電磁界解析PCBシステム設計に求められるEMI解析環境〜 3次元フルウェーブ電磁界解析の必然性〜

目次

PCBシステム設計と解析環境の変遷

昨今、デジタル機器の設計では小型、高速化の要求がますます増えています。SI(Signal Integrity)信号解析やEMI(Electromagnetic Interference)解析のツールは、簡単なものから高精度なものまで各EDAベンダーから数多く提供されています。初期は簡単な解析ツールしかありませんでしたが、その後、有限要素法などを用いた3次元フィールドソルバーを内蔵する電磁界解析ツールが登場し、導入が盛んに行われました。

一方、3次元でフルウェーブの電磁界解析を行えば精度の良い結果が得られますが、設計現場のマシン環境では、実施できる解析の規模が限定されてしまったり、解析に時間がかかりすぎるなどの問題も存在します。そこで、現場でも手軽に利用できるルールチェッカーなどの簡易的なツールの導入が加速しました。ところが昨今、再び3次元フルウェーブ電磁界解析のニーズが高まっています。その背景には、低周波レベルの信号しか搭載されていなかった製品への高速回路の導入や製品の小型化、層数削減(PCB製造コスト削減)への流れなどが挙げられます。

これらは結果的に電源やグランドの大部分を配線パターンで設計することになり、ノイズ対策が困難を増しているということを意味します。またグランドプレーンを必要とする多くのSI/EMI解析ツールでは、電源やグランドを配線パターンで設計した基板のノイズ解析を行うことができず、3次元フルウェーブ電磁界解析で解析する必要性が出てきます。そして社内関係者や顧客より、ノイズ対策を視覚的なデータで要求されるケースが増えてきました。これは設計での勘と経験によるカット・アンド・トライが、上手く機能しなくなりつつあるということを表しています。

PCBシステム設計に求められる電磁界解析の役割

今、現場で関心が高いものの1つにEMC(EMI/EMS)およびESDの対応が挙げられます。
・EMC: 環境電磁工学
・EMI : 電磁気妨害
・EMS: 電磁気妨害感受
・ESD : 静電気放電

PCB-ケーブル-筐体と言ったシステム全体の解析は、モデリングの手間や解析時間、実測との精度を考えた場合、なかなか難しいのが現状です。そのため、設計現場では経験則と併せて使えるツールを上手く利用していることも多いと思います。現在、課題となっている製品の早期市場投入、設計工数削減、また先述のニーズと照らし合わせると、PCB全体から問題となりそうな部分を手早く見つけて、その部分に着目して電磁界解析を行うことが最適な選択と言えるかもしれません。

PCB設計のフロントローディング設計フロー

SIのフロントローディングは一般化しつつありますので、それを踏まえた最も簡易的なフロー図です。

  1. SIフロアプラン: 仕様に基づいた信号解析からPCBコンストレイントを決定
  2. PCBレイアウト:配線コンストレイントに従った配置配線
  3. SI検証:レイアウト後解析
  4. EMIチェック:EMI危険箇所の検出
  5. EMI解析: 高速信号部分やEMI危険箇所について詳細検証
    (3次元フルウェーブ電磁界解析)
  6. EMI対策:チェック解析結果や経験則による対策

PCBシステム設計に求められるEMI解析 〜 ANSYS製品を用いた3次元フルウェーブ電磁界解析〜

ここまでで述べたように、近年のPCBシステム設計ではSI高速信号線に対するEMI(電磁界放射)の高精度な解析、理想グランドプレーンを持たないデザインのEMI解析、問題対策部分のデータによる明示などが求められています。これらの課題に対して、EMI解析の部分にANSYS製品を使うことで効果的に対応することが可能です。

ANSYS製品のご紹介

ANSYS HFSSは有限要素法を用いた 3次元フルウェーブ電磁界解析ツールです。高周波コンポーネント、アンテナ、ケーブル、コネクタや IC・パッケージ、プリント基板などのあらゆるモデルに対して高精度な解析が可能です。

近年プリント基板に於いては、PCI ExpressやDDR4 、シリアルATA、DisplayPortなど伝送速度が数GHzと高速になり、プリント基板上のビアや配線パターンのコーナーなどが信号の品質に影響を与えるため、詳細な解析結果が求められています。また、製品の小型化により従来のベタグランドではなくグランド配線が用いられるようになり、従来の理想グランドを前提としたシミュレーションでは解析が難しくなってきています。ANSYS HFSSでは、これらの問題についても高精度に解析が行えます。

またANSYS HFSSは、初めて電磁界解析に触れる方でも高精度な結果が得られるように、電磁界解析と同時にメッシュの最適化を行うアルゴリズム“Adaptive Auto Mesh”を搭載しています。“Adaptive Auto Mesh”は、複雑な電磁界現象においても的確なメッシュを自動生成するため、難解な電磁界現象を理解しなくとも、常に安定して精度のよい電磁界解析を行うことができます。また、電磁界解析を行って電磁界の場の振る舞いを可視化することで、ノイズ源の特定とEMI・EMSの対策を行うことが可能です。

ANSYS社では、CADインターフェイスの開発にも力を入れており、各社のPCB CADデータを正確にインポートして電磁界解析を行うことができるため、設計業務の短縮に大きく貢献できます。

DDR2配線パターンに着目した解析事例

この例では、設計変更を機会として電源設計部分を見直し、信号の安定性とEMIの電界放射を改善するよう試行されたものです。今回は、あるネットにフォーカスした比較例を記載しています。

DEMITASNXによるEMIチェック結果

上記ネットに対して、EMI抑制設計支援ツール「DEMITASNX」によるEMIチェックを実行しました。

設計変更前データのチェック結果
「GVまたぎ」「リターンパスの分断」というリターンパス電流系のエラーが多数見られます。
設計変更後データのチェック結果
配線と電源/GNDプレーンの見直しにより「GVまたぎ」「リターンパスの分断」エラーはありません。

上記ネットのリターンパスが電磁界としてどのように見えるかANSYS HFSSで確認してみます。

ANSYS HFSSによるリターンパス電流分布

設計変更前のリターンパス解析結果
(見やすい部分を調整して掲載しています)
リターンパス経路が変わる部分が多数あり、カップリングが安定しません。ノイズに対してセンシティブであり、放射も起こりやすくなると言えます。
設計変更後のリターンパス解析結果
配線に対するリターンパス経路が一定に確保され、カップリングが安定します。信号の安定保証にもなりノイズに強い設計と言えます。

ANSYS HFSSによる電磁界放射ノイズ分布

近傍界と遠方界の放射ノイズ分布を解析し、3次元表示した結果です。放射ノイズ分布においても、設計変更後は問題がないことが確認できます。

近傍界磁界
遠方界磁界

最後に

以上、3次元フルウェーブ電磁界解析の必然性や、ANSYSの電磁界解析ツールについてご紹介してきました。ANSYS HFSSを使うことにより、PCBでのパターンニングに対する対策の妥当性やエラーチェック箇所のノイズの影響を視覚的に捕らえることができます。

システム全体のノイズ解析を行えば、PCBシステム全体の性能を定量的に求めることが可能です。しかし各要素のモデリングや計算コストの問題などの課題がありますので、多くの設計現場では現実的ではないかもしれません。

しかし、コスト削減や開発リードタイムの削減が求められる今日では、いかに短時間で問題を把握し、解決させるかが特に重要です。そのためには問題箇所を素早く絞り込み、現象を正確に把握することが大切であり、ANSYS製品による3次元フルウェーブ電磁界解析が威力を発揮します。

CAEのあるものづくり2012年16号掲載)

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