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解析事例

電磁界解析

Ansysによるモータの連成解析事例

はじめに

AnsysのElectronics Solution製品には、モータ設計を支援するツールがいくつも用意されています。また、最近では、電磁場解析のみの単一場だけでなく、熱や構造といった異なる解析場との連成解析のニーズが高まっています。
本紹介では、モータ設計に利用できる電磁界解析ツールの紹介、ならびに現在Ansysにて可能な電磁界を含めた連成解析の内容を併せて紹介します。

Ansys Electronics Solution 製品

Ansysには多くの電磁界解析ツールが用意されていますが、この中でもモータの製品開発に利用できるツールとしては、以下が挙げられます。

  • Ansys RMxprt
  • Ansys Maxwell
  • Ansys Simplorer

これら3つのツールは全て同じ”共通デスクトップ”と呼ばれる共通GUI画面にて統一されています。その為、目的に応じてツールを使い分ける場合でも同じ操作感で扱うことができます。

Ansys RMxprt

Ansys RMxprt (以下、RMxprt)は、モータの詳細な解析の前に行うコンセプト設計を支援するツールです。ステータ、ロータ、コイルといった必要最低限の情報を入力することで、自動的に解析モデルを作成します。
解析モデルは見た目上は実際のモータモデルを表示しますが、解析はパーミアンス法による1Dシミュレーションを実施します。その為、計算が非常に早く様々な設計パラメータを変更するモデル検討の際に非常に有益なツールと言えます。
RMxprtは回転機器設計支援を目的としたツールですので、d軸・q軸インダクタンス、トルク、コギングトルク、誘起電圧といったモータ特性に関する情報は標準出力されます。
図1は対極数3、スロット数36のIPMモータのRMxprt解析モデル例です。この事例ではBridge位置を変更した際のモータ特性を比較しています。1パターンの解析は数秒オーダーの解析時間ですので、10パターンの解析を行ったとしても2分を切る時間で解析は終了します。
図2は誘起電圧とコギングトルクの変化(Bridge位置変更による結果差)を示すグラフです。このように設計パラメータがモータ特性に与える影響をより早く把握でき、モデル設計に活かせます。

図1 RMxprt 解析モデル図
図1 RMxprt 解析モデル図
図2 Bridge位置によるコギングトルクの変化
図2 Bridge位置によるコギングトルクの変化

Ansys Maxwell

Ansys Maxwell (以下、Maxwell)は、モータ設計において詳細設計を行うツールとして利用する汎用の有限要素法電磁界解析ツールです。RMxprtではモータ特性情報を数値で得ますが、Maxwellでは磁束密度や磁気力、コアロスといった情報を解析モデル上の分布とし可視化できます(図3は磁束密度分布のコンター例)。勿論、同時にトータル値としての数値情報の出力も可能です。

Maxwellの解析作業手順は他の一般的な有限要素法ツールと同様で、モデルの作成、材料・条件の定義、解析の実行、結果の確認という流れになります。モータモデルに利用できるTipsとしては、積層鋼板をバルクでモデル化して表現する積層材料定義の機能や、損失評価を過渡解析中に考慮することが可能な、修正Steinmetz法を用いたコアロス計算の機能があります。図4に示すように、解析中のトルク値が、損失分を考慮した結果として出力されます。
また、RMxprtにて作成した1Dシミュレーション解析モデルをMaxwellの有限要素法解析モデル(2次元、3次元)として転送することも可能です。両者を組み合わせることで、コンセプト設計から詳細設計までを一連の流れで操作することが可能になります。

図3 Maxwell による磁束密度コンター図
図3 Maxwell による磁束密度コンター図
図4 Maxwell によるトルクの時系列グラフ
図4 Maxwell によるトルクの時系列グラフ

Ansys Simplorer

Ansys Simplorer (以下、Simplorer)は、エレクトロニクスシステムに特化したマルチドメインシステムシミュレーションツールです。モータ設計において、モータ単体の解析は前述までのツールを用いて行うことになりますが、Simplorerはドライバ回路の設計、アナログ・デジタル制御設計のツールであり、またRMxprtやMaxwellと組み合わせて、統合的に設計を行うことができるツールです。RMxprtからはSimplorer用の等価回路を生成することができ、Simplorerで時刻歴解析が可能となります。
MaxwellとSimplorerの連携は、複数のモデリングレベル(状態空間モデル、等価回路モデル、過渡直接連成モデルなど)を取り扱うことができ、用途に応じて精度を使い分けたシミュレーションが可能です。

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