[株式会社 日立製作所 日立研究所 寺崎 健 様]はんだ接合部の定量的断線寿命予測 -3-

目次

精度検証と解析事例

Sn-40Pbはんだの中央切欠き付平板試験片4)

修正累積損傷モデルにより実際のはんだ疲労き裂進展挙動を予測できるかどうか確認するため、Sn-40Pbはんだの中央切欠付平板試験片の疲労き裂進展試験結果と比較しました(図3)。解析に用いた応力-ひずみ挙動の材料定数は、=26,923 MPa、=0.577、=24.5 MPa、=5.9です。Coffin-Manson則の材料定数は、Sn-40Pbのねじり疲労試験結果から算出した値(=0.237、=0.5)を用いています。


図3 中央切欠付平板の疲労き裂進展挙動

疲労き裂進展領域の要素寸法が0.1mmの場合におけるシミュレーション結果を図3に示します。式(6)で補正される前の寿命は測定値より2倍以上長く予測されていることがわかります。一方、補正された寿命は測定値と良く一致しており、補正方法の妥当性が確認できました。

Sn-Ag-Cu系はんだの疲労き裂進展挙動5)

現在Pbフリーはんだの主流であるSn-Ag-Cu系はんだでも、修正累積損傷モデルにより疲労き裂進展挙動を定量的に予測できます。疲労き裂進展挙動は、き裂進展速度と非線形破壊力学パラメータJ積分範囲の関係で整理できます。図4に、Sn-3.5Ag-1Cuはんだの疲労き裂進展挙動の測定結果2)を示します。ばらつきはありますが、測定結果は両対数グラフ上でおおよそ直線上に分布します。応力-ひずみ挙動とCoffin-Manson則の材料定数を用いて、本補正方法から予測したき裂進展挙動を図4に併記します。予測結果はおおよそ測定結果と一致しており、Sn-Ag-Cu系はんだでも疲労き裂進展挙動を予測できることが確認できました。


図4 Sn-Ag-Cu系はんだの疲労き裂進展特性

BGAはんだバンプの温度サイクル寿命6)

続いて、BGA(Ball Grid Array)型半導体パッケージの温度サイクル試験におけるはんだバンプの断線寿命の予測結果を紹介します。通常のはんだバンプと耐熱疲労性に優れた銅コア入りはんだバンプ(日立金属(株)製)の2種類のはんだバンプを用いて、BGA333pinをプリント基板にそれぞれ実装し、-40℃〜125℃の温度サイクル試験を行い、断線寿命を測定しました。


図5 BGAはんだバンプの温度サイクル断線寿命の
予測結果と試験結果(50%断線確率寿命)

修正累積損傷モデルで断線寿命を予測した結果と試験結果(50%断線確率寿命)を比較したところ(図5)、2種類のはんだバンプ形状とも結果はほぼ一致しており、実用上十分な寿命予測精度を有していると考えています。また、図6に銅コア入りはんだバンプの2200サイクル後の疲労き裂形状を示します。予測したき裂進展挙動は、試験結果と完全に一致しているわけではありませんが、銅コア上部より銅コア下部のき裂が多く進展しているなど、き裂進展挙動の傾向はおおよそ再現できています。


図6 2200サイクル後のき裂形状の比較

本事例の解析時間は、種々のモデリングの工夫により、1ケース1日以内に抑えられています。温度サイクル試験には数週間以上の期間を要するため、修正累積損傷モデルで迅速に断線寿命を把握できることは、信頼性評価期間の短縮に大変有効であると考えています。

おわりに

はんだ接合部の疲労寿命は、一般的な構造部材と異なり、断線により定義されます。そのため、寿命推定にはシミュレーションと耐久試験の併用が必要で、期間とコストがかかることが課題でした。今回提案した修正累積損傷モデルにより、はんだ接合部の断線寿命をシミュレーションのみで実用的な時間で、定量的に予測できるようになりました。
今後、本手法を用いて弊社エレクトロニクス実装製品の開発期間短縮・高信頼化に寄与していきます。

1) 寺崎健、長埜浩太、三浦英生、中塚哲也:“周辺端子型LSIパッケージにおけるはんだ接合部の熱疲労寿命予測”、第7回「エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術」シンポジウム論文集、pp. 441-446 、2001 、Feb.
2) 能瀬春雄、坂根政男、山下満男、塩川国夫:“鉛系および非鉛系はんだの引張・圧縮低サイクル疲労試験におけるき裂進展挙動”、日本機械学会論文集、A編、Vol.68 、No.665 、pp. 88-95 、2002 、Jan.
3) 谷江尚史、寺崎健:“半導体微細はんだ接続部き裂進展経路を再現するき裂進展モデル”、日本機械学会論文集、A編、Vol. 72 、No.
717 、pp. 638-645 、2006 、May4) 寺崎健、谷江尚史:”き裂進展モデルに基づくはんだ疲労寿命予測法”、日本機械学会論文集、A編、Vol. 74 、No. 740 、pp.574-582 、2008, Apr.
5) 寺崎健、谷江尚史:” 累積損傷モデルに基づく疲労き裂進展特性の推定方法”、日本機械学会論文集、A編、Vol. 74 、No. 740 、pp.583-591 、2008, Apr.
6) 寺崎健、谷江尚史、千綿伸彦、若野基樹、藤吉優:”修正累積損傷モデルによるSn-Ag-Cu系BGAはんだ接合部の断線寿命予測、エレクロニクス実装学会誌、Vol. 14 、No. 4 、pp.287-295,20117) J. R. Rice and G. F. Rosengren: “Plane strain deformationnear a crack tip in a power-law hardening material”,Journal of the Mechanics and Physics of Solids, Vol. 16,Issue 1, pp. 1-12, 1968, Jan.

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