛進しています。それが実現すれば、総ピッチ(ダイの接続リード間の距離)を1/4短縮して現在の約165ミクロンから122ミクロンにすることができます。一方、これはプリント回路板のさらなる高密度化につながり、より小さな装置に、より大きなパワーを詰め込むことが可能になります。

3M社の微小ピッチ軟質(フレックス)回路では、ワイヤー・ボンディング・パッドを従来に比べダイに近く配置することができます。つまり、ボンディング・ワイヤー(結合線)を比較的短く保ったまま、ダイおよびパッケージのサイズを縮小できるということです。電装の自己インダクタンスおよびトレース間の漏話が極小化されます。銅製の挿入物は非常に効果的に熱を放散させ、用途によっては高価なヒート・シンクが不要になります。また、銅の層は、繊細なダイの表面を、ハンダ内の鉛によって放出されるアルファ粒子から保護します。

組立工場の基本的な工程は変わりません。強化フレックスCSPストリップは、従来のリードフレームと同様に扱うことができます。ダイを銅製ダイ・パッドに直接接合するには、市販されている低モジュラスのダイ接着剤が使用されます。ワイヤー・ボンディング工程は変わりません。オーバーモールディングつまりカプセル封じおよびハンダ球取付のような他の工程は、従来どおり行われます。

銅製の挿入層を追加することにより、基板レベルでの信頼性が、基本的なフレックスCSP法の場合より向上します。銅が他の材料に成り代わり、熱膨張ひずみを吸収します。銅層の熱膨張率は16.6ppm/℃であり、FR4のような標準的プリント回路板材料のものとほぼ一致します。

他の熱膨張率の不整合(ダイと銅層の間の)は、任意の数の標準低モジュラス・ダイ接着剤によって容易に対処できます。

強化フレックスCSPが期待どおりに動作することを確認するために、3M社はANSYS設計検証・最適化ソフトウェアを用いて徹底的な構造/熱用のモデリングおよび解析を行いました。モデリングは、厚さ5ミリ (0.127mm) の銅製挿入物を取り付けた熱膨張率15ppm/℃の標準的プリント回路板材料について、ハンダ継手の最大応力と歪(ひずみ)を決定するために行われました。取り付けるパッケージは、サイズが12 x 12mmであり、ピッチ(間隔)0.8mmのハンダ球144個を含んでいました。並べて比較するために、同社は3層の基本フレックス回路もモデル化しました。

ANSYSにより、3M社はパッケージの対角軸に沿って2次元の線形モデルを作成しました。これは、中立点から最も遠いところに最大応力を持つハンダ継手を評価するものです。具体的には、パッケージと回路板の両方に直径375ミクロンのハンダ球パッドを持つ500ミクロンのボールをモデル化しました。

モデルに入力したのは、ダイ接着剤の熱膨張率と弾性係数、オーバーモールディング(つまりカプセル封じ用)エポキシ樹脂、回路板そのもの、10mmのチップ・ダイ、および銅製挿入物です。ハンダに使用した応力‐ひずみ曲線のデータは、-65〜125℃の温度範囲で計算しました。3M社によれば、これは共晶ハンダの非線形塑性を考慮に入れたものです。

モデルの境界条件として、パッケージの動きを中央で拘束し、基板の垂直方向の曲がり(つまり、上下のそり)を拘束しました。3M社によれば、これが、大きな基板上の小さなパッケージをシミュレートする最良の方法でした。125〜-55℃の範囲における5回の熱サイクルに基づいて、モデルから最外部のハンダ継手におけるミーゼス応力および総累積相当塑性ひずみの解を求めました。

ANSYSによる解析の結果、強化フレックスCSPでは、気温の両極端においてハンダ継手の応力がずっと小さいことが分かりました。基本フレックスCSPでは総累積ひずみが87%であったのに対し、強化フレックスCSPでは16%でした。1/5以下です。なお、解析は非常に高感度であり、打ち抜かれた穴の形状が何らかの影響を持ち得ることが示唆されるほどでした。

しかし、これらの解析は万能という訳ではありません。たとえば、モデリングによってシステム内における応力の位置と大きさに関する優れた洞察が得られますが、回路板上で製品が正確に何回の熱サイクルに耐えられるかは予測できません。次の解析ステップ、つまりハンダ継手の疲労寿命の決定には非常に多くの変数と仮説が係わってくるからです。

ANSYSによるモデリングは、強化フレックスCSP構造の持つ基板レベルでの優秀な熱サイクル信頼性を明らかにしました。しかし、ポータブル・コンピューター、自動車、またはもっと要件の厳しい電気通信作業に使用するには、実地でライフ・サイクル試験を行って耐久性を評価する必要があります。上記の用途の場合、基板レベルでのパフォーマンスの期待値は、-40/125℃で3,000サイクル以上です。

結果の考察にあたり、3M社はどれか1つのCSPが全面的な成功を収めるということは起こりそうもないと考えました。標準集積回路パッケージの場合には、それは起こりませんでした。3M社は次のように述べています。「歴史が教えてくれたことが何かあるとすれば、最も成功するパッケージは、パッケージ・アセンブリーとボード・アセンブリー双方の現存するインフラストラクチャーに最も適したパッケージであるはずだということです。これらの目的を満たし、相当に低コストで、信頼性のあるパッケージには、明るい未来があるといえるでしょう。そうでない場合には、主に小規模で特殊な用途しか見つからないでしょう。」

3M社の行った試験の結果では、強化フレックスCSPは湿気および圧力に対しても、優れたパフォーマンスを示しました。気温85℃相対湿度60%のもとでの168時間(1週間)放置のような標準試験のあとで、湿気によるボイド(空隙)は見られませんでした。試験には、220℃における60秒のリフロー・サイクル3回が含まれています。圧力試験は、2気圧121℃のもとで最高240時間まで行われました。12の供試体、つまり完全に組み立てられたパッケージのいずれにも、見て分かる層剥離はありませんでした。

3M社によれば、強化フレックスCSPは、大量生産時においてピン当たり$0.08というコストのマジック・ナンバーにはまだ達していませんが、近付きつつあります。さらに、当方法は、基本フレックスCSPに比べて、サイズの異なるダイへの対応が容易です。設計者が求めるなら、ハンダ球のパターンやワイヤー・ボンディング・パッドのレイアウトを変えずに、ダイを縮小することができます。

3つの主要な基準に加え、生産時の取扱いを極小化し、湿度に対する耐性を高め、電気的・熱的パフォーマンスを高め、テープのレイアウトや基板のフットプリントを変えずにダイの縮小に対応しなければなりません。3M社の方法は、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー (DRAM) チップの場合によく見られるように、ダイを上下逆に実装する場合でも有効です。

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